第2話 依頼とお仕事
ローラはリアンに制裁を加えた後、朝食の用意されているテーブルに座り、リアンもよろめきながら椅子に腰をかけた。
「それじゃ、食べましょう」
「「いただきます」」
ローラはパンを手に取り、頬張るようにかぶりつく。
ふわふわのパンの食感に加え、中のジャムの甘さが最高のハーモニーを奏でている。そしてミルクで流し込む、これがローラの朝の活力になる。
一方のリアンはパンを一口サイズにちぎり、バターを塗ってから口に運ぶ。
口の中のものがなくなったらミルクを一口飲み、再びパンを食べる。
その光景を見ていたローラはパンを一口サイズにちぎると、リアンの顔の前まで持っていく。
「え、ど、どうしたのよ」
「別に・・・ただ、朝少しやり過ぎちゃったから」
「ロ、ローラちゃん・・・!」
「は、早く食べなさいよ!」
「うん、ありがとう。ローラちゃん」
朝食を食べ終わると、ローラがキッチンに入り、食器を洗い始め、その間にリアンが今日の依頼内容の最終確認をする。
普段リアン達は依頼を受けることは少ないが、レベルの高い冒険者を求める依頼の場合は指名される時がある。今回のクエストもそのうちの一つだ。
「今日の依頼ってどんな感じなの?」
「今回はワーベアの討伐依頼だけよ」
「一つだけなら自由時間多そうだね」
「そうともいかないわよ、午後は王城に行かないといけないもの」
「あ、今日はアレがあるもんね!!」
「私としては依頼の話よりそっちの方で目を輝かせて欲しくないのよね」
「しょうがないでしょ、好きなんだもん」
ローラ達の話しているアレとは罪人の処刑。
これまで国内を騒がせ、指名手配されていた盗賊「魔狼団」のボス、ジェードが昨日の昼頃に確保されたのだ。
そして夜にジェードには死刑判決が下され、今日の午後、王都にある処刑場で公開処刑される。
その処刑を執行する人物こそ、リアンの相方であるローラであり、この仕事がある日のローラはとてもテンションが高く、いつもより数倍早く依頼をこなしてくる。
準備を終えた二人は、依頼の目的地であるアルマン森林へ向かう。
自宅から約2kmほど離れた場所に存在する森林で初級冒険者たちが依頼をこなすためによく利用する場所でもある。
そこで経験を積み、ステップアップするまさに冒険者の登竜門的な場所だ。
しかし、そんな場所でBランク相当のワーベアが出たと通告があり、緊急の依頼としてリアン達を指名されたが、向かっている間にリアンは少し疑問を持っていた。
ワーベアは熊のような見た目をしているが、二足歩行で歩いて生活し、時には人々を襲う危険性のある魔物。
逃げようとしても時速約60kmの速さで追いかけて来るので、逃げ切るのは至難の技。
そんなワーベアの討伐ならAランクの冒険者などに任せればいいのになぜ私達に依頼が来たのか、その理由はすぐにわかった。
森林に入っただけで、既にワーベアが3頭見えている。これは明らかに異常だ。リアンが森林全体に索敵魔法を放つと、約30頭ほどの反応が確認できる。
なるほど、これは危険ね。一頭だけでもBランク相当ある魔物が30頭、流石に対処が難しいわね。
リアンはローラに魔物の数を伝えると、ローラは露骨にいやそうな顔をしていた。
「えー、そんなにいるの?」
「バラバラにやると時間かかりそうだしいつもの、やるわよ」
「おっけー!」
ローラが森林の中へ走って行き、数秒で森林の中心部までたどり着いた。
森林は辺りを薄暗く不気味に照らしている。既にワーベアが何頭か見えている。
ローラは自分の魔力を放出し、森林全体の魔物を誘き出す。
すると、全方位からワーベアが一気に走って来た。ドタドタと重い足の音と凄まじい土煙が巻き上がる。
あたりが土煙で覆われ、あっという間にローラはワーベアに囲まれてしまったが、ローラを囲んでいたはずのワーベアは一瞬にして氷漬けになっていた。
これは、ローラが襲われそうになった瞬間に、影で隠密していたリアンがローラを中心として範囲型の凍結魔法を使い、ワーベアのみを一気に凍らせ、氷漬けになったワーベアの頭をローラが次々と落としていく。
30頭全ての頭を落とし切るのにかかった時間はわずか1分。
リアンがローラの元へ戻る頃には、既に討伐は終わっていた。
「いやぁ、いい連携だったねー」
「ありがとう。それにしても、やっぱり早いわね」
「そう?リアンちゃんのお父さんもできるじゃない」
「あの人を基準に物事を考えちゃダメよ」
「えー、でもさー」
「はいはい、依頼も済んだし、早く帰るわよ。この後にまだお仕事が控えてるんだから」
「そうだった!じゃあ頭だけ持っていくから残りは捨てて行ってもいいよね?」
「ダメよ、ちゃんと魔石を回収して」
「はーい」
気の抜けた返事をし、ローラは渋々ワーベアの死体を解体して体内から魔石を取り出した。
取り出した魔石をアイテムボックスに詰め込んだのを確認すると、リアンは杖を取り出してローラと手を繋ぐ。
「それじゃあギルドまで一気に飛ぶわよ、テレポート!」
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