第4話 酸鼻!容赦無い詰問!
「......なっ、何よ、腎臓って。」
大崎が震える声で恐る恐る話し掛ける。
クラスメイト達は固唾を呑んでその奇々怪々な状況を見守っていた。
「そっそのくらいで私がビビるとでも...?ふん、その理論で言えば私だって、例えば気管支とかはパーじゃない。」
意外と肝が据わった女らしく尚も悠然と張り合おうとする大崎。
「確かに気管支はパーだな。だが、お前の臓物類は事前に別時空へ転移させている。今お前の体を動かしているのは他でもない、俺が有事の為に次元の狭間に貯蓄していたエネルギーだ。」
悠然は持っていた腎臓を飲み込むと平然とした顔でそう言った。
「はぁ!?そんなの信じられないわよ!」
そりゃあ変な奴に臓器を奪ったなんて言われれば取り乱すのも無理はない。
「じゃあ自分で確認してみるがいい。」
大崎はその大きく真ん丸とした目を見開き、ゆっくりと自分の左胸へ手を伸ばした。
そして暫くの間手を胸に当て硬直。
「嘘......鼓動がしないんだけど。」
「因みにお前の体を構成している分子の結合も圧縮して"チョキ"の形にしてある。つまり大崎、お前が"パー"を表現することは不可能なんだよ。」
悠然が容赦なく言い放つと、大崎は膝から崩れ落ちてしまった。
「それに、実を言うとお前に弟がいるかどうかも怪しい。なぁ、大崎優奈。いや、住民票コード37920492412。」
「!!」
大崎はビクッと体を震わし、ヤバい人間を見るような目で悠然を睨んだ。
「俺は日本全国の住民票コードと氏名を暗記しているんだが、どうやらお前の弟の物が見当たらないんだよ。これはどういうことだろうか、住民票コードを持たないのは密入国者か社会的に存在しない人間だが、それがお前の弟なのか?」
「うっ......わっ、わかったわよ!そんなにそのお菓子が食べたいなら食べればいいじゃない!私の負けよ負け!」
大崎は自暴自棄になり、怒った様子で席へ戻ってしまった。
池田と藤本も教師という立場ではあるが、余りにも異質なこの状況ではひたすらに無力だった。
「よし。最初からそうしておけば良かったんだよ。という訳でこれは俺が食う。異論は無いな?」
異論があっても申し立てる奴など居よう筈がない。
そんなことをすれば忽ち臓器を抜き取られ、住民票コードまで開示される羽目になるからだ。
そして遂に悠然は索餅を手にした。
勝者たる堂々とした態度で大手を振りながらクラスを練り歩き、自席についた。
「そうだ大崎、臓器は返しておいたからな。」
悠然が取って付けたようにそう伝えると、大崎はその端正な顔をしかめながら胸に手を当てた。
暫くして胸から手を放し、ほっと一息つくと草臥れた様子で机に突っ伏してしまった。
「さて、織姫さんの股の様子は......と。おお、こんなにク○チンが勃っているじゃないか。」
クラスメイト達が気味悪そうな目で見守るなか、今作の主人公である上悠然は、すました顔で索餅を味わったのであった。
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