第3話 スクールデイ その後
「ただいまー。」
「おかえりなさい。」
家に帰ると出迎えてくる人物がいた。金髪の長い髪は何か作業をするためっだったのか一つ結びになっていた。エプロンを着ている様子から恐らく夕飯の準備をしているのだろう。
「では、私は作業に戻るのでこれで。今日の晩御飯はロールキャベツですよ。最近作り方をラーニングしましたので美味しく作れるはずです。」
「でもミライは不器用だからな~。この前のカレーも水入れすぎてたし。俺も手伝おうか?」
「いえ、あれはたまたまエラーが起こっただけです。今回は自身があるので問題ないです。それよりミク様は上にいる楓様の相手をしてあげてください。」
そういい、ミライは台所に向かっていった。俺は彼女の気持ちを不意にしたくないと思い、言われた通り『楓様』の相手をしようと思った。
「いやあ、家の鍵わすれちゃったから仕方なーくここにいるわけですよ。別に漫画やゲーム誌に来たわけではなくって…。」
「その割には随分とこの部屋を満喫なされてるようで。」
自部屋に入ると案の定俺の幼馴染が、カチカチとコントローラーを押してテレビに映っている巨大なモンスターを切り刻んでいた。自分のベットを見ると、布団の上に何冊か漫画やら小説が散乱している。これを前に注意したのだが、本人曰く『帰るときにまとめてやる』ということらしい。彼女はどこかの
「この部屋には色々ありますからねえ。何回来ても飽きません。あっ、美空君も後で手伝ってくださいよ~二人でやったほうが効率いいので。」
そういい彼女はモンスターが移動した隙に片手でスティックでキャラクタ―を動かしつつ、空いた片手でテレビ台の下にある携帯ゲーム機を取り出して俺の彼女の左隣に置いた。俺はリュックを勉強机の隣に掛け、ブレザーを脱いでクローゼットのハンガーに掛けた。本当は制服も脱ぎたいのだが、流石に女の子の前ではやめようという結論になり彼女の隣に座ってゲーム機を起動する。テレビでは丁度戦いが終わったのか、リザルト画面で報酬を受け取っていた。手慣れた手さばきでスティックを動かし報酬を獲得している様子を見ると、これがガチ勢なのかと思えてくる。
「お前そんなにゲーム好きならあげるから自分家でやれよ。」
「ふーん。これ美空君のじゃないじゃないのに誰かにあげちゃっていいんですか?」
確かに。これらの漫画やゲーム達は貰い物というよりかは置物なので、勝手にあげるのはよくない気がしてきた。
―――まあ、あれこれいじってるのもどうかとは思うけど。
「でも貸すぐらいならいいんじゃないか?俺はやることはないし。」
「ここはゲーム部屋という感じがするので好きなんですよね。それに――——いえ、何でもありません。ささ、そんなことは置いておいてゲームの続きをしましょう!」
楓が何を言おうとしていたのかは気になったが、ミライが夕飯を作ったと言いに来るまで彼女に流されてゲームに付き合うことになった—――—―。
「お邪魔しました。またお夕飯までいただいちゃいちゃって。」
夕飯を終えると時刻は八時前。楓は部屋のゲーム類を片付け、帰りの身支度をして玄関に向かった。
「いえ、問題ありません。カエデ様が家に来た時からカエデ様の分は準備していましたよ。」
「まあ、二人よりも三人で食べたほうがおいしいからな。」
すると楓は口で手を軽く押さえ鼻で笑った。
………結構真面目に言ったつもりなんだけど。
「ふふっ、美空君面白いことを言いますね。それじゃあ母が帰ってきているのでこの辺で。ミライさん、また明日。」
「はい。おやすみなさい。」
そういい彼女は玄関の扉を開けて、自分の家に向かっていった。ほぼ間違いなく明日また会うのだが、何時間も一緒にいたせいか心が締め付けられるような、少しい寂しい気持ちになった。
帰りを見送った後、ミライのほうを向くと彼女は疑問視したような表情で首を傾げていた。
「どうかした?」
「人が増えたからといって、料理の質が上がったりするものなのでしょうか。」
………純粋な疑問なんだかミライにもからかわれている気がしてきた。
「ああ、まあそのなんだ。き、気持ちの問題だよ。」
小恥ずかしくなってきたので、自分の気持ちをごまかすために食器を片付けに台所に向かう。ミライは腕を組みながら再び考え事をし始めた。ああなると、彼女なりの結論がでるまで動かなくなってしまうのだ。
ある程度家事を終わらせ、ジャージに着替えて外で三十分ほどランニングをする。風が丁度良く冷たく、走るのに快適な環境だった。家に帰ると結論を出し終えたのか、ミライの姿はなかった。時刻は九時半を回っていて、大体この時間辺りにミライは睡眠に入るのでおそらく自室にいるのだろう。
入浴をして自分の体を癒し、上がってドライヤーをした後にリビングで軽くストレッチをする。俺はそこまで体が柔らかいわけではない、せいぜい手で伸ばした足を掴めれる程度なのだが、体育で床に胸がつく人を見ると何だかできる人たちが羨ましく感じ、自分もくっつかないかなあと背中を押してもらったりしながら何回か挑戦するのだが中々上手くいかない。……当然そんなすぐに行けるとは思ってはいないけど。
「あ、おかえりなさ~い。」
「うん、ただいま。」
時刻は十時四十分を過ぎていて、二階に上がり俺の部屋に着く。と、そこには一人の少女がテレビゲームをしながら俺の帰りを出迎えてくれていた。俺はベットに飛び込みふぅとため息をする——————って。
「って、なんでまだいるんだよ。」
俺はベットから動かず視線だけを彼女に向ける。彼女は相変わらずの手さばきでモンスタ―を切り刻んでいた。
「まあ、あれから家に帰ってもやることなかったので。」
「だとしてもこの時間帯に来るか普通。ていうか、どこから入ってきたんだよ。」
玄関は鍵を閉めてたし入ってくるところなくないかと思っていたら、俺の部屋の扉式の窓が一つだけ全開で空いていた。しかも偶然(?)にも彼女の窓が見えるという謎設計になっているのだがそこの窓も全開になっていた。おそらく閉めたら外側からじゃ開けられないから開けっ放しのだろう。
窓を開けているせいで風が俺の部屋の温度を下げていて、湯冷めしてしまいそうなのだが、楓は俺のコートを勝手に使ってしっかりと厚着していた。
「まさか、わざわざこの窓を飛び越えてきたのか?インターフォン押したら普通に入れたのに。」
「母親に夜遊びしてるとは思われたくないんですよ。一階から家を出たら気づかれるじゃないですか。一応今私は母親の中では勉強していることになっているので。」
俺はベットから重たい体を起こしてベットに座り、彼女のプレイを眺める。何回かやっているからなのだろうが、敵モンスタ―の攻撃をうまく躱して攻撃を決めてボコボコにしている様子が見られた。尻尾は切断され、顔面は崩壊しているところからもうすぐで倒せるのだろう。
「お前の母さんが様子見に来たら一巻の終わりなんだし、それ終わったらかえれよ?」
そういった直後にモンスターを倒し、リザルト画面で報酬を受け取り始めた。
「そうですね、これが終わったら帰りますよ。———————まあ、私の母親がわざわざ見に来ることなんて絶対ないですけどね。」
テレビの電源を切り、あと片付けをして窓に向かう。
「じゃあ、今度こそまたね美空君。戸締りはしっかりしといたほうがいいですよ?」
「えっ。」
何のことだと聞きたかったのだが聞く前に楓は自分の部屋に戻り扉を閉めてしまった。
「………そういえば、何でこっちの窓は空いてたんだろう。」
別に特別窓を開けていたというわけではなかったので、どうやって外側から入ってきたのだろうか。まあ、夕飯前に来た時にまた来れるように扉をかすかに開けておいたりでもしたのだろう。
今度はしっかりと窓を閉め鍵を閉める。これで大丈夫だろうと思いベットに向かおうとした。
「痛っ!」
足元に何かが落ちていたのだろう。それに気づかずに踏んでしまった。床には特に何も置いていなかったはずなのだが見落としていたのだろうか。気になったので、何を踏んだのだろうと足元を世化した。
「ん?なんだこれ。」
落ちていたのは、五百円ぐらいのサイズをしたコバルトブルーの色をしたひし形の石だった。石にしては特殊な形をしていて、まるで旅行先のお土産にあるパワーストーンのようだ。
「楓が落としていったのか?」
俺はこんな石を買ったり貰ったりした記憶はないし、落ちていたのが丁度楓が座っていたところだった。いやあ、今時パワーストーンを持ってる人なんているんだなあ。
「まあ、明日渡しておくか。」
今渡すにしても遅い時間になってしまったし、何より明日また会えるのでしばらく自分が持っておこう。そう思い、パワーストーンを取ろうとして触れた時だった。
「————————あ。」
ブツッという何かの接続が切れたかのような音が脳内に響き渡って瞬間、目の前の画面がブラックアウトした。目をしっかり開けているはずなのに画面に映しだされるのは何もない、只々真っ暗な視界のみ。
「なんだこれ。ぐっ!」
次に来たのは強烈な頭痛。まるで何かで思い切り頭を殴られた感覚。それと同時に脳内に何かが入ってくる感覚。だが痛みのせいで入ってくる感覚がするだけで頭に入ってこずボヤけた映像が流れてくる。
「ぐっ、あがああああああああ!」
頭痛がさらにひどくなる。今度は脳を何かで潰されたかのような感覚。
————————何かがぼんやりとだが見えた。そこには二人の人間がこちらを向いていた。
「何………だッ!」
———————不思議と初めて見る景色ではないと脳が判断した。
『ごめんねっ!ごめんっ………!』
——————声が聞こえた。女性の声だ。何故、謝るのだろう。
『お前をこうしたのは、私のッ!』
——————声が聞こえた。男性の声だ。何をしたというのだろう。
視界が揺らぐ。グラグラと揺れて段々と暗くなっていく。そして気づいたときには———————
「………はっ!」
頭の痛みは消え、俺は床に倒れていた。左手にはさっき拾おうとしていた石をつかんでいた。
「寝てたのか、俺は。」
立ち上がり、家に置いてある時計を見る。時刻は三時を回っていてすっかり日付けが変わっていた。またもや中途半端な時間に起きてしまったが、異常に眠かったので眠る眠らないの考えをする前に自然とベットにだいぶしていた。
明日からも普通の日々が続くと思いながら———————。
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