第6話

 マイグは慌ててその場で魔法で時間を止め、ナリーナと2人だけで話ができるようにした。


「おいっ、ナリーナ、お前どういうことだ?昨夜の約束はどうした?」


「だって、今の話だと、魔物放っただけでしょ?約束が違うんだから無効よ。陛下の方がカメリアはすぐに破滅するもの」


「チッ」


舌打ちするマイグだが、これ以上話すわけにはいかない。魔力を解き、その場から消えることにした。


ウィストン陛下は時間を止められてたものの、マイグよりレベルが高いので会話内容は全て筒抜けであった。


「約束とは何だ? ナリーナ」


「そんなことよりねぇ、ウィストン陛下今すぐにカメリアを焼き払ってぇ」


ナリーナはごまかすように昨夜のような失敗はしないと心に決め、甘えるように体をうねらせながら、胸を押し付ける。ウィストン陛下はニヤリと笑みを浮かべ、メイドや騎士たちを全て下がらせた。


「おぅ、いいなぁー積極的なのは嫌いじゃない……だが、その前に一つ」

「何ですか?」

「お前は白魔法使いだよな?」

「えぇ?」


ナリーナは驚く。いつ気づかれたのだろうか。白魔法は昔に一度しか使ったことはない。過去の出来事を思い出す。


 ナリーナが8才のとき、父様と馬を見に行った時のことだった。白い馬に乗り、まさに白馬の王子様という言葉が似合うの男の子がいた。父様は馬主と話をしていたので、ナリーナはその男の子を見ていた。その子は、颯爽に馬を走らせていたが、急に体勢を崩したようで転んで、頭から血を流し動かなくなった。心配になり駈け寄った。辛うじて呼吸はしていたので、ナリーナは誰もいないのを確認し、白魔法を使い、頭を治癒した。本当は、父様からこの魔法だけは使っちゃダメだと言われてたのだけど、私もませた女の子だったこともあり、この男の子が本当は王子かもしれない。だから、助けなきゃという勝手な思い込みだけで治癒し、意識が戻る前に帰れば、バレないだろうと思っていた。しかし、立ち上がるとその子は、ナリーナの腕を引っ張り、私の手に何か描いた。その手を振り払い、何を描かれたのか確認しても何も描かれていなかった。だから、安心して生活を送っていたのだった。


「……なぜ、それを……」

「あ?その手に描いてあるのが証拠だよ」


ウィストン陛下が言うと、ナリーナの手の甲は光を放ち文字が浮かんでいた。


「もしかして、あの時の?」

「そうだ。あの時は助かった。礼を言う。しかし、今のお前は白ではない何かに包まれており、お前が俺に触れなければ、その印に気づくこともなかったのだが……運命というべきなのかもしれんな」

「はい? どういうことですか?」

「……まぁいい。それにしてもマイグの執着もなにか匂うのだが……まぁ、いい。俺のそばにいれば、お前は安心だ」

「はい」


ナリーナは、理解できなかったがそのまま抱かれるのかと目を瞑ったが、ウィストン陛下は何かグッと堪えるかのように拳を握り、メイドを呼んだかと思えば、部屋を与えられ、湯あみをさせられた。


陛下に抱かれるためには体を清めなきゃならなかったのね。ってことは今夜私の体で陛下を篭絡させてあの国を潰してやる。いつも以上に肌の手入れを行った。


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