第5話

 そのとき、声質が変わり、威厳のある声が聞こえてきた。


「おい、マイグ! ここでは魔力使用は禁止だぞ? 忘れたか」


「申し訳ございません」


苦虫を噛み潰したように謝罪するマイグ。


それに反して、いきなり声が変わったけど、おじいちゃんに何があったの?意味が解らずあたふたしているとナリーナの目の前には銀色に輝く髪を纏った美しい少年がいた。この男の子いつ来たのかしら?見つめあう二人。


「え?なんでここに男の子が?君、迷子?ここは王宮だから早く向こうに行こうね」


ナリーナは優しく教え、その男の子の手をつなぎ王宮から連れ出そうとした。


「ギャハハハハ、マイグこの子すげぇおもしろいな。気に入った! 王宮魔術師でなく俺の嫁にしてやろう」


この男の子は、本当に何を言ってるのだろうか。


「もうふざけてるとここのおじいちゃん陛下に怒られるよ。っておじいちゃんどっか行ってるし」


ナリーナはおじいちゃん陛下は、きっとトイレね。年寄りはトイレよく行くものね。この子を逃がすには今がチャンスだわと思い、扉を開けて逃がそうとした。


すると、マイグは堪え切れずに話した。


「陛下、お戯れはその辺にしてください。俺の新入りは陛下にはあげませんので」


「おう?お前が珍しく執着するなんてもう抱いたのか?いや、抱けたから相棒に任命したのかな」


ニヤニヤする男の子。この子はどんな教育を受けたらこんな下品な言葉遣いができるのでしょうか。


「ちょっとこれ以上は頭の悪いお嬢ちゃんにはかわいそうだから、ネタ晴らししてあげるね」


ポンと目の前で、先ほどのおじいちゃん陛下が現れる。その瞬間に魔力が流れるのを感じた。


「え?おじいちゃん陛下と男の子は同一……人物?」


「当たり―!!」


「ここの国王陛下は18歳のウィストン陛下だ」


マイグは説明した。


「すごいね。18歳で陛下とか」


ナリーナはそこに感心した。こんな幼い子が国を治めており、なおかつ幸せな国を維持してる。本当にこの国を大切にしているんだろう。そう思っていた矢先にウィストン陛下はマイグに言った。


「隣国のカメリアはどうなっている?魔物は3体だけか?少ないだろ?」


「いえ、その3体は全て人間を食って、さらに魔物化へとしていくので問題ありません。それに魔物がたくさん出てはこの国が疑われますよ?」


「あぁ、そうだったな。うちの魔物を全てあちらに送り込んでるおかげで、この国は幸せなのだからな」


ウィストン陛下は笑っている。その事実を聞き、驚愕した。この国が幸せなのはカメリアに魔物を送り込んでいるからですって?何かがおかしい。それに、魔物は今まで父の結界で入れていない。いったいどういうことだろう。


「で、君もカメリアの破滅を望んでいるのだよね?なら俺の嫁になればもっといいものを見せてあげれるよ」


「え?どんなことですの?」


ナリーナは、復讐だけに生きると決めたのだ。何でも復讐につながるコマはいくらだってほしい。


「そうだな、マイグは魔物3体でゆっくり倒していくようだけど、僕なら一瞬で焼き払うかな」


にこやかな顔からは想像もできないようなことを話すウィストン陛下。もちろん、ナリーナの答えは決まっている。


「なら、嫁になります」


「よしっ、決まりだ! ここに妃が誕生したよ」


パチパチ


と今まで静かに見守っていた兵士たちがまばらに手を叩き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る