御人形 おにんぎょう

鈴ノ木 鈴ノ子

御人形 おにんぎょう


 ちりんちりんと鈴が鳴る。

 

 暗い闇夜の線路の上を女の子が1人で歩いてる。


 闇夜に目立つワンピース。


 片手に小さな小さな鉞を。


 片手に小さな小さな人形を。


 大事、大事、と言いながら、ゆっくりゆっくり歩いてる。


 近付く駅舎に女性が1人、狼狽しながら怯えてる。


 辺りをキョロキョロ見回して、スマホをガタガタ操作して。


 ここはどこ!?不安そうに叫んでる。


 三日月のような笑みを浮かべてニタリと女の子が微笑う。


 片手の鉞を天高く持ち上げて。


 片手の人形をその場に捨てて。


 両手でしっかり鉞握り、一目散に走り出す。


 響くは線路の砂利の音。


 響くは可愛い薄笑い。


 彼女はそれ聞き驚き取り乱す。


 されど身体は動かない。


 響かぬは彼女の叫び声。


 響かぬは彼女の命乞い。


 天高々に鉞上げて、三日月のように笑み浮かべ。


 ゆっくりしっかり振り下ろす。


 とんっと身体に突き刺さり、赤い絵の具と断末魔。


 倒れた彼女の亡骸を女の子がゆっくり見つめてる。


 今度も大人のお人形


 欲しい子供の人形は


 いつまで経っても作れない。


 小さくなって転がった、作りたての人形を。


 持って再び線路に降りる。


 ちりんちりんと鈴鳴らし。


 ゆっくりゆっくり線路の上を。


 一歩一歩踏みしめて。


 子供の人形作るため。


 今日も線路を歩いてく。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

御人形 おにんぎょう 鈴ノ木 鈴ノ子 @suzunokisuzunoki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ