第8話 入寮
それから数週間後。
一度スカーレット家に戻ったアキナと寺門は、ある準備を進める。
魔術学校は全寮制だからだ。そのため、自分の生活に必要なものを持って再度学校に向かうのだ。
「これからアキナは家にいないのか。ずいぶんとさみしくなるものだな」
そうエボルトが言う。これまで箱入りだった愛娘が学校に通うとなると、心に来るものがあるのだろう。
「学校生活のことはリョウ、君が面倒を見てやってくれ」
「わかりました。善処します」
そういってエボルトは寺門の肩を叩く。
エボルトもアキナと同じように、不安が募っているのだろう。そこをカバーしてやれるのは寺門しかいない。
寺門に責任がのしかかる。
しかし同時に安心もしていた。アキナはいい子であることは、寺門の経験から分かっている。
特段心配することもないだろう。
だが、もしものことがあるため、アキナには一言言っておくことにした。
「アキナ、もし学校生活で何か困ったことがあったら、僕に言ってください。力になれることがあるかもしれませんから」
「うん。分かったわ」
二人の間で約束が交わされる。
そして学校生活が始まる数日前、二人は入寮のために、再度魔術学校のある街に向かっていた。
そして到着すると、そのまま荷物を持って、寮のある建物まで向かう。
すると、そこにいた魔術学校の学生と思われる人に出くわす。
「君たちは学校に入学する者か?」
「はい」
「どれ、合格証明書と入寮許可証を見せてみろ」
そういって二人はそれぞれ書類を提示する。
「ふむ、確かに間違いはないようだ。ようこそ魔術学校へ。男子寮はあっち、女子寮はそっちだ」
そのように案内されて、アキナと寺門は寮に向かう。
「それじゃ、またあとでね」
「はい、またあとで」
そういって二人はそれぞれ目的の寮に向かう。
寺門が目的の寮につくと、そこに一人の男子が立っていた。
「お、君はこの寮の住人になる人かな?」
「はい、そうです」
「念のため入寮許可証を見せてくれ」
「どうぞ」
そういって寺門は書類を再び提示する。
「うむ。うちの寮であっているな。君の部屋は2階の部屋だ。行けば分かるぞ」
そういって寺門は指定された部屋に向かう。
その部屋は二人部屋で、まだ相手は来ていないようだ。
寺門は自分のベッドを確保し、荷物を置く。
今後の予定では、明日が入学式である。
今日のうちに、学内を見て回ろうと思い、寺門は部屋を出た。
学内は広大であり、一日で見て回るには時間が足りない。
とりあえず入学式で使う予定の講堂と、学びの場になる教室を見て回ることにした。
そして夜になり、寮の中にある食堂で夕食をとり、自室で眠る。
翌日、講堂にて入学式が執り行われた。
「君たちは、将来有望な黄金の卵である。この学校で大いに役立ててほしい」
学校長が挨拶をする。
寺門は真面目に聞いていたが、アキナは少し飽きているようだ。
そんな入学式が終わると、今度はクラス分けに入る。
クラス分けは、校舎入口に即席の掲示板にて張り出されていた。
「私は……、あった!一番上のクラスだ!」
「よかったですね、アキナ」
「でもリョウのクラスって……」
「一番下のクラスですね」
「大丈夫?」
「大丈夫ですよ。何の心配もありません」
「……うん。そうだね」
そういってアキナと寺門は別れ、指定された教室に入った。
寺門は教室に張り出された座席表を確認すると、その席に座る。
こういう時は友好関係を築くために話しかけたりするものなのだろうが、慌てないことが重要である。
そんなことを考えていると、教室に担任の先生が入ってくる。
「おはよう諸君。今日から君たちの担任になったソルベだ。これから君たちの成長に期待している」
こうして、寺門の学校生活は始まったのである。
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