第7話 冒険者、懐かれる
降参したコボルド達は、このシャロウアビスについて、分かっていることをぺらぺらと話し始めた。
GM(コボルド):「ここに呼び込まれたとき、俺らの仲間の一人が魔神と融合して、『コボルド魔神王』になったンスよ~!」
ヴィーノ:「なんだそのネーミングセンス」
GM(コボルド):「最底辺としてこき使われてた俺たちだけど、魔神王様の元、遂に蛮族の頂点に立ぁつ!! ……ってなことに、なればいいなぁって、夢見てました」
ダナ:「そんなつまらない夢には、幕を下ろしてあげましょう」(キリッ)「でも、犬を集めてたのはどうしてです?」
GM(コボルド):「実験のためでさぁ」「魔神王様が下さる餌を与えると、犬どもが強くなるンス。成功すれば俺らも強くなれますし」「今のところは、この魔域から出てしばらくすると、元の姿に戻っちまうんですが……」「あ、でもこの領域が広がるにつれて、持続時間も長くなってましたから、夢の実現まであとちょっとかなぁって」
ヴィーノ:「じゃあ、外に大量に現れた狼たちも、お前達の仕業か!」
GM(コボルド):二匹は顔を見合わせた後、顔の前で片手をぶんぶん振る。「そ、そりゃ俺たちのせいじゃないっス」「知らない。ほ、ホントです!」(ガクブル)
ヴィーノ:あれっ?
アラーイス:「餌って、なんかキラキラしてたやつ?」
GM(コボルド):頷く。「魔神王様が直々に、東の荒野から取ってきて下さるンス」「魔神王様に、俺たちは近づくなって言われてます」
アラーイス:「それを吐き出させる方法というか、回復薬的なものはないの?」
ヴィーノ:「いや、今のところ、外に出てしばらくしたら元に戻るらしいぞ。……だよな?」
GM(コボルド):「へい、そのとーりです」
アラーイス:「飲んじゃった犬は、しばらく暴れるってこと? カール大丈夫かなって思って」
ダナ:カールの様子を見たいです。
GM:(おっと、コボルドまだ全部話してないけど。そっちの方が気になるのかな?)「あっしら、もう行ってもいいっスかね……?」ってコボルドが土下座のままじりじり下がってる。
ヴィーノ:「待て、お前ら。先にこのコボルド、縛り上げてからにしようぜ」
GM(コボルド):「ヒィ~~! そんなことしなくても、俺らもう何もしないっスよ~!」「『強い者には負けろ』って言いますしね!」
ダナ:「長いものには巻かれろ?」
GM(コボルド):「そうそれ」
ヴィーノ:(低い声で)「オレは……、基本的に他人を信用しない」
GM(コボルド):「ひ、ヒエッ!」「や、やだなぁ! 俺らもう、友達じゃないッスか!」
ヴィーノ:「友達なんてのは相手を利用するための、クソの
GM:さらっと酷いこと言った!(笑)
アラーイス:ガーン。花弁が何枚か、ぱらぱら散ってる。(言葉の流れ弾に当たったらしい)
ダナ:えっ、友達じゃなかったの? と意外そうに二人の顔を見比べてます。ダナが出会ったとき、既に二人は一緒だったから、普通に友達だと思ってたよ。
GM:コボルドは始末される流れかと思って、慌てて逃げようとしますね。
ヴィーノ:首根っこ捕まえて、空いている檻にガションガションってしたい。
GM:では簡単に捕まえられて、コボルド達は檻に入れられました。(雰囲気を出すためにフロアの上に置いてあった、檻のオブジェクトの中に、コボルドのコマをしまう)
ダナ:Aが瀕死になったところで降参してくれてれば、もっと心証良かったのに。
GM(コボルド):「しくしくしく……」(こそこそ)「大丈夫だ、こいつらがいなくなったら、魔神王様が出して下さるさ」
アラーイス:「魔神王様ってどこにいるの?」
GM(コボルド):「魔神王様はここの東にある湖のお城にいるっスけど、皆さんじゃ絶対勝てないから、近づかない方が良いっスよ」「絶対、絶対、止めといた方が良いですぜ。岸に俺らの使っているボートはあるけども! ヤ・メ・ト・ケ!」
ヴィーノ:どんどん勝手に喋ってくれるなぁ。
ダナ:確かに勝てそうには思えないけど。「とりあえずカールを」
GM:カールはまだ縛られて、猿ぐつわを噛まされている状態です。(ごそごそ)ドン! ここでお待ちかね、皆さんの大好きな表をプレゼントです。
ヴィーノ:(画面に現れたコマを見て)変異表?
GM:はい。そして画面の端に、意味ありげに並んでいる謎のコインがありまして……。皆さんが新たな場所に移動する度に増えていたものです。森では迷ったので、1枚余計に増えて、合計4枚あります。……言いたいことは分かるな?
ヴィーノ:それだけ沢山、餌を与えられていた。
GM:ご名答。カールがそれだけ変異しています。では、はりきって振っていきましょう! てあーーっ!
一同:どきどき。
GM:1回目「炎のブレス」をゲットしました。2回目「巨大化」、3回目「双頭」、4回目も「巨大化」。重複した結果はそのまま破棄となりますので、合計3つの変異を起こしていました。
ヴィーノ:「オレは大きい奴には弱い」てか、良くカールだって分かったなこれ。「さっき遠目だったからカールだと思ったけど、近づいてみたら違うなこれ……」
一同:(笑)
アラーイス:「遠近感おかしい。遠近感おかしいって!」
GM:(カールの変異に合わせて、コマのデータを修正中)
アラーイス:このままだと絶対死ぬ。何も出来ないし。
ヴィーノ:カール仲間になってくれないかな……
ダナ:あ、そうだ。「これを」と言って、クリスから預かったハンカチを取り出します。ちょっと怖いけれど、勇気を出してカールに近づいて、ハンカチを鼻先に突きつけてみます。
GM:そうしたらカールは、ハンカチの匂いをクンクン嗅いだ後、ダナの手ごとぺろぺろしてくれます。懐いた。
ヴィーノ・アラーイス:良かったぁ……。
ダナ:首の辺りを撫で撫でしてあげよう。猿ぐつわも外してあげて、「大変な目に遭ったね」
GM(カール):二つの首がステレオで「ワン、ワン」尻尾ふりふり。
ヴィーノ:「オレには近づけないでくれ」
ダナ:「早くクリスに会おうね、カール」撫で撫で。
アラーイス:「でもこれ、しばらく隠しておかないと、クリスもショックを受けるレベルだよね」
ダナ:「それは……そうですけど……」
アラーイス:「じゃあ、しばらくは僕たちの仲間だね!」
ダナ:「でも、一日二日で治るかも知れないですし」
GM:(漸く調整を終えた)カールはフェローです。今後、皆さんと一緒に行動し、探索を手伝ってくれます。と言っても、カールが出来ることはコマのデータ通り、戦闘の手助けぐらいですが。何をしてくれるかはランダムとなります。カール行動時のダイスは、皆さんのうちのどなたかが振って下さい。
ヴィーノ:これはもしかして、もっとウロウロしてから戻ったら、さらに強力になっていたかも知れないやつ?
アラーイス:「それならヴィーも粉を被って強くなってきたら?」
ヴィーノ:「なぬ?」 え、これ、人間にも効果あるの?
GM(コボルド):檻の中から「俺たちにも効くし、多分人間にも効果あるんじゃないっスかね」「知らんけど」
アラーイス:「冒険王になれるかもよ」
GM:(冒険王になりたいのは、アラーイスでは)では日も暮れたことですし、夜営の準備を始めましょう。(背景画像を夜に、フロアに動く焚き火のオブジェクトを置く)
長い一日が終わり、休息の時間がやってくる。
冒険者たちは度重なる戦闘で、既に精神的にも肉体的にも限界だった。焚き火を囲む和やかなひととき。傍らでは大きな牧羊犬が、一行を守るように身体を丸めて寝息を立てている。
そこで彼らは―――
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