第35話 薪の量産を開始します
うーん、目立ってるなあ。
ギルドを出てから周囲の視線が私たちに集中してる。
まあ、無理もないか。ライラックさんみたいな爽やかなイケメンが、遠足の引率よろしく子供を引き連れて歩いていれば、そりゃあ目立つよね。
「おい、見ろよ。ライラックのやつ、今日は子守りらしいぜ」
「ははっ、ナヨッちいあいつにはお似合いじゃないか」
ふと聞こえてくる同業者の声。ライラックさん、イケメンな上にランクも高いからなあ。普段から男性ハンターのやっかみも多いんだろうな。
でもまあ、男性陣はまだいい。問題は女性陣。突き刺すような視線がめっちゃ怖いんですが!
「なんで、あんな子供が彼と仕事するのよ!」
「ライラック様に助けてもらって、自分が特別だと勘違いしてるんじゃないの?」
「身のほどをわきまえなさいよね」
ともすれば雑踏にかき消されてしまいそうなボソボソ声でも吸血姫の耳には届く。そうやって陰口言ってる間はいいけど、思い余って陰湿な行動に出ないでくださいよお? 髪とか服に針を仕込まれたり、嘘情報とか広められたらたまらない。
「すげえっ、Cランクだ。かっけー!」
「俺、将来、絶対に剣士になろう」
「本当に剣士を目指すなら、まずは体力をつけることだよ。基礎がしっかりしていないと、剣は持てても使いこなせないからね」
孤児たちは周囲の視線など霞のごとく無視。いや、気づいてないだけか。遠慮もなにもなくライラックさんに話しかけている。ライラックさんも律儀に応対するものだから孤児たちの興奮は高まるばかり。はしゃぎすぎて、森につくまでにバテるんじゃないだろうか。まあ、バテても働いてもらうけどね。
「ヨナもお話ししてくれば?」
「い、いいえっ。私の一番はマイ様ですからっ」
「嬉しいけど、私、そこまで心狭くないよー?」
ヨナもお年頃だから、ライラックさんみたいなイケメンを意識して当然だけどな。でも、私を差し置いて話しにいくのはためらわれるらしい。
そんなヨナの迷いと私の気持ちに気づいたのかどうか、ライラックさんが話を振ってきた。
「マイちゃん、ヨナちゃんだったね。二人はなにができるんだい?」
「わ、私は火の魔法を少し。あと家事全般がそれなりに……」
ヨナ……、ライラックさんは多分、ハンターとしてなにができるか訊いたんだと思うよ。思わず家庭的アピールしちゃうとか可愛いすぎるわ。
ライラックさんは礼儀正しく指摘はしない。
「そうなんだ。いいお嫁さんになれそうだね」
さりげなく追撃を入れてくるとか。計算せずに口にしているなら、相当な女殺しだねー。ファンも増えるわけだ、これは。まあ、勘違いしている女性も何人かいるとは思うけどさ。
いいお嫁さんと言われてヨナは真っ赤だ。どう反応していいのかわからないようで、モジモジしている。微笑ましい。
「それで、マイちゃんは?」
「私は……あれ、なんか増えてる」
そういえば、しばらくステータスを確認していなかった。なのでステータスを開いてみたら……。
【名前】マイ
【種族】吸血姫 (嗜好:快楽)
【年齢】十一歳
【職業】Fランク ハンター
生命力:─/─
マナ :350/350
筋力:56
頑健:57
器用:60
敏捷:100
知力:101
精神:140
魔力:221
魅力:53
運 :50
【種族特性】
弱点:日光
魔属性
魔力の肉体
余剰魔力漏出
【種族スキル】
暗視
影渡り
嗅覚強化
吸血
吸精
霧化
血液操作
再生
血の契約
魅了
闇の翼
【スキル】
隠密:Lv3
解体:Lv3 up!
気配消し:Lv3
採取:Lv3 up!
裁縫:Lv1
追跡:Lv4
魔力隠蔽:LV4
魔法の才能:Lv8
魔力回路:Lv10
魔力感知:Lv2
料理:Lv3 up!
火魔法:Lv0
水魔法:Lv1 up!
氷魔法:Lv1 up!
風魔法:Lv0
雷魔法:Lv0
土魔法:Lv0
闇魔法:Lv3
光魔法:Lv0
精神魔法:Lv0
火魔法耐性:Lv3
水魔法耐性:Lv9
氷魔法耐性:Lv7
風魔法耐性:Lv9
雷魔法耐性:Lv5
土魔法耐性:LV9
闇魔法無効
光魔法耐性:Lv4
聖魔法耐性:LV1
精神魔法無効
毒無効
呪い無効
【称号】
転生者
真祖の血族
ヨナの主 new!
【EXスキル】
オートマッピング
解析
加速・減速:Lv3 up!
クリエイトイメージ
索敵
自動翻訳
スキャン
前世の記憶
全属性適性
全抵抗力上昇
操髪
マイホーム
解体とか料理が地味に上がっているのはわかる。だけど、水魔法と氷魔法がLv1になっているのはなぜだ?
先輩ハンターなら、なにか知ってるだろうか。
「ふむ……。なにか水や氷を大量に使う仕事でもしたかい?」
「水や氷を使うなんて……あ」
「心当たりがありそうだね」
「ええ、まあ。詳しくは言えませんが」
心当たり。休憩所でサハギンを一掃するために【クリエイトイメージ】で大量の水を氷に変えたあれだ!
いや、そうなると。【クリエイトイメージ】をうまく使えば魔法のレベルを上げることができるかもしれないのか。これは朗報。あとで色々試してみよう。
お話ししながら町を出て近くの森へ。遠巻きに何人かついてきているのが【索敵】でわかる。それをライラックさんに告げると驚かれた。
「マイちゃんも気づいていたのか、大したものだね。まあ、仕事の邪魔はさせないから安心して」
そう言い切るだけの自信があるんだろう。ついてきたのが、やたら絡んできたおじさんなのか、ライラックさんのファンなのかは知らないけれど、任せてしまって大丈夫な気がした。
なので、気持ちを切り替えてケビンたちに指示をだす。
「さて、みんなには枯れ枝を集めてもらいます。私はここにテントを張って仕事をするので、集めた枯れ枝は外に積んでおいてくださいね」
「枯れ枝? 薪じゃねーの?」
「枯れ枝で大丈夫。あと、テントの中は覗かないことと、ライラックさんの指示には従うこと。はい、解散!」
駆け出すケビンたちを見送って、ヨナと一緒にテントを張る。大人が五人は横になれそうな大きなテントは、ギルドに無理を言って今回の依頼のためだけに借りたものだ。買うようなお金は持ってないし。
テントを張り終わると、入り口にドサドサと枯れ枝が置かれていく。んじゃ、いっちょやりますか。
【クリエイトイメージ】で枯れ枝を次々に薪に変えていく。大きさはある程度揃えるけれど、形はバラバラに。あまりに均一すぎると不自然だしね。
しかし、消費マナが少ないとはいえ、大量に作っていけば残量がヤバくなるわけで。
「ヨナ、ちょっと来て」
「はい、マイ様。なんで……んんっ!? ん、んちゅっ……ぷあっ! き、急になにを!」
「ごめん、ちょっとマナを回復させて」
「こ、こんな場所でですか!?」
「大丈夫、キスだけだから」
「そういう問題じゃ……んふううっ❤」
当然だけど【索敵】で人が近くにいないのを確認している。ライラックさんは基本、孤児たちに同行しているけど、遠巻きにしている人物が近づいてくると素早く牽制に走っていく。さすがCランクだ。
そんなこんなで、マナを補充しながら薪を量産していると、テントの外から声をかけられた。
「マイちゃん、ヨナちゃん、そろそろ昼食にしよう」
あ、もうそんな時間か。
「わかりました、すぐ行きます。……ヨナ?」
振り返ると、下腹部を押さえたヨナが顔を真っ赤にして泣きそうになっていた。えっと?
「マイ様……【マイホーム】お願いします。下着……代えたいです」
……あ、はい。
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