第19話 下着を作って環境破壊

「ふう……。太陽が黄色いぜ」

 おはようございます、マイです。あ、もう昼か。太陽が真上にある。

 ちなみに、日本では太陽を赤く塗ることが多いけど、海外だと太陽は黄色で塗ることが多いんだよね。だから太陽が黄色い、というのは他意はないわけで……。誰に言い訳してるんだ、私は。

 昨夜は……うん、まあ、その……すごかった。いや、本当にすごいんだよ。見て見て、この肌。ケロイド状だった肌がツルツルの艶々。マナも全快したし、獣の血とは比べ物にならない回復効率。本当にすごい。

 あとは……柔らかかったな。なにがって? みなまで言わせるなよ。

 だけど、復讐ばかり頭にあって気にしてもいなかったけれど、私も女の子の身体だったんだな、と実感した。いろんな意味で。

 だから言わせるなよ。

 そういえば、マナの回復具合を知るためにステータスを見たら目が点になった。


【種族】吸血姫 (嗜好:??)だったのが、

【種族】吸血姫 (嗜好:快楽)になってた。


 ん? おおっ、どういうこと? なんだか越えてはいけない一線を越えてしまった気がするんだけど、どうしたらいい? どうすればいい? とりあえず、ごめんなさい。

「お、おはよう……ございます」

「あ、うん。おはよう」

 扉を開けて、おずおずとヨナが顔を覗かせた。目が合うと真っ赤になるとか、朝から私を悶死させる気かな。

「昨夜は、その……、お恥ずかしいところを……」

「いや、いいよ」

 そう答えてヨナの頭を撫でてあげる。ふわふわの狐耳がピコピコ動いて可愛い。

 あ、多分勘違いしてるだろうけど、ヨナの言う恥ずかしいところというのは、吸精が終わって寝る時になって、急に泣き出したことだから。本人にも理由がわからず、急に涙が出てきたと言うので、そのまま抱きしめて好きなだけ泣かせてあげた。気がついたら二人とも寝てたんだけどね。

 多分だけど、奴隷にされたり、母親が死んだり、生贄にされたりと、いろいろあって張り詰めていた緊張の糸が切れたんじゃないかと思う。だから好きなだけ泣かせてあげたのだ。可愛い子を胸で泣かせてあげるとか男冥利に……いや、今は女だったわ。ともかく、好きなだけ泣かせてあげてよかった。ヨナの表情も明るいしね。

 と、そのヨナの顔が強張った。

「マイ様、陽に当たって大丈夫なんですかっ!?」

「ん? ああ、そうか。ちょっと身体がダルくなるだけだから大丈夫だよ」

「そうなんですか? ……でも、それなら、誰もマイ様を吸血鬼だと勘違いしませんよね」

「あ、そうか」

 そういえば、今まで誰かに遭遇したのは夜ばかりだった。もし、アンシャルさんたちを助けたのが昼間だったら、攻撃されることもなかったんだろうなあ。

 まあ、過ぎたことはしょうがない。これからは昼間に人と会うようにして、吸血鬼じゃないですよアピールをしよう。とはいえ、目を見られたら怪しまれるのは間違いない。どうしたものかな。

「これからどうするんですか?」

「南へ行こう」

 この辺りは国の北端なので、ヨナを売ったという領主の領地から出るなら南へいくのが早い。東を目指すと、領主がいる町を通らないといけないし、北から西へは険しい山脈が隣国との往来を不可能にしている。アンシャルさんたちが、わざわざ南から出張ってきたとは思えないから、早々にここを離れるのがいいだろう。

 そんなわけで、軽く食事をとったらすぐにでも出発────。

「あの、マイ様……」

「なに?」

「ま、また……。必要なら吸ってください、ね?」

 ズキューン!

 上目づかいでそのおねだりは反則でしょう。……がくり(萌死)。



 道中、いろいろな素材を集めながらひたすら南下する。【スキャン】で土中や岩石を調べながら、必要な素材を探し出して【クリエイトイメージ】で形にしていく。

 最初に取り掛かったのは風呂、台所、トイレの、要するに水回り。粘土を集めて耐火レンガを作り、竃を作る。ちなみに風呂も竃で湯を沸かすタイプにした。いずれ魔法も利用して温水が出るようにしたいけれど、私もヨナもそこまで火魔法が得意ではないし。

 台所の洗い場は石材で、湯船は木材で作った。さすがに檜は見当たらなかったけれど、なかなかいい香りのする木材があったので。

 トイレは和式と洋式、どちらも作った。タンクに水を補給しなくちゃいけないけれど、この世界には無い水洗だ。トイレットペーパーは木があれば【クリエイトイメージ】で創れた。まあ、地球で使っていた物よりはゴワゴワしてるけど。

 あとは調味料を入れる素焼きの壺など、細々こまごまとした物を作ったら一応の形はできた。あとは使いながら改造することになるかな。

 材料があるとはいえ、これだけ作るとマナの消費も激しかったな。まあ、補給はヨナとエッげふんげふん。

 あ、そうそう。懸念の排煙、排水だけど、【マイホーム】の一番外側の壁に煙突や排水溝をつないだら、なんとかなった。煙が充満することもないし、排水が溢れてくることもない。ただ、どこに流れていくのかは、わからない。

 ……考えないようにしよう。

「吸血姫って、すごいですねぇ」

「ウン、ソウダネー」

 ヨナはEXスキルを吸血姫の能力だと勘違いしてくれている。修正の必要はない。多分。

 そのヨナはというと、薬草や食べられる野草探しで頑張ってくれている。【マイホーム】内の改装は私が全部やってしまったので、他のことで頑張ろうと決めたらしい。台所が完成した時など、これからは自分が料理をすると言ってきかなかった。私は気にしてないんだけど、ヨナとしてはなにか役に立ちたいらしい。なので、やりたいという仕事は任せることにする。

 ちなみに、炭の火力と持ち時間にとても驚いていた。うんうん、作ってよかった。

 そしてある日、ヨナが朗報を持ち帰ってきた。

「マイ様ーっ! 綿花を見つけました!」

「ヨナ、よくやったー!」

 なでくりなでくり。そしてご褒美のチュー。

 ヨナがキス好きだと気づいたのは最近のこと。なのでご褒美には必ずキスをしてあげることにしている。長くしていると後が大変だけれどね。

 さて、移動しながら服も作ってはいた。地球でいう麻のような植物はすぐに、しかも多く見つかったので。しかし、服は作れたんだけど、その植物は下着にするには繊維が硬くて、身に着けていると擦れて痛かった。

 どこが? 訊くなよ。

 なので綿花を入手できたのは幸運だった。季節が秋なのも幸いした。これが春とかだったら綿は落ちてしまっていて使い物にならなかっただろう。

「ヨナのお手柄だから、ヨナの下着を先に創ろう」

「い、いいんですか?」

 もちろん、いいとも。

 そういえば最近、肉には困っていないせいか、痩せていた身体がふっくらしてきたよね。良いことだ。まあ、まだブラジャーは必要ないみたいだからキャミソールを。ショーツはリボンとかフリルとかいっぱいつけてあげましょうかね。ゴムがないので両サイドを紐で結ぶタイプになるけど。あ、尻尾があるからデザインには気をつけて……と。よし、できた。

 感想は?

「前の物よりは肌に優しいけど。な、なんだか変な感じです。こんなに飾りは必要なんですか?」

 必要!

 よし、続いて自分のも創ろう。ちょっと、いや、かなり? 胸が大きいからなあ、ワイヤーを入れて支えるようにしたい。とはいえ、地球の物のようにストラップで調整とかできるようには作れないから、水着みたいに紐で縛るタイプになるかな。

 というか、綿花が足りない。下着は毎日交換しなきゃだから沢山作りたいんだけどなあ。どうするか……。

 まてよ、確か綿の主成分はセルロースだったはず。セルロースは植物繊維の主成分だから、周囲の木のセルロースを材料にして綿を創ることはできるはずだ!

 思えばテンションが上がってたんだろう。範囲設定を忘れてた。

 やってみた。

 周囲の樹木が消滅した。

 当然、逃げた。

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