見つける順番を間違えた
「今日はこれで4体目か………」
思わずぼやきが口をついて出る。冬の間に鬱屈した恨みつらみのせいで、春になると奇妙に霊が増える。生まれた時から霊が見える体質だった僕としては、まったく辛い時期だと言えた。
学校が終わって下校中、見つけた霊はすでに4体目。自宅までの道のりはまだ半ばすら過ぎていないので、この調子では、何体の霊を見る羽目になるのか分からないくらいだ。
その時、ふと、足元の小石につまずき、目の前の電信柱に手をついた。そして、その拍子に、
「うわ、目が合っちゃったよ………」
目が合った霊は、すーっと僕に近づいてきた。
だが、その霊の様子を見て、僕は首を傾げた。ほかの霊と異なり、目の光がはっきりしているし、身体に欠損がない。
「あなたはどうして亡くなったのですか?」つい興味を惹かれて質問した。
「ようやく見える人に会えた………。私は昔ここで寺を営んでいた除霊師の霊です。依頼人の除霊をしている最中に心臓発作で死んでしまいました………」
「それで、どうして現世にとどまっているのですか?」
「その時の除霊が途中だったことが心残りなのです。除霊をしないと、私はきっと成仏できない………」
ここまで事情を聞いた時、僕は面倒ごとに巻き込まれそうで、そっと背を向けた。
しかし、ソレは、がしっと僕の襟をつかむと、顔を近づけて祈願を成就することを懇願した。
「で、でも、除霊が心残りって言われても、どうすれば良いのですか?」
「私はすでに霊になっています。同族を救いたいという気持ちが心残りの理由です。だから────霊に取りつかれている霊を除霊したいのです」
霊という言葉を聞きすぎて頭がパンクしてきたが、そんな霊を見つけなければいけないということだけは伝わってきた。
それから僕は必至になって霊に取りつかれた霊を探した。通学路にはそんな霊はおらず、隣県に足を延ばし、富士の青木ヶ原樹海まで行ってようやく見つけた。霊に取りつかれて、自殺した人の霊だった。
その霊を除霊させると、ようやく除霊師の霊は満足したようで成仏していった。「私の方を先に成仏させてくれてありがとう───」という意味深な言葉を残して。
数日後、いつもとは違う道で下校中、またも霊と目が合った。そして、その時初めて除霊師の霊が言っていた意味を理解した。
「私は、霊に取りつかれた霊を除霊している最中に死んだ除霊師の霊を成仏させている最中に心臓発作で死んでしまった除霊師の霊です。私の心残りは、霊に取りつかれた霊を除霊している最中に死んだ除霊師の霊を成仏させることで────」
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