不意に直球火の玉ストレートを喰らった結果

「こんな機会じゃないと言えなくて、本当に悪いって思ってる。でも、俺は心の底からお前のことが好きなんだ。小さいころから一緒に遊んで、ある時から遊ばなくなっちゃったけど、あれは何となく気恥ずかしくなってしまったからなんだ。その間もずっとずっと好きで、そしてこれからも」


 ───どうしよう。やり過ぎてしまった。


 私の背中に向かって怒涛の勢いで告白をしている幼馴染の声を聞きながら、やり過ぎを心底後悔した。

 もともと騙されやすい、人の良いやつだった。だから、こんな嘘にも騙されるのだろうか、と思いついたことを実行してみた。


「風邪が悪化して、一時的に耳が聞こえなくなっちゃった」


 お見舞いに来てくれた幼馴染に、そう書いたフリップを見せた。幼馴染は私のことを案じる表情をして、いつも以上にあれこれ世話を焼いてくれた。

 だが、これは中々面白いぞ、そう笑いを堪えながら背中を向けた途端、彼が私の背中に告白を始めた。耳が聞こえないという嘘を完全に信じ込んでいるようだ。


「本当はお前の耳が聞こえる時に、面と向かって告白したいんだ。でも、その勇気がでるか分からなくて。勇気が出せなくてごめん。いつ告白できるか分からないけど、必ず告白するから。……ほんとに酷い話だよな。こういうのって、ちゃんと伝えなきゃいけないのに。お前の気持ちも知らないのに」


 幼馴染の告白はまだまだ続く。私はベッド横の押し入れからマンガを探すフリをずっとしている。そろそろ振り返らなきゃ、不自然に思われる。


「好きなんだ、ずっと。このお前の部屋に来るたびにドキドキしてた。どこに遊びに行く時も、お前と一緒だったから楽しかった。ずっと一緒にいたいんだ」


 もう振り返らなきゃ。聞こえないフリを続けながら。


「絶対に告白する。彼氏として、お前の横にいれるようにがんばるよ」


 でも、どうしよう。顔のほてりが止まらない。真っ赤になってるのが自分でも分かる。こんな顔で振り向いたら絶対バレる。

 はやく、はやく振り向かなきゃ。

 でも、でもこんな顔じゃ。

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