おぼえまつがい
「じゃあ、次のページ。推古天皇の時代に鞍作福利らとともに隋に派遣された者はだれか。そうだな………、松田。答えてみろ」
「はい。小野妹子です」
「そうだ。よく勉強しているな。ここ、テスト出るからな。………ちなみに、まさかとは思うが小野妹子を女性と思っているやつはいないな。蘇我馬子もそうだが、男性であっても名前の最後に子が付くのは古代日本では珍しくないぞ」
───ガタッ
教室の後ろで椅子が倒れる音がした。振り向くと親友の谷口が驚いた顔をしてひっくり返っている。クラスの皆は一様に、あいつまさか、という顔をした。
授業終了後、谷口は猛ダッシュでこちらに駆け寄ってきた。
「お、おい。小野妹子って男だったのか? ………えっ? みんな知ってたのか?」
「いや、知ってるだろ………。むしろ、お前の反応にビビったよ」
「まじかよ。ちょー恥ずかしいじゃねえか」
「確かにその覚え間違いは恥ずかしいな」
こいつ、世界三大美女を聞かれて小野妹子とか言ってたんじゃないだろうな。アホな谷口のそんな場面を想像すると、プププと笑いがこみあげてきた。
さて、次の授業は歴史だった。すでに第二次世界大戦の歴史も履修が終了し、冷戦後のアフガン戦争、イラク戦争がその内容となっている。
この時代の戦争の特徴は、非対称戦が一般化したことだ。従来のゲリラ戦が発展的に解消し、全体戦の後背地に該当する本土を狙うグローバルテロリズムなどが展開し始めた。
また、殺傷力の高まった携行兵器が発達したため、局地戦の発生率が高まったことも指摘されている。
「おい、何を考えてるんだよ」
授業後、近現代の戦争を頭の中で復習していると、アホの谷口がやってきた。
「いやあ、いろいろな兵器が開発されたって聞いてさ、戦争がより残虐になったんだなって思ってさ………」
「だよな。この前ニュースにもなってたな。あれなんだっけ? コロナ爆弾みたいなヤツ」
「………もしかしてクラスター爆弾のことか?」
「あー、それそれ! やべっ、また覚え間違いしてたよ」
「あのなあ………。まあ、それはともかく、クラスター爆弾じゃなくても、名前から残虐な兵器だってわかるやつあるよな。よく使われるアレとかさぁ」
「………名前から分かるヤツってどんなヤツだ?」
「おいおい、まったくお前は。すぐ分かんだろ、タイ人ミサイルだよ」
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