第20話 作戦会議

 「なあ、もしかして呪いを解くスクロールを作る気?」


 30階でスライムを倒し、休むスペースを確保してひと段落ついた時、座りつつクルフルが聞いてきた。


 「わかっちゃった?」

 「やっぱりな。そんな事可能なのか?」

 「転写もそれで覚えたから。今から確認してみるよ」


 またもやノートを取り出したシャンスに、メレーフが聞く。


 「それって何?」

 「これ? スライムアルケミストノート。と言っても何か書いてあるわけじゃなくて、問うと教えてくれるって感じかな」

 「何かすげぇな」


 二人は、本を覗き込むも何も書かれていない。


 「まっさらだけど?」

 「そうなんだ。僕にしか見えないのか……」

 「ねね、やってみて!」


 わくわくしてメレーフが言う。


 「うん」


 ”呪いを解くスクロール”


 シャンスは、ノートをなぞる。


 〇『呪いのスクロール』の作り方。

  MP回復薬にスライムの核を入れるだけ。

  ●スライムの核レベル50―>ノートにかける

 スライムの核レベル50をMP回復薬に入れ、空白ページにそれをかける。文字が浮かび上がったら使用する。(破く必要はない)呪縛を掛ける相手と自身が同じレベルでないと、成功率は半減する。失敗すると自身にかかる。呪縛を解くのに使う場合は、これに触れ「かい」と唱えるだけ。


 ”うーんこれって、自身以外の人も解く事できるのかな? それより呪いのスクロールで解くとは思わなかった”


 「どうだ。あったか?」

 「え? あ、うん。でも、レベル50の核がいるみたい」

 「レベル50? それってレベル50のスライムを倒さないとけいないって事か?」

 「そうだね」

 「ここって、30階までしかないんでしょう?」

 「たぶん。この先に行ってないから」

 「行ってない? じゃ行ってみようぜ。なかったらワープで出て他を当たろう」


 そう言ってクルフルが立ち上がった。


 「あのさ、もしかしたらそれもないかも」


 立ち上がったシャンスが申し訳なさそうに言う。


 「どういう事?」

 「ここまで来るのにボスの部屋なかったんだよね……」

 「はぁ? じゃここからどうやってでたんだよ。あの穴からジャンプでもして出たのか? 俺らにそれ無理だぞ」

 「違うから。上に行く魔法陣で出たんだ。だからここから出るのはできるから」


 シャンスの言葉に二人は安堵する。


 「じゃもともとここで、レベル50のボスを倒すのは無理だったのね」


 メレーフのセリフに、ごめんとシャンスは返した。


 「なるほど。聞いた事がある。一種類のモンスターしかいないダンジョンがあるって。初心者とかそういう分け方はなくて、下に降りるほど強くなりボスは最後の階にしかいない。つまり一番下まで行かないと、外へ出る魔法陣が存在しない」

 「そっか。だからボスの部屋がないのか。どうする? 先に行ってみる?」

 「50レベルのスライムはいるかもしれないな。行ってみよう」


 三人は頷く。

 出発する前に、30階に戻る為の魔法陣を転写しておく。


 「よし、行こう」

 「ねえ、それよりさ、核拾わないの?」

 「え? めんどくさくないか。小さすぎ。そういえば、シャンはよく拾ったよなぁ」

 「あぁ……その事なんだけど、この鞄に収納されているんだ」


 二人は不思議そうに鞄を見た。


 「えっと、ドロップアイテムが自動でこれに入ってる」

 「え? そんなに小さいのに! 見せて!」

 「ちょ……」


 メレーフが鞄を覗き込む。


 「何も入ってないけど?」

 「え? 見えないの? ……あれ? 僕にも見えないや」


 ”どうして……あ、そっか。空間って見えるこの空間じゃないんだきっと。だから自分では入れられない”


 「どうやら見えない空間にしまわれるみたい」

 「じゃここには、何も入れられないの?」

 「え? さあ?」


 鞄にしまうという行為を今まで思いつかなかったシャンスは、使えるかどうかわからなかった。

 シャンスは、落ちていた核を拾い鞄に入れてみる。核は、消えることなくぽつんと存在していた。ふたを閉めて再び開け覗くもそのままだ。


 「何してるんだ?」

 「あ、いやぁ。入れて取り出せなくなっても嫌だなぁっと思って」


 シャンスは、核を鞄から取り出した。


 ”うん。大丈夫だ。いちいち面倒だったんだよね”


 スライムアルケミストノートを鞄にしまう。


 「でもいいなぁ。その鞄欲しい」

 「そう言われても、ドロップしたのだし」

 「え!? 普通にそういうのもドロップするのか?」


 ”そういえばこれ、ボスからのドロップだった”


 「自分にあったのがドロップするから……」


 そう言って、シャンスは誤魔化した。確かにと二人は頷く。


 ”僕がすでに50レベル以上のボスを倒した事があるのは言いづらいよなぁ。でも手に入らなかったら持っているのあげよう。僕は作ればいいんだし。50レベルのスライムがいますように!”


 三人は、期待を胸に進み始めた。

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