第13話 ご提案
”おなかすいた”
そう思い目を覚ましたシャンスは、目の前に見える草木に驚く。
「あ!」
ガバッと体を起こしたかと思うと、周りを見渡した。
「寝ちゃったの僕。あ~足が痛い」
昨日、張り切りすぎたと、両方ふくらはぎをさするシャンス。
ふとカードを手に取り見てみると、スライム錬金と転写が増えていた。
”転写だけじゃなく、スライム錬金も書いてある。スキルとして取得しているのか”
シャンスは、立ち上がり森の中を歩き出す。
「そういえば、スライムだけ狩ってもだめだよな。モンスターを倒してギルドに戦利品を持っていかないと。その前に食べ物を補給するのに街に戻ろう」
まだ疲れが取れないが、まずは食べる事にしたシャンスは、街へ戻り遅い朝食を食べた。それから防具やへと向かう。
”素早さが上がる何かないかな?”
スライムダンジョンをできるだけ奥の階へ行きたいと思ったが、スライムとて攻撃を受ければダメージはある。でききればかわしたい。レベルが上がらないのだから装備で上げるしかなく、値段を見に来たのだ。
”あった”
『疾走の服上下セット 10万G』
「10万……しかも半額でか」
「お客様。こちらお買い得ですよ。相手のバックアタックに対応する魔法もかかっているんです」
シャンスは、突然店員から声を掛けられビクッと体を震わす。
「素早さは、20も上がるんです。これとセットになる靴もあるんですよ。これは足を保護する魔法をかけられているので、高いところからジャンプして着地しても大丈夫なんです!」
「はぁ……」
「この3セットを装備するとバラバラだと20と10で30上がるところ、素早さがなんと、40も上がるんです! 絶対に絶対に3セットで買った方がお得です! お値段もバラバラなら10万と15万で25万ですが、20万でよろしいです。いかがですか?」
”欲しい欲しいけど、お金がない”
売る気満々の店員に丸め込まれたシャンスは欲しくなったが、先立つものがなかった。
「欲しいけど……お金が……」
「アイテム交換でもOKです。これが価格表です」
「え!?」
そう言われた価格表のボードには、防具から消耗品まで値段が書かれていた。その中に自分で作れそうなものを発見する。
「あのこれって、MP回復薬なら何でもいいんですか?」
「お持ちなんですか?」
「え? あ、ここにはないけど……」
「なんと! ぜひ交換させてください。これは最低料金なので、詳しいのはこちらになります」
今度は用紙を渡された。
『MP回復が4未満 1,000G
MP回復が5以上9未満 一つ増えるごとに+500G
MP回復が10 5,000G
MP回復が11以上 要相談
ただし、副作用がある場合は、買い取れない場合がございます。』
”一気に回復する方が値段がいいのか。大量に作って売ればなんとかなる?”
MPは、スキル魔法ともに一回1MP消費する。転写も鑑定も攻撃魔法もだ。また自然回復もする。これは、個人差で回復力が違う。主にMPを回復する場面は、戦闘でMPが足りなくなった時だ。しかしMP回復薬は副作用があり、熟練の錬金術師にならないと買い取ってもらえない時もある。
「あの~、取りに行ってくるので、とっておいてもらっても」
「はい。もちろんでございます。ただしセールは今日までですので、今日中にお願いします」
「わかりました!」
「では、カードを見せていただいても宜しいですか?」
「はい。えーと」
カードを渡すと、店員は驚いてシャンスを見た。
「錬金術師だったんですか?」
「え? あ……」
”そうだった。スライム錬金て書いてあるんだった”
「そうですけど。内緒でお願いします」
「わかりました。あ、ですが、一度一個お持ちになって頂いて副作用を確認させていただいて宜しいですか?」
一般的には、副作用があるMP回復薬は出回らないので、買ったモノを買い取るならいいが、自身で作ったものならそれも確認しなくてはいけないからだ。
「あ、はい……」
”副作用か。自分がMP回復薬を使うなんてまだまだ後だと思っていたからMP回復薬の事は何も知らないんだよなぁ”
宿を取りベッドで横になりたちところだが、ベッドの上で作業する事にした。椅子がないので、ベッドの上でという事だが。
”確か、レベル1の核を増やせば回復量も上がるんだったよな”
「回復薬微小一つとスライムの核レベル1が二つ」
鞄から取り出し、回復薬にスライムの核を二つ入れた。
シュワーっと泡を立てながら沈み、液体が黒く色づく。
”どれどれ”
<――MP回復薬+1(スライム液)
『解説:スライム錬金で作ったMP回復薬。MP15回復する』
「え!? 一気に15になるの?」
てっきり10回復になると思っていたシャンスは驚いた。
”これっていくらになるんだろう? 副作用はないよね? 僕が鑑定できてないってだけかもしれないからなぁ”
と思いつつもこれを持って防具屋に向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます