第11話 転写取得

 シュ。


 「よっと」


 スライムを避け、一撃を食らわす。スライムはあっけなく消えていった。

 シャンスは、確実に動きがよくなって、スライムの攻撃をほぼかわしている。素早さはシャンスの方が上の様だ。

 少しずつ強くなるスライムは、いい戦闘練習になった。レベルが上がらないので、いづれ攻撃をかわせなくなるだろうが、それでもデスソードで切りつければ倒せるのだから、かわせないのならソードを盾にして受け止めるのも一つの戦い方だ。


 「なんかレベル上がってないのに、強くなった気分。さあ次で30階だ」


 見違えるようになったシャンスは、意気揚々と30階へ続く階段を下りた。

 この階段から奥へは行く気はない。スライムを倒しスライムの核を手に入れるだけだからだ。


 レベル30のスライムを10体倒したが、10体とも一撃だった。


 「たぶんデスソードの効果じゃなく倒してるよね? まあいいや。どれどれ」


 鞄の中を確認するとスライムの核レベル30が10個ちゃんとあり、シャンスはにんまりする。


 ”転写魔法もゲットできちゃうなんて!”


 魔法やスキルは、スクロールで取得する事は可能だが、ボスからのドロップでドロップ率は低い。普通は、錬金で作った魔法が扱えるようになるアイテムを装備して補う。


 「まずは、回復薬とスライムの核レベル1を一つずつ」


 鞄から回復薬とスライムの核レベル1を取り出した。核を回復薬の中に入れ、MP回復薬を作る。


 「よし次は、スライムの核レベル2から30を2つずつ」


 手には60個の核が現れた。


 「おっとっと。核ってレベルによって大きさが違うんだ」


 1レベル差ではわからないかもしれないが、2レベルと30レベルの核では見ただけで大きさが違うのがわかる。


 ”零さないように入れないと”


 ザーッと入れるのも難しく、摘まんではぽつんぽつんと入れていく。入れた核は、泡を発しながら沈む。入れ終わった頃には、灰色と黒のマーブル状になっていた。


 「何か不思議。かけると文字が浮かび上がるって書いてあるけど、それも不思議だよなぁ」


 <――スライムインク<転写>

 『解説:スライムで作ったインク。これを専用の紙にかけると、転写スクロールになる。そのスクロールは、作った者にしか使用できない。

  呪縛:髪がまだらに変色する。死ぬまで直らない』


 「これってインクなの!? というか何この呪い。髪がまだらって……え? まだら? 髪色が変わるって事?」


 シャンスにとっては、ラッキーな呪縛だった。


 「では遠慮なく。どばぁ」


 開いた1ページに躊躇なく、スライムインクをかける。一瞬真っ黒になるも、スーッと文字以外の場所は黒い色は引いていく。


 「凄い文字になった。読めない文字だけど」


 シャンスは、文字の上に手を乗せる。


 ”たしか、スクロールで覚えるのは確かこうやると聞いた”


 「我に力を」


 驚く事に文字がシュッと手の下に集まった。ビクッと体を振るわすシャンスだが、一瞬光って消えそっと手を離せば、ノートには文字はない。自分の手の平を見ても文字は移ってはいない。


 「成功なんだよね? まさか文字が動くとは、びっくりした」


 誰でも憧れる複数の魔法やスキル。今回も戦闘に関するものではないので、強くならないが嬉しさでいっぱいのシャンス。


 「さて次は、魔法陣だ。そうだ。対魔法陣でここに一つ描こう」


 そうすれば、ここまで一気にワープできる。それに気が付いたのだ。


 「スライムの核レベル11を6個」


 同じ大きさの核が6個手の上に現れた。

 ノートの見開きに塗る事にしたシャンスは、まず右のページに核を三つ塗りつぶす。思ったより柔らかい核は、粉の様になりスーッと伸びるように塗らさった。左のページにも同じように塗ると、さっきの文字の様に核が動き魔法陣があっという間に出来上がる。


 「凄すぎる。錬金術って結構大変だって聞いたけど、このスライム錬金は簡単だ。ちょっと不気味だけど」


 一呼吸置くと左手を右のページに置き、地面に右手をつける。


 「転写!」


 左手を置いたノートの魔法陣が光ると消え、右手の下に魔法陣が浮かび上がる。


 「これって……」


 魔法陣は、ノートに書かさっていた大きさと同じだった。乗るというよりは、踏む感じでワープするのかもしれない。


 「さあ、核を集めつつ1階に戻りますか」


 体が疲れている割に元気だった。

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