第10話 なぞるだけ

 シャンスは、わくわくして人差し指でノートをなぞった。その瞳は、先ほどと違い生き生きとしている。


 ”MP回復薬”


 書いてある通り、まずはMP回復薬を作る事にした。何せ失敗しないのだから。

 わくわくして見ているも何も文字が浮かんでこない。そこで、一枚ぺらっとめくった。

 そこにMP回復薬の作り方が書いてある。


 「やったぁ。何々」


 〇『MP回復薬』の作り方

  回復薬にスライムの核を混ぜるだけ。

  ●回復薬(微小)―>スライムの核レベル1:1個―>MP回復薬

   回復効果は、スライムの核の量で決まります。ただしレベル1のスライムの核でしかMP回復薬になりません。また、回復薬(小)以上を使ったとしても効果は一緒です。


 ”結構ざっくりしてるけど、入れるだけなの?”


 両方ともあるので、一回作ってみる事にする。


 「回復薬微小とスライムの核レベル1」


 それぞれ一つずつ鞄から出し、ビンの蓋を開けてスライムの核をポンと入れた。スライムの核は、直径一ミリ程で小さくドロップしても気づかないかもしれない。

 そのスライムの核を入れると、沈みながら泡を発生させていた。そして、透明だった回復薬がなぜか黒くなる。


 「み、見た目が凄い。これ本当に回復薬?」


 <――MP回復薬(スライム液)

 『解説:スライム錬金で作ったMP回復薬。MP5回復する』


 ”本当にMP回復薬になっている! そうだ、アイテム種類一個になってるかな?”


 〇作ったアイテムの種類―1


 *ノートの使い方。

  作りたいものを思い浮かべ、ノートをなぞるだけ。

  集める材料は、ほぼスライムの核だけ。

  魔力を使い、指示通り作るだけ。

  次は、このノートをランクアップさせましょう。作ったMP回復薬をこのノートにかけて下さい。


 見てみると、種類はちゃんと1に増えていた。


 ”うん? ノートにMP回復薬をかけろ?”


 シャンスは、何も考えず指示通りMP回復薬をノートにかけた。白かった表紙が少し黒っぽくなる。

 そして、シャンスのMPが記載されていた。


 〇作ったアイテムの種類―1

 ○シャンスのMP 633/840


 ”僕のMP? ってめちゃ減ってるなんで? あ、シールド回復か。このノートもMP吸い取るみたいだけど、量が書いてないんだよね……。でも便利だ、このノート。そうだここから出る方法は、えーと。魔法陣?”


 ノートをなぞった。


 〇『一つ上へ移動する魔法陣』の作り方

  このノートにスライムの核を塗るだけ。

  ●スライムの核レベル10:3個―>ノートの紙に塗る―>転写

   スライムの核レベル10以外ではできません。3個以上使っても効果は一緒、少ないと魔法陣はできません。また転写魔法必須です。片手をノートの魔法陣に置き、もう片方を転写したい場所に置き転写するだけ。


 〇『つい魔法陣』の作り方

  このノート2ページにそれぞれ、スライムの核を塗るだけ。

  ●スライムの核レベル11:3個×2―>ノートに塗る―>転写

   スライムの核レベル11以外ではできません。3個以上使っても効果は一緒、少ないと魔法陣はできません。また転写魔法必須です。片手をノートの魔法陣に置き、もう片方を転写したい場所に置き転写するだけ。最初の魔法陣に移動します。安全な場所に設置しましょう。また魔法陣は一度設置すると生きている限り消えません。


 ”作り方は簡単そうだけど、転写魔法なんて持ってない!”


 シャンスは、またノートをなぞった。


 ”転写魔法”


 〇『転写スクロール』の作り方。

  MP回復薬にスライムの核を入れるだけ。

  ●スライムの核レベル2から30×2―>ノートにかける

   スライムの核レベル2から30をそれぞれ2個ずつMP回復薬に入れ、空白ページにそれをかける。文字が浮かび上がったら使用する。(破く必要はない)必ず2個ずつ入れる事。


 「作れるみたいだけど、30階まで行かないとだめなの?」


 スライムのレベルは階と同じようなので、核を手に入れる為に30階まで行かなくてはならい。しかも今度は戻る為、1階まで戻らなければならず体力的に大変だった。


 ”でもやるしかない!”


 ノートをリュックにしまうと、デスソードを手に階段を探し下の階へ降りる。今何階かはスライムの核を見ればわかるので便利だ。


 「とりあえず、階段の壁に数字書いておくかな」


 迷子になった教訓をもとに印を付ける事にした。


 「よし!」


 12と書かれた壁を離れ、13階へと降りる階段を探しながらスライムを倒していく。今のところ一撃だ。

 ノートを手に入れる前までは嫌々だったが、今は楽しそうにスライムを狩るのだった。

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