第9話 スライムアルケミスト
シャンスは、結局もう一階だけ下の階へと降りてみた。
もう何階か、などどうでもよく、とりあえず扉を発見したかったのだ。
一つ下の階は、さっきまでとは違い区切れていた。
”上より狭いけど、向こう側に広い場所があるみたいだ。でもこれでここら辺のを片付ければ襲ってこないだろう”
階段付近のスライムを倒しひと段落つくと、壁に寄りかかりズルズルとシャンスは座り込んだ。
肉体的にもそうだが、精神的に疲れ切っていた。
”何か、役に立つアイテムないかな?”
ドロップアイテムを見た。
「何これ……」
見事にずらりと並ぶ、スライムの核。しかもレベル1から11まであった。
「スライムって何の役にも立たないんだけど!」
叫んでも仕方がないが、叫ばずにいられない。
錬金術に使えるアイテムだが、今使えなければ意味がなかった。
この階にも扉がなければさずがに1階へ戻る気だったのだが、蔦を登れる自信がない。握力がそんなになく、攻撃を受けながら登らなくてはいけないからだ。
”レベル1から11か。スライムのレベルなのかな? だったらここは11階なのか?”
階と同じレベルだとすればそうなるだろう。しかし、それがわかったところで状況は変わらない。
”このままだと僕は、ここで死ぬ……”
水を飲むとシャンスは立ち上がった。
「ここで死ぬわけにはいかない!」
気を取り直し歩き出す。
”どうせならスライムの核をいっぱい集めて売ってお金を稼いでやる!”
そう思わないと、前へ進めなかった。スライムしか存在しないかもしれないダンジョン。手に入るのもスライムの核しか手にはいらないかもしれないダンジョン。
中級者ダンジョンや上級者ダンジョンの様に入り組んでいれば、行き止まりに宝箱があるかもしれないが、ただ広い空間しかないから宝箱も存在しなそうだった。
下の階に行かなければ、宝箱は手に入らないだろう。だが、スライムとてレベルが上がれば強い。集団で攻撃されれば危ういのだ。
「ないかな……うん?」
この階はどうやら『田』の中心がスポッとない作りになっているようで、角に道があると見れば、三方に同じような空間が見え、その一つに大きなスライムが居たのだ。
「扉じゃなくて、変なスライムを発見しちゃったよ。でも待てよ。あいつなら違うアイテムをドロップするんじゃないか?」
一人頷くと、大きなスライムに向かって走り出す。それを見たスライムが攻撃してくるが、無視して突進して行く。
「てやぁ!」
先制攻撃を食らわせるも大きなスライムは、倒れなかった。
ここの階がレベル11が平均ならボスなみだとしてもシャンスよりレベルが下だ。デスソードの効果はない。自力で倒すしかないのだ。
「えい! えい!」
たまに邪魔だと襲って来る普通のスライムをデスソードで蹴散らし、大きなスライムからも攻撃を受けながらも何とか倒す事ができた。
「やったぁ!! で、何がドロップした?」
『
”え? ノートだけ? アルケミストって……なんだっけ?”
「スライムアルケミストノート」
スライムを倒し、襲ってこなくなってからシャンスは、鞄から出し確認してみた。
<――スライムアルケミストノート
『解説:スライム関連の錬金術が載ったノート。欲しい物を記入すと材料が自動的に記入される不思議なノートで、自分の魔力を使い記入し他の者には見えない。
呪縛:魔力の契約により使用できるようになる。スライムを使った錬金しか出来なくなる』
”何これ、きっと凄いよね。アルケミストって錬金術の事だったのか。確か錬金術ってスキルのはずだから誰にでもできるわけじゃないから、スキルを手に入れたのと同じ事? スライム限定だけど! これは契約するしかない!”
「やり方わかんないけど、契約します!」
B6サイズ程のノートがパーッと光った。
”契約できたみたい”
ぴらっとめくってみると、何かが書いてあった。
〇死ぬまで魔力を貪ります。
〇使う材料は、(ほぼ)スライムの核のみ
〇作ったアイテムの種類―0
*ノートの使い方。
作りたいものを思い浮かべ、ノートをなぞるだけ。
集める材料は、ほぼスライムの核だけ。
魔力を使い、指示通り作るだけ。
最初に作るアイテムは、MP回復薬がおすすめです。ちなみに成功率100%!
「え~~!! 何これ。MP回復薬って錬金術でしか作れないんじゃないの? ドロップしないはず。それが成功率100%なの? 凄すぎる」
はたして、これで地上に戻れるのかは彼のノートの使い方次第だ。
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