第4話 復讐を胸に

 「うーん? いたぁ!!!」


 ふと目を覚ましたシャンスは、体を動かそうとして激痛に大声を上げた。

 目だけで辺りを見渡し、ボスを倒した事を思い出す。


 ”僕は、生きている!”


 「くっ」


 激痛に顔を歪めながらもドロップアイテムに手を伸ばす。


 ”回復薬が絶対にあるばずだ!”


 シャンスは、自分のスキルが『ドロップ確定』だと聞いた時に、ドロップアイテムの事も聞かされていた。

 ドロップするアイテムは、とどめを刺した者に権利があり放棄すれば他の者でも手にする事が可能で、ドロップするのは権利ある者が欲しいと願うモノの中からドロップする事が多い。

 ただし、弱いモンスターからレアの装備が欲しいと願ったところでドロップせず、レベルが低い者には回復薬が多くドロップする傾向がある。必要だからだ。


 デスソードがドロップしたのは、マルムザが倒したからだった。そして、鑑定などのスキルを持ち合わせていない彼は、それを放棄した。だからこそ、シャンスがデスソードを手に入れる事が出来たのだ。


 壁際だったのが幸いし、倒れたモンスターの距離とは近い。這うようにして少し近づき、激痛の中やっとビンを手にした。


 <――回復薬(大)

 『解説:ほとんどの怪我を修復し、最大HPの80%回復する』


 ”やっぱりあった!”


 右手でビンを掴むとサーチされ、望んでいた回復薬だった。シャンスは、それを一気に飲み干す。


 「は、ははは……これで生きて帰れる!」


 上向きになり両手を上げて、その手につけているサーチグローブを見つめる。


 「これと……あのソードさえあれば」


 顔を横に向けデスソードを見ると、手を伸ばしそれを掴んだ。そして上半身を起こす。


 「絶対に許さない!」


 ぎゅっとデスソードを強く握った。

 シャンスは、心に決めたのだ。あの二人に復讐すると。


 「ふう。とりあえず強くならないと……」


 シャンスは一呼吸置くと、ドロップアイテムに近づき何がドロップしたか確認を始める。

 まずは、黒い肩掛け鞄を手に取った。大きさは横幅15センチ程とそこまで大きくない。


 <――ドロップ回収バック

 『解説:ドロップアイテムを自動的にバックの空間に回収する。ドロップしたアイテムは、大きさ重さなど関係なく無限に回収する事ができ、好きな時に取り出す事が可能。ただし、任意にアイテムを空間にしまう事は出来ない。

  取り出し方法:願えば手に出現させる事が可能。出した物は空間にしまう事ができないので注意する事。

  中身の確認方法:バックに触れれば頭の中で確認が可能』


 「何この鞄。凄い」


 必ずアイテムがドロップするシャンスにはぴったりの鞄だ。

 アイテムがドロップするのは羨ましいと言われたが、毎回だと持ちきれないからと敬遠された。モンスターを倒した証として、爪や尻尾、耳など、小さな部分を持ち帰る決まりになっていた。そうしないと、お金がもらえないのだ。


 ”これならドロップアイテムの問題解決だ”


 ただし、シャンスが倒したモンスターだけになるので、結局はパーティーを組んでもらいえないだろう。


 シャンスは、早速ドロップ回収バックを肩に掛けた。そうすると目の前にあったアイテムが消える。


 「あ……消えた」


 『シールドリング<溜>:1

  回復薬(大):1

  呪いのスクロール:1  』


 バックに触れると不思議な事に、本当に頭の中に文字が浮かび上がった。


 ”呪いのスクロール? シールドリングって何だろう? 鞄にしまわれて鑑定できないのが欠点だな”


 「シールドリングを」


 そう言うと、右手にシールドリングが現れた。


 「本当に出せた」


 <――シールドリング<溜>

 『解説:装備すると、自身の最大HPの十倍のダメージを中和するシールドを自身の周りに展開する。そして、ダメージによって減った分を一分に1MP消費して、1%自動修復する。

  呪縛:装備するとレベルアップできなくなる。ただし経験値は蓄積され、この装備を外した時に自動的にレベルアップする。そしてこのシールドリングは、消滅する』


「え? 呪縛って呪いって事? うーん。シールドは魅力的なんだけど、呪いだとしたら外せなくなるんじゃなかったっけ?」


 代償が大きいと言われる呪縛の装備だが、それを欲する人もいるという。


 ”もう鞄に戻せないしな。えっとここに、あった”


 シャンスは、ズボンのポケットからサーチャーカードを取り出した。これには、名前とレベル、手にしているスキルや魔法が記入されている。


 『ネーム:シャンス〔良〕

  レベル:28

  スキル:ドロップ確定

  まほう:―      』


 「凄い! 2回しか倒してないのに28レベルって……」


 ”これなら一人で初級者ダンジョンに行けるよね? 戦闘の練習はしておいたほうがいいし。よし”


 シャンスは、左腕にシールドリングを付けた。

 外せなくなるのはわかっているが、シャンスにとってメリットの方が大きい。レベルが上がらなければ、デスソードでモンスターを一撃で倒せる確率が上がるからだ。20レベル差があれば、確実にとどめを刺せる。

 それに、モンスターから得た経験値は蓄積され、シールドリングを外した時にレベルアップ可能だ。もしかしたら一気にツインレッドの二人と同じぐらいのレベルまで上げられるかもしれない。

 戦い方を身に着け、二人に復讐する機会を待つ事にしたのだ。


 「もう一つストールを持っていた。きっと同じ事をして手に入れたに違いない」


 それも復讐を決めた理由の一つだった。

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