第5話 魔法陣でワープして
「そういえば武器はあるけど、ちゃんとした防具はないから持って帰るかな」
ぼぞっと呟き、横たわるボスの死体をシャンスは見下ろした。
爪を剥いで持っていけばお金になると、デスソードを見るもナイフを手にする。
”デスソードをこういう事には使いたくない”
恐々とボスの手の先に両手を伸ばす。モンスターの死体に触りたくないという思いがあった。これにもなれないといけないと、勇気を振り絞りナイフで爪を剥いだ。
「ううう……気持ち悪い」
精神的に疲れたシャンスは、リュックに爪をしまった後、少し放心していた。
「はぁ……僕にはもしかして、合わない職業かも」
”でも……目的を果たすまでは”
シャンスは立ち上がり、あるはずの出口を探す。そして、壁の一角に空洞を見つけた。
床と面した場所に穴があり、それを覗き込む。狭い空間に、開けられた宝箱、光る床が見えた。
”宝箱が開けられている!?”
シャンスは、四つん這いになり潜り抜けると、宝箱に駆け寄った。
小さな宝箱の中は、当然空だ。
”もしかして二人が持って行った?”
他の人という可能性もあるが、ボスは倒されていなかったのだ。
見つかる前に、穴をくぐってここにきてしまえば、ボスに攻撃される事もない。だがそんな事ができる者など早々いないと思われる。
シャンスは次に、光る床の前まで行った。
「これが噂の魔法陣。きれい……」
丸の中に描かれた模様が七色に光っている。
魔法陣は、ワープするのに使われると聞いていたので、シャンスは躊躇なく足を踏み入れた。
ふわっとした浮遊感の次に、七色の光が体を包む。気が付けば、ダンジョンの入り口の前に居た。
「凄い。外だ。……やったぁ!!」
デスソードを持ったまま、シャンスは喜びのあまり両手を上げた。
「うーん。これをしまう物がほしいかな」
デスソードを見上げ呟く。
鞘だけ売っているかわからないが、なければ鞘ごと剣を買うしかない。
森の中を歩き始めたシャンスは、目印を探す。マルムザが印を付けていたのを覚えていた。
”僕も次からは、こうやって目印を付ける事にしよう”
印を目印に歩き一時間ぐらいで森から出て、安堵する。
”さて、どっちにけばいいんだろう?”
来る時は、マルムザ達は馬を借りていた。ここまでそれに乗ってきたのだ。
”そういえば、あれってなんだろう?”
遠くに見える小さな建物。来た時も気になっていた。まずはそっちに行ってみる事にする。
近づくにつれ、数人の人が見えてきた。
「人だ!」
シャンスは、泣きそうになる。これで街まで戻れるからだ。
「あの、すみません。街までどうやって行けばいいですか?」
声を掛けると、驚いてシャンスを見ている。
「君、どこから来たの? 一応サーチャーみたいだけど。もしかして、新しく見つかったダンジョンを攻略しに来たのかい?」
”もしかしてあのダンジョンって、見つかって間もないの?”
「街へ帰るのかい? だったらカードを見せてくれれば。ワープ使うかい?」
「はい!」
もう一人の男の言葉に、頷く。
”これが噂の護りの塔だったんだ”
ダンジョンの近くに建てられる塔で、ダンジョンからモンスターが出てきたら察知する魔法を展開し、近くの街までのワープもある。もちろん、逆も可能で街から塔までワープでき、サーチャーカードを見せれば無料で行き来できる。
ダンジョンの発見は、地上にモンスターが出て来る事により気づく事が多く、地上に出てきたモンスターでダンジョンのクラスが判断されていた。
「へえ。見た目なり立てかと思ったけど、中級クラスか」
お兄さんにカードを見せるとそう言われ、えへへと笑って誤魔化す。
今日、初挑戦でしたと言ったところで、信じてもらえないだろう。ワープ先の街には必ず、サーチャーギルドがあり装備などの施設も整っている。
マルムザが馬に乗って来たのは、来たのを悟られないようにする為で、まだ発見されて間もないダンジョンならお宝も取り放題だと思った。
それに塔が完成されないと、サーチャーは本来通してくれないのだ。
魔法陣は、作業する人たちが行き来する為に一番最初に設置はしているだけで、シャンスは今回戻るだけなので、特別に通してくれたのだった。
「ありがとうございます」
シャンスは、お礼を言って魔法陣の上に乗りワープして街へと向かう。
「え? ここってどこ? 僕が知っている街じゃない」
どうやらシャンスがいた街とは違う街へワープしたようだ。
”でもちょうどいいや。僕の事を知る人がいなければ、僕は死んだと思われる。二人を油断させられるはず”
まずは換金だと、目の前のギルドへとシャンスは向かった。
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