やる気はある、と思う

昨日、一番の難関(と思う)句読点の付け方を徹夜してやっと身に付けた友人はその反動からか朝からぐだぐだしていて、仕方なく私が朝ご飯を作って食べさせた。しかしまだぐだぐだしていて、今日はもう教えられそうにない、教えても頭に入らない、そう考えた私は急に入った明日の早朝、というか最早深夜と呼べる時間からの仕事にそなえてもう帰ろうと玄関に行こうとした。すると友人がいつの間にかすぐ後ろにいて、

「やだやだ教えてよう頼むよォまだ帰んないでよぅ ね、ね、いいでしょ?ねーもうホントにさぁもう」

と、子供みたいなことを言ってきた。そこまで泣きつかれると、なんか罪悪感みたいなものが芽生えてくる(けど私は悪くないと思う。というか思いたい)。仕方なく私が折れると、友人は

「うぇーいやった〜ばんざーいばんざーい」

と、これまた子供みたいな喜び方をした。諦めた私は夕方になったら帰ると言っておき、また昨日のように指導を始めた。

「今日はまずここ、情景だな。原稿にはいきなりドカーンやら火属性魔法やら言ってるが、これではどこで誰が何をしているのかが分からない」

「俺は分かるよ」

「お前しか分からない。中学かなんかで英語の6W1Hとかいうのやっただろ。whereとかwhen、whoとかあっただろ。それを意識して書いてみろ」

「はーい」

と言うが早いか、今まで見た事の無い速さで書き出した。さっきの全くやる気を感じられない「はーい」からなぜこんなやる気しかない行動に変わったのか心底驚きつつも、そのやる気に感心した。しかし、そのやる気は30秒も持たなかった。抜け殻のような顔をして机に伏しながらさっきの10分の1もない遅さで筆を亀の歩みの如く進める。そしてそれをただ見守る私に原稿を渡すと、なんとぐっすり眠ってしまった。少し酷ではあるが、叩き起こすと友人は3秒足らずで寝てしまった。朝は10時くらいまで寝ていて、今は夕方4時である。たった6時間起きていただけで寝てしまうほど追い込んでいたことを寝ている友人に謝りタオルケットをかけると、私はすぐにお暇した。多分このボロアパートに盗みに入る輩はいないだろうから、起こさなくてもいいだろう。


続く

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