第23話 ショッピングモールへ行く
土曜日、仁は耕陽と紫龍とショッピングモールで服を見るために会う約束をしていた。
ルーシーからはいつ戻るのかを尋ねられ「夕食までには」とだけ伝え家を出ようとするとルーシーは「エミリーと侑と食事行くから私も夕食前までには戻るわ」と伝え、手を振ってくれた。
その表情はお見合いの時と同じように表情は曇っていたが、その時と比較するならば瞳に輝きが見えていた。
ショッピングモール前に到着し、仁は人目につきやすい場所で紫龍と耕陽が来るのを待っていた。
仁はその間にイヤホンを挿し、スマホを開いて音楽を聴いていた。
スマホの中にはHR/HMを中心に入れており、日本の音楽はアニソンが殆どを埋め尽くしていた。
HR/HMの中でも好きなのはレッドツェッペリンやディープパープルといった70年代のバンドサウンドを作り上げた偉大なグループで、時代の流れからなのかそれらを聴いている若者自体が少ない。
ビートルズの名前さえ知らないバンド好きも多いため、仁は基本的に軽音楽部に入部した当初からかなり浮いた存在になっており、紫龍や悠野は理解を示してくれたことで安堵している部分もあった。
「……れてないよね?」
イヤホンを耳に入れて音楽を聴いていたからなのか途中からしか聴き取れなかった仁はイヤホンを外し顔を上げてみるとそこには紫龍の姿があり、紫龍の後ろから耕陽が慌てた様子で駆けつけていた。
「相変わらずファッション雑誌を読み込んでる感じやね」
仁は紫龍の服装を見て感想を述べる。
紫龍の服装はワイシャツにぴったりとした黒いジーンズにスニーカーとファッションのお手本的なもので、耕陽はラノベ主人公によくありそうな黒コーデだった。
仁に関してはベルボトムにブーツ、女性もののブラウスを着たり、レイバンのサングラスとまさに70年代のハードロックミュージシャンオーラを漂わせていた。
「相変わらず仁は芸能人オーラ強いよな」
「こういう服装がカッコいいと思って着てるだけだよ」
「なるべく無難な服装にしたつもりだけどどうかな?」
耕陽は自身のなさそうな声で二人に尋ねる。
二人はどう答えればいいのか分からず沈黙とし、耕陽はさらに不安を募らせていた。
「黒コーデか……ラノベ主人公がよく黒コーデでハーレムしちゃっているけどそんな都合よく女の子にモテるなんて三次元じゃぁありえんけんねぇ……」
「服装は悪くないけど色を少しだけ変えればそれなりに見栄えとかも変わると思うぜ」
「本当に!?」
耕陽は勢いよく顔を紫龍に近づける。
「なぁ、俺って必要ないっちゃなかとね?」
「二人より三人の方がいろんな意見得られたりしていいだろ?」
「僕も坂本君の意見とか聞いてみたいなぁ……」
「取り敢えず服探しに行こうばい」
仁達はショッピングモールへと入り、服屋で耕陽に似合う服装を探すことにしたのだ。
ショッピングモールの中には有名なチェーン店が沢山あり、その中でも安価で購入できる大手の服屋があった。
「ここなら学生でも頑張れば買える服あるでしょ」
「俺も結構ファッション雑誌とかで気に入ったのはこうゆうところで探してるよ」
「高校になって初めて来たけどどれを選んだらいいんだろう?」
三人はそれぞれ良さそうな衣服を探しては手に取ってこれはどうかと尋ね、色のコーデなどを考えながら一通り店内を探したのだ。
「耕陽、俺は多分君はワイシャツとか似合うと思うよ?」
「仁、いくら何でもそれは適当すぎないか?」
「学生である以上、基本学校にいる時はブレザーにカッターシャツを着ているわけだからそれに近いものを着ていた方が無難だと思ってね」
仁はそう言いながら耕陽にワイシャツを渡し、試着室へ行って着るように促した。
「なぁ、サイズとかはちゃんと調べて渡したんだろうな?」
「結構疑り深いねぇ、耕陽結構体は細めだからSサイズ辺りを選んだから大丈夫と思うよ」
紫龍は訝し気に仁を見詰め、仁は長い髪を靡かせながらサイズ感と日頃の生活に近いものを選んだと自信満々だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます