第15話 冴えない少年はおしゃれがしたい(その1)
「それにしても仁、こいつもしかして……」
紫龍は仁に視線を向けながら口籠らせる。
「お前の彼女か?」
「何言っとるとね?こいつどう見ても男やんね。それに俺は同性愛者じゃなかばい」
「だってそうじゃなきゃ部室に連れてこないだろ」
仁は紫龍の発言に溜め息を吐く。
「こいつは俺に用があるみたいで音楽室前をうろちょろしてたから俺達の演奏がどんなものかをついでに聴いてもらおうと思っただけたい」
「なんだ、彼女じゃないのかよ……」
少しがっかりした様子で紫龍は軽くチッと舌打ちをする。
「んで、何の用で来たんだっけ?」
すっかり耕陽が何をしているのか忘れているようで、耕陽は咳ばらいをしながら状況を整理し順に説明する。
「実は……僕、気になっている人がいて……それを同じクラスの綾野侑さんに相談していたんだけど侑さんからは『最低限の身だしなみさえよければそれなりにモテる』と言われたんだけどそれだけじゃなんか違う気がしてファッションとかも教えてもらおうとしたら坂本君を紹介されて音楽室前でずっと待っていたんだ……」
それを聞いた紫龍と悠野は「それって完全にストーカーじゃん!」とツッコミを入れる。
「長い、そうゆうのは要点だけ言ってもっと簡潔にまとめやんばい!」
仁は長ったらしく説明をする耕陽に注意を促し、耕陽は俯き仁に弱々しい声で「ごっ、ごめん……」と口籠らせながら謝る。
そのオドオドとした様子を見た仁はそれからダメ出しをする。
「まずさ、侑からは身だしなみが何とかって言われてるからそれなりにしてるっちゃろうけど根本的に君は好きな子がいて付き合いたいとやろ?もう少し心に余裕持ったりトーク力、そしてオーラばしゃんと安定させな難しかばい。それに俺女の子にモテる男じゃなかけん侑が何で俺ば紹介したかは知らんばってんとにかく君はもう少しその自信なさげな顔を何とかしたがよかばい」
「……………………ぐっ」
耕陽は仁の言葉一つ一つが心にぐさりと刺さり、紫龍は仁を止める。
「仁、そんなに言うことはねえだろ?要するにこいつがカッコよくなればいいだけじゃん?学校でおしゃれは無理だが髪型くらいなら何とかなるでしょ?」
「そうだぜ仁、せっかくお前を頼ってるわけだし何とかしたらいいんじゃない?」
「お前ら結構身勝手なこと言いよるばってん誰が好きなのか分からな対処のしようがないでしょ?」
仁は対策を練れない状況でありながら無理難題なことを言う紫龍と悠野に唖然としていた。
「んで、誰が好きとね?別に笑ったりとかせんけんくさ。なぁ紫龍、悠野」
「「ああ、そうだな…………」」
二人の反応は微妙に遅れ、仁は耕陽を問い詰める。
「どうせラノベとかでよくある巨乳生徒会長とかに恋してるとかそんなもんでしょ?」
「仁、この学校の生徒会長は確か男だったと思うよ?」
「
「いやっ、何でそこで英語になるんだよ?」
仁と紫龍は漫才を始め、悠野はそんな二人を見てクスッと笑う。
耕陽は話すタイミングを見計らうことができず唖然としながら佇んでいた。
「実は……一応生徒会の二年の先輩で気になる人がいるんだけど僕の見た目だと不釣り合いな気がしてうまく言えなかったんだ……」
「なぁ悠野、煙草吸うか?」
「何言ってんだよ?音楽室だと煙草の匂いが蔓延して先生にバレるだろ?」
仁は耕陽の話を聞いていないようで悠野に煙草を勧めるも音楽室では匂いがバレるのでとあっさり断られた。
「つかお前ら煙草吸うのかよ!」
「これ内緒ね」
「いや……言わないし」
「…………あのっ、話の続き…………」
耕陽は仁に話の続きをしようと声をかけるもすんなりスルーされ、自分の存在が薄いことに絶望したあまり、曇った表情をしながら俯いていた。
「ごめんごめん、二年の先輩に好きな人がいるのは分かった。写真とか持ってないの?」
「……写真なら……」
耕陽はスマホをバッグから取り出し好きな人の写真を仁達に見せる。
「なるほどねぇ、確かに今の君では釣り合わないでしょうねぇ。俺も人のことは言えんばってけどくさ。二次元に走った方が楽になるばい」
「うぅ……やっぱり僕には無理なんだ……」
死刑宣告をされたかのように耕陽は泣き崩れ、仁は「そもそもJapanese girlなんかより二次元の金髪碧眼美少女とかのが断然よかばい。だいたい三次元の女は容姿はよかろうけど下品なの多いし、日本の女は二次元に走ったせいか豚に見えるんだよ。人間の言葉を話してるのか分からないことあるし正直俺は三次元の女に恋するのは辞めた方がいいと思うっちゃけど」と長々しく耕陽に恋愛は辞めとけと諦めさせていた。
「仁、自分がダメだったからってそこまで言うこたぁねえだろ?第一お前日本の女が嫌いだからってブスだのブタだの地上のノミとかお前の言っていることは無茶苦茶すぎる」
紫龍は半分話を盛りながら仁に苦言を呈する。
「いや、ブスと地上のノミは言ってないっちゃけど……確かにそうは思うけどくさ」
「認めるんかい!」
「だって、三次元って二次元みたいに瞳はくりくりしてないし表裏激しいし顔と性格含めてブス多いしでいいとこなしじゃん」
「確かに二次元の美少女は『僕が考えた最強の美少女』てな感じだけど三次元にも良いところはあるだろ?それは…………おっぱい揉んだりセックスできることだ」
紫龍は最後に放送禁止用語を言い放つ。
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