第11話
「それじゃあ、行こうか」
ヒロが出発を促す。
「まずは、退路確保だったな」
「そうだね。これはこの建物内でゾンビに襲われないようにする措置だね。さて、どうしたものか?バリケードとか作る?」
「えっと、要するに、退却中に予想外の方向からゾンビが来なければええんやろ?それやったら、一階の二つの入り口の扉の鍵を一つ閉めて、現状一階、二階にゾンビもしくは人がいないんか確かめたら?」
「それもそうだね。分かったよ。それじゃあまずは、僕とリンさんで、二階の部屋に誰もいないか確かめて、階段で一階に降りる。それで扉を閉めてくるよ。裕斗は階段を見張って誰も上がってこないようにしといてくれ」
「分かった」
「もし、ゾンビがいた場合急いで僕らはこの部屋に戻る。裕斗のほうでゾンビに見つかった場合は速やかに一階にブザーを投げてくれ。そして速やかにこの部屋に入る。後の判断は携帯で連絡を取ろう」
「それも了解だ」
僕はブザーと傘を手に握る。
「それじゃあ、作戦開始」
そう言って、ヒロとリンさんは出ていった。僕も速やかに部室の扉を開けて左にある階段前に陣取った。ちらりと二階の扉を確認していく二人を見る。廊下には両端に部屋があるせいで、日光が入ってこず薄暗い。これほど暗いならおそらく誰もまだ部活になぞ来ていないだろう。
ここは、文化系の部活が入る建物だ。その中で一番早くに電気がつき、一番遅くまで電気がともるのが我々の部室だ。部屋の電気がいつも明るいからブラックだと揶揄され、人気がない。上の代はいないし、新入部員はハナさん一人。
けれど、朝早くまで活動していたおかげで、異変にいち早く気づきつつ、4人の仲間が現在まで無事に生きているともいえる。ありがたいことだと考えた。
そんなことを考えているとコツコツと階段を上がる音が聞こえてくる。僕は傘を開きブザーをいつでもならせるように身構えた。
「裕斗、大丈夫だったよ。どこも鍵が閉まってて誰も来てないみたいだった」
階段を上がってきた二人の無事な姿を見て僕は安心する。
三人でとりあえず建物のひとまずの安全を確認し、部室に戻ることができた。
「安全も確保できた、ロボットと箱を運ぼう」
部屋に入って小脇に折りたたんだビニールシートを抱える、そして自分が入る箱を持ち上げると一階の階段を下る。
箱を置いたところで二人が、ロボットの胴と足のあたりを持って階段を下ってくる。
ロボットを廊下に置くとヒロは素早く電源を入れ、ロボットを立ち上がらせた。そうしてパソコンをカタカタといじる。
「ビニールシートをロボットの手がつかめる位置に持ってくれないか?」
ヒロがパソコンから顔を上げ、指示する。僕は素早くビニールシートを広げて手につかませる位置に持っていく。パソコンの操作に合わせてキュイキュイと音がして手が狭まる。何度、このモーターに泣かされたことか。ものを持つことの難しさを財布への圧迫で伝えてくれたすぐ燃えるこの回路とモータに感謝しないと。ロボットは完全にビニールシートを手に持った。
「よし、準備は大丈夫だね」
そういって、パソコンの画面を見せる。そこには頭部に取り付けられたカメラからの映像が映されている。
「それじゃあ、合図したらリンさんブザーを投げてくれ」
ロボットと一緒に一階の外につながる出口に身をかがめながら移動する。ロボットはさっとブルーシートをカメラが隠れない高さに掲げると歩き出す。その動きに反応したのか、ゾンビのうちの一体がゆっくりとロボットに向かって歩き出す。
「いまだ。ブザーを投げてくれ」
ピーっという甲高い音が響き、ブザーが投げ込まれる。すると、ロボットに向かっていたゾンビの一体はすぐさま方向転換し、ブザーのほうに歩き始めた。
ゾンビによる世界の崩壊が始まったので必死に生きてみる @onepoint
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ゾンビによる世界の崩壊が始まったので必死に生きてみるの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます