第8話

 ホワイトボードには次のように情報がまとめられた。僕は時々聞かれたことに相槌を打っているだけであった。

 

 上記の順に行動が選択される。

 上位の行動時はおそらく下位の行動は起こらない。


 襲撃者モード(走る、攻撃モーションを行う)

 1. 人間が攻撃できる範囲にいる(おそらく、この時仲間を呼ぶ)

 2. 仲間に呼ばれた

 3. 視界に人間を捉えた

 4. ある一定以上音源に近づいた

 5. ある一定以上匂いの源に近づいた


 探索者モード(歩く)

 6. 継続して動く物体を視界にとらえた

 7. 継続音を聞いた

 8. 継続的な匂いを嗅いだ

 9. 瞬間的に動く物体を視界にとらえた

 10. 瞬間的な音を聞いた

 11. 瞬間的な匂いを嗅いだ


「できた」

 ヒロは非常に満足げにつぶやいた。

「現状は良くまとめられたんじゃないかな。視覚に関しては向かいの人たちは見つかっていて、僕らは見つかっていないのを考えると、カーテンで遮れてるかもとしか言えないな。あと、順位に関してだけど推測によるものが多い。特に視覚に関しては調査が不十分だね」


「ハナさんによると、一人誰か入ってきたらしい。でも、今は静かみたいやな、あと、逃げる途中に着替えた服が入った鞄を落としたって」

 なるほど。何らかの手段でトイレに入った彼女を追ってきているのだろうか?そう考えると時間があるのか、ないのか、何とも言えないところだ。


「どうだろう。時間を区切って準備して、助けに向かわないか?」

「ええと思う。準備時間は、そうやな30分だと短いし、1時間でどうやろ」

「そうだね1時間、頑張って準備しよう。それで、まずはゾンビに見つからず移動する方法なんだけどね、いいアイデアを思いついたんだよ。そこにロボットを運ぶ箱があるでしょ。それをかぶって移動したらいいんじゃないかな」


 箱をかぶって移動している自分を想像してすごくいいと思ってしまった。

「ええな、それ。私たちが見つかってないのってカーテンが閉まってて、視界遮ってるのと、部屋が閉じられてて匂いが漏れないのが大きいと思うし、カーテン程度で視界は遮れてるならあと匂いさえ大丈夫なら箱かぶってけば安全やな」


「それで、あとは音、匂いで誘導すれば見つからずに行けるかもしれない。これを軸に計画を立てていいと思う」

 ただ、実行するうえで問題がいろいろありそうだ。


「まずは実行前にゾンビの視覚については調べたい」

「同意見だね。それとあとは退路の確保だ。その途中で問題がある場合はむしろこちらから助けに行かず、ハナさんが走ってここまでくるほうが堅実だと思う」


 確かに、それは一理ある。僕も最初、走ってここまで逃げることができた。そのことを考えると、無駄な小細工を使わず急いでこちらまで走るのも選択肢として考えることができる。


「せやな。道路にいるゾンビたちを、音で誘導してハナさんを探している奴はスマホでアラームでも鳴らしてひきつける。おそらく、音源を攻撃している間はこちらは認識されないはずやから、その間に脱出。第二案としてはいいと思う」


 ただ、やはり見つかる危険性ができるだけ低い方法を取りたい。そうなってくると、視覚の限界を調べたうえで箱に入って移動する案を採用したいところだ。

「視覚についてだが、危険をおかさず調べる方法は、その箱に入ってるロボットに活躍してもらうほかないだろう。彼には平地を歩く能力がある」

 今朝、完成させた木箱を見やる。


「歩く、お盆を持つ、お盆を任意の位置に置く能力しかないんやけどな。しかもまっすぐしか歩けないし。」

リンさんが指おり数えながら言う。

「そんなこと言ったってしょうがないじゃないか。でも今はそれで十分だろう……。はぁ、ゾンビでさえ階段を昇れるっていうのに」

 ヒロがため息をついた。


「次の機会にそんな機能を付けたらいい。今回は、そうだなそこの青いビニールシートでもお盆の代わりに掲げさせて、視覚に関して比較調査したらいい」

 ビニールシートで自分の体を二人の視界から隠して言う。


 次。次の機会というのは果たして訪れるのだろうか。





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