第6話
自分も含めてだが、みんな驚きで言葉が出ないようだ。
「今の行動で、恐ろしいことだけど……」
口火を切ったのはヒロである。
「ゾンビには遠隔で仲間に呼びかける能力がある。少なくとも、10m以上。おそらくもっと長い距離。手段は何かわからないけど」
「見つかったら、終わりってことやな」
実際、その通りだ。自分には彼らを一匹でも始末する力はない。それが仲間を呼ぶというならなおさらである。
つまり……
「ハナさんを助けるには、一匹のゾンビにも見つからずに、講義棟の三階までたどり着く必要がある」
その結論に至ったところで携帯が鳴った。
メッセージがハナさんから届いている。そこにはこう書いてある
「おそらく一人、だんだんとこちらに近づいている気がします。廊下の前をうろうろしているみたいなんですが、その周回の足音がこっちに近づいています。確証はないです。」
「これ、もしかしたら、はよ助けに行かないといけないかも。さっき、遠隔でどう伝達したかわからんって言ったやろ。それがさ、例えば、例えばやで、嗅覚とかだったら」
「それって、つまり一匹がハナさんの匂いにひかれてやってきてるって事かい?」
「そう。ゾンビの映画とかでよくあるやん」
リンさんが焦って言う。
どうだろうか?ハナさんの体を構成する分子が空気中を漂っていて、それがトイレまで続いていたとして、正確にその痕跡を追うことができるだろうか?そういえば、警察の匂い鑑定をする人が、会議室で誰が会議していたか当てたみたいなの聞いたことがある。どうだろう?そんなことが可能なんだろうか?
しかし、彼女が言うとおりとするなら救出に向かわなければならない時間は、無条件で繰り上がる。つまり、近寄ってくるゾンビがトイレの中にハナさんがいると確信するまでに助けに向かう必要があるのである。
「それでな。お願いがあるんやけど」
そこの君らの服投げていい?そういってリンさんが、鼻をつまみながら、部屋の隅に置かれた服をもってきた。確かに、家に帰っていないのでそこに置かれている服は冬場といえども、汗が雑菌で発酵している匂いがする。
そして、バッとヒロに服を投げた。そして、リンさんは半田ごてを温め始めた。
自分の匂いに顔をゆがめながら、ヒロがなにをするのか尋ねると。
「ん? いや、ゾンビが音に反応するかも試さんとと思って」
そう言っている間にリンさんは机の上に部品を並べ終えた。
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