第2話 チーム『龍恋の鐘』

 ガチャリ、と実十みとがドアを開けたら。そこでは桃花ももか雛夏ひなが口喧嘩していた。


「だから何であんたはそうやって人を巻き込むかなー! 私休みたかったはずだよね!? 歴史教師になりたかったはずだよねー!? どうして年齢遡らなきゃいけないかなあー!?」

「しょうがないじゃろー!? この際ちゃんと説明するが! お前を絡めないと歯車が狂うんだよ! じゃからと言って教師役のヒロインとかどこのラノベファンが喜ぶんじゃ! この設定過多の女め!」

「どっちがだよ!? お前なんて最初のノートから一歩たりとも動いてねえじゃねーか!?」

 実十は会話の内容が頭に入るが、さっぱりわからず内容が抜け出る。

「あのお~? お二方、お取込み中……?」

「不本意ながらそうです」

「しょうがないじゃろー! 上手くコントロール出来ないんじゃからー!」

 桃花が雛夏に対して「じゃあコントロール出来ないんなら」と告げ口をする。

「あんたが、コントロール出来るようになるまで付き合ってあげようじゃないの。それまで楽しい楽しいダンジョンクエストはお預け!!」

「そんなー!! お前の止められない時間ループ現象なんて! こっちには関係ないじゃないか!」

「その言葉! そっくりお前に返してやるわ! 何で記憶改変出来ないかなあ~!? 落としどころ決めて時間の先に進むのが神様だろー!」

「だーから出来ないものは出来ないし! 操れないもんは操れないんじゃ!」


 というわけで、わかってることをまとめることにした。


・全ては神様の手の中、つまり雛夏ひなの想いのままに改変可能。

・桃花は混じりっけなしの人間、人間すぎて他の誰よりも上位の視点を持っちゃってる。だから忘れることはあってもだいたい覚えている。

・過去は改変できるが、今まで通りに改変できない状態にも陥っている。これは完成・完結した作品はあとから何を付け足しても変わらないから。

・有償・無償・公募・ネット動画などを問わず、完結したものの時間で世の中は勝手に動く。

・あとには、なにも残さない世界が存在している。

・豊穣実十は何も知らない江ノ島の住人。


 雛夏はまとめたものを桃花に返す。

「これでいいか?」

 桃花は確認するように言う。

「ええ、私は一回刺されただけで死ぬ思いをした。それは変わらない、それだけ。……のはず」

「そうじゃ」

「……、ま。……まあ胸のピクピクのことはいいわよ、で……」

 実十が心配をしてくれる。

「え? 桃花ちゃん病気なの?」

「……、ええ。神経痛? かしら、これは自業自得だから良いの、忘れて」

 実十は心配そうな面持ちで「はぁ……」と見つめる。

「で、百歩ゆずって胸のことは良いけど! 時系列操作できないってどういうこと? じゃあこれは出来る? 吸血鬼大戦の前後、デート戦争の前後、ヤエザキ事変の前後に物語を書き足すことは出来るの?」

「理論的に……いや理論じゃなくても可能だとは思うが。……、少なくともこの世界での西暦は決めとかないとな。でなきゃ時期がバラバラじゃ」

「なるほど時期ね……」

 少し考える桃花だったが……。



「あのお~、そろそろ僕にもわかる話をしません? 例えば東京駅にある『異世界の門』のこととか……」

 雛夏はキョトンとした表情で実十の方を見つめると、「それもそうだな」と場を改める。

「まず、あの門の名前は。第1大型異世界神門『ダンデライオン』じゃ、ダンジョンとしての難易度はB、日本国の自衛隊が遊べる程度の難易度に設定してある」

「ほう、てことは他の人が遊べる程度の難易度もあると……」

「子供用のもあるぞい! と、その前に、……お主ら一人一人と契約を結ばなきゃならん。そこで能力発現じゃ」

「オ! キター!? なんか面白そうな話!?」

「てわけで、この紙にサインして。契約書」

 と、ペンを持ったあと。そこで踏みとどまる実十。

「契約書って、後で取り返しが効かないものの事ですよね?」

 桃花がそここは安心させてくれる。

「大丈夫よ、リスク相応の力は与えてくれるから。もっとも、こいつがラスボスを目指してるって事実は変わらないけど……」

「いや~褒めても何も出ないぞ~☆」

「いや褒めてないし!」

 雛夏に冷静なツッコミを入れる桃花。


 というわけで、話が進まないのでさっさか契約書にサインを済ませた。

「おめでとう、これで君たちは晴れて能力者なのじゃ!」

 すると、ステータス画面にゲーム風のそれっぽいのが出て来た。



 名前:豊穣実十ほうじょうみと

 組織:チーム『龍恋りゅうれんかね

 契約:雛夏ひな

 EE:2200EE

 利子:-30%

 能力:『危機廻避リスクヘッジ

 能力詳細:起こりうる危険を予測し回避できる。


 名前:湘南桃花しょうなんももか

 組織:チーム『龍恋りゅうれんかね

 契約:雛夏ひな

 EE:2000EE

 精霊利子:-30%

 能力:『未来改変フューチャーチェンジ

 能力詳細:《今これから先、起こる未来を自分の手で選択・改変して。現実のものとする。》起こる事象は、ステータス画面に1回100文字以内で書き込むことができ。〈了承〉ボタンを押すと精霊との契約が完了し。未来が改変される。



 色々と突っ込みたい所はあるが、実十はまずチーム名に目が行った。

「あれ? チーム名が『龍恋りゅうれんかね』になってる……」

「場所が江ノ島だしね、ゲン担ぎって意味も込めて。ココと関係のある名前にしたの、異世界ばっかり旅してきたから現実世界の名所の名前を入れたくてね」

「聞いてないんですけど」

「言ってませんでしたし」

 そんなことを話していたら時間が過ぎて行った。


◆~Q&A~◆


 Q2、精霊は複数人と契約は可能なの?

 A2、可能です。ただし精霊にも上限というものがあり、無限に力を貸すことは出来ません。


 Q3、雛夏と桃花ってどれくらい因縁あるんですか?

 A3、ライバル関係とは言わないけれど、雛夏の夢という名の野望に少なくとも約10年くらいは引っ掻き回されてます。どちらかというと、雛夏が問題を起こして桃花が巻き込まれてる感じ。


 Q4、『龍恋りゅうれんかね』って何ですか?

 A4、恋人が多く訪れる江ノ島の名所。「恋人の丘」は「天女と五頭龍」の伝説のデートスポットとしても有名。「南京錠」は固い絆で結ばれたカップルの証。「龍恋の鐘」を2人で鳴らした後 、近くにある金網に「2人の名前を書いた南京錠」 をつけると 永遠の愛が叶うと言われている。らしいです(ウェブ調べ


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