第49話 6-11


「・・・誰にでも、触りたくない・・・」



はぁぁぁぁ・・・・・・・・・まじかぁぁぁぁ・・・・・・ッッ



「え・・・?え?それ、って・・・・・・お付き合い、してくださるとか・・・・・・」



「・・・それは・・・まだ・・・」



「まだ!!!違うとか、やだとか、ほらいつもみたいに、「は?何勘違いしてるの?殴るわよ?

?」とかじゃぁないんですね?!」



「そこまで言ってないでしょ」



「目が言ってるんですぅ!」



とんでもない方向転換に、出張イベント万歳だし、この蓮見さんが吊り橋効果じゃない事を願いながら、俺は飛び起きたい思いを抑えてそれはもう紳士の如く、ゆっくりと起き上がった。



だって・・・嬉しさのあまり飛び起きたらこの野良猫びっくりしてとんでもディスタンスになっちゃいそうだもん。



「ま、あの、待って!」



あ、あぁ・・・、身体の勢いは留められたのに、気持ちの勢いは止められていなかったようで、蓮見さんが両手を突き出して、猫が嫌がるみたいに俺との距離を維持する。



「付き合うとか・・・じゃなくて・・・でも、嫌じゃない、の・・・けど・・・普通の恋愛は・・・無理・・・・・・」



「・・・はい」



それは元からわかっている事で、付き合ったらセックスが込みでついてくるとか、なんなら付き合ってんならシなきゃいけない、断れないとか、それはどんな恋愛関係であろうが、恋愛関係でなかろうが、同意なければすべてがレイプも同然だ。


・・・初体験を男女のカップルに奪われた俺が言うのだから間違いない。



「・・・初体験がレイプで、そのあと荒んだ俺が言っても説得力ないですけど、蓮見さんがシたくないのも、求めてないのも、嫌なのも知ってます。だから、蓮見さんがこうして俺を拒絶してなくて、触れたい、触れてもいいと思ってくれるだけで、なんかもう・・・無理・・・」


「無理なの?」


「ちが!好きすぎて・・・嬉しくて・・・辛い・・・」


「ごめん・・・」


「・・・俺の事、嫌なはずなのに、傍にいさせてくれたじゃないですか。好きなのを知ってて、もしかしたら襲われたりするかもしれないのに・・・」


「・・・・・・あなたは、きっとしないと思ってた・・・」



くそ・・・どんな信頼関係なのそれ・・・今までの俺えらすぎる・・・



「水族館に行った日、ソファーに置いてってくれたでしょ?」



「あぁ・・・もしかしたら捨てられてるかと・・・」



水族館に行った日、俺は蓮見さんの部屋で泣いて、荷物を纏めて部屋を後にした。


別れ話でもないし、始まってもいないし、ただ前日お世話になった時の私物を纏め、ホテルに向かっただけだ。


その時、蓮見さんに内緒で水族館の売店で購入していたプレゼントを、部屋のソファーに置いてきたのだ。


あの頃の蓮見さんは、本当に俺を嫌いで、間違って少しでも触れてしまえば、手近な何かで手を突き刺される勢いだったし、基本俺を見る目はゴミクズ、生ごみ、鼻クソ以下(俺の勝手なイメージ)だった。


見つけた時に、イルカのモチーフなら気に入ってくれるかもしれないと思って、押し付けるように置いてきたプレゼント。



「捨ててない・・・。」


「え、使ってくれてるんですか?」



蓮見さんはコクリと頷いた。








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