第42話 6-4
シャワーを浴びて戻っても蓮見さんは爆睡していた。
酒癖は悪いし、一回寝たら起きないし、めちゃくちゃ買い込んだ食べ物どうすんだよ、俺1人で食べきれる量じゃないし、アイスもスイーツも、蓮見さんチョイスのばっかりなのに。
俺は保留にしていたお好み焼きと、弁当を温めて、2本目のビールに手をつけた。
・・・いや、ていうか・・・好きな人の寝姿をおかずにラブホで1人酒って・・・・・・
・・・・・・結構贅沢じゃね・・・・・・???
虚しいかと思いきや、ある意味ラッキースケベに含まれるんじゃないのか??これって。
ビールを片手に眠っている蓮見さんの横に立って見下ろす。
「・・・・・・いい。めちゃくちゃいい。かわいい・・・」
布団から少し覗く肩とか、ほんのり赤い頬とか小さな唇とか・・・贅沢すぎる酒の肴、夜のオカズ。
・・・何もしないけどね!!
眺めて脳みそに焼き付けて、この姿をアテに飲むくらい許されるだろうよ、きっと。
「・・・ん・・・」
「・・・・・・っておい、寝相わる・・・」
肝心な所は見ないようにしているのに、俺の理性と覚悟を嘲笑うかの如く、試すように寝相の悪い蓮見さんが寝返りを打って『わぁぁ~ぉ』状態。
「もうなんなの、見ないように頑張った俺の苦労って・・・。」
布団もバスタオルも蹴とばして、寝返りを打ったから全部丸見えになった。
それを直してやりながら、湧いてこない俺の欲望。
ほんとマジで枯れたんじゃねぇだろうな・・・え・・・大丈夫か俺・・・
目の前に蓮見さんがいるのに、好きな女がいるのに勃ちさえしないし、ヤリたいとすら思わない。
どうしよう、俺蓮見さんを好きになってから賢者にでもなったんだろうか。
こうして時折寝返っては布団を弾き飛ばして裸体を晒す蓮見さんの面倒を見ながら酒を飲み、AVすら見ずにスポーツチャンネルのサッカーを観たりして時間は過ぎていく。
つまみに食べていたチーズやナッツはなくなり、あとなんかあったかな、と袋をガサガサ漁る音に、珍しく蓮見さんが目を覚ました。
「・・・・・・くつな・・・くん・・・?」
「あ、起きました?途中で起きるの珍しいですね蓮見さん。」
「・・・喉乾いた・・・」
え・・・何これ・・・寝起きでぼんやりとして、初めて見る姿だけど、これってもしかして甘えてんのか・・・?
「覚えてます?蓮見さん風呂で寝ちゃったんですよ?」
「・・・・・・お風呂・・・・・・?」
キャップを外して手渡したペットボトルの水を飲み、記憶を辿って行き着いた数時間前の記憶に、段々と思考が覚醒し始めていった蓮見さんの表情が真っ赤に染まる。
「短時間であれ1本空けたらそりゃあ潰れますよ、自分の酒の弱さ自覚してないんすか??メイク落としとか持ってったら、声かけても返事ないから入らせてもらいましたよ、あ、ほんと、救助に必要なくらいしか見てないですからね、タオルに包んで連れてきただけ。だからほら。」
俺は蓮見さんが起きてから目も合わせず、直視せずペットボトルを手渡して目を背けている。
指指して、『ほら』の理由に気づいた蓮見さんが、聞いたこともない叫びを上げて布団に潜り込んで、ベッドの中心に白くてこんもりとした大福のような小山ができた。
「・・・蓮見さ~ん」
こんもりとした白い大福。
「!!ちょっ!!」
「え、俺大人しくしてたし、布団の上からなら少しだけ、ダメですか・・・?」
俺は、大好きな人を包んだ白い大福を抱きしめた。
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