第40話 6-2
「っちょ!!!何か着てよ!!」
「え~だって、すぐに着ると暑いんですもん、ラブホのっていい生地じゃないし、汗かくじゃないですか。」
コンビニで買った下着にナイトガウンは羽織ったものの、暑くて上半身は脱いだ俺は、腰で脱皮を失敗した生き物のようになっている。
それになんだろう、たまに蓮見さんの家に泊めてもらう時に下は部屋着のズボンを履いていても上裸な時もあるのに、今日はやけに過敏な反応じゃないか。
冷蔵庫から冷えたビールを取り出して、とりあえず1本。
「はぁ~美味い。蓮見さんもシャワー浴びてきたらいいのに。今お湯も溜めてるからゆっくりしてきたらいいですよ。夜は長いんだし。」
「!!何もしないわよ!!」
「・・・・・・????なにも、しない、ですけど・・・・・・どうしたんすか、蓮見さん。」
「・・・・・・・・・お風呂入ってくる。」
乱暴にナイトガウンを手に取り、蓮見さんはバッ!!と立ち上がってバスルームへ。
「・・・おもしれ・・・なんか意識してくれてんのかな。」
何か言いたげに口をワナワナさせて、きゅっと口を結んで、脱衣所に消えた蓮見さん。
俺はコンビニで買ったお好み焼きを温めるべく手に取り、一瞬間考えて、蓮見さんが上がってきてから一緒に食事にしようと、常温の商品が入った袋を漁る。
「あ。」
そこにあったのは、蓮見さんがカゴに入れたメイク落としや化粧水などのケアグッズ。
コンコン。
「蓮見さーん」
脱衣所の扉を数回ノックしても声はない。
「蓮見さぁぁ~~ん?!」
シャワーの水音も聞こえず、返答もない。
・・・ん?
振り返った俺の目に留まったのは、
「え・・・・・・まじ・・・・・・??」
テーブルにあったのは、少し可愛めのお洒落な瓶に入ったスパークリングワインの空き瓶。
「もぉ~~~ッ蓮見さん!開けますよ?!やましい気持ちじゃないですからね!!俺!!」
開け放った扉の向こう、脱衣所に蓮見さんの姿はなく、俺の小さな希望は打ち砕かれた。
ここにいないなら、風呂場で真っ裸じゃねぇかよ・・・勘弁してくれよ・・・
溜息と共に頭を抱える。
自宅で飲んだ時もそうだが、蓮見さんは下戸だ。
ジュースみたいな缶チューハイでも3口くらいで赤くなり、いつもの険しい顔はどこかへ行ってしまい、人の酒を飲みたがるし、クダを巻くし、笑いまくって陽気になって、絡むはくっつくは甘えたがった挙句、突然電源がオフになる。
そしてそれを本人は覚えていない。
ベッドに運んだ翌朝何度か注意したけれど「そんなわけない」と言って聴かないので、そのうち動画でも撮って突き付けてやろうかと思っていた程だ。
男嫌いなら自分でも気を付けてくれよ・・・
でもどうなってるのか確認しないと、湯船で・・・なんて考えただけで恐ろしい。
パトカーも救急車も呼びたくない!!
「蓮見さん!!入りますよ!!」
扉を開けると溢れてきた白い湯気の中に、浴槽に半身浸かり、縁に腕を乗せて顔を付ける蓮見さんの姿があった。
「も~~危ねぇな、蓮見さん、ちょっと、大丈夫ですか?シャレになんないですから起きて下さいよ」
しゃがんで腕を叩き、声を掛けても眠ってしまったら起きないのが蓮見さん。
これが服を着ているならまだマシだが、全裸の蓮見さんを救出するには、触れないわけにいかず、目を背けるにも限界がある。
頭の中ではここからベッドまでの導線の振り返りと、どうやって連れて行くかのシミュレーションが慌ただしく映像として再生される。
しっかりしてんのか抜けてんのか、心配になるし、可愛いし、困るんですけど、俺!
旅先、いや、出張先だけど、こんなラッキースケベ的な任務困るんですけど!!
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