第194話 大統領と車列とTSA(8)
2022年9月16日 現地標準時
午後2時30分
アメリカ合衆国 カリフォルニア州
ロングビーチハイウェイ
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ババババとブラックホークが機体下に広がる高速道路の真上で滞空する。
その様子をテロリスト、あるいは生き残り、応戦するSPと警察官の目を惹き付けることとなった。
「ブラックホークだと…」
テロリストのリーダー的な存在はそう言った。彼は元米軍兵士でとある事情でアメリカ政府とアメリカという国家自体に嫌気が差し、この作戦に積極的に参加した。
その心にはアメリカ国民と国土を守るという元兵士としての意向や忠義は既に完全になく、今はただ危険なテロリストとして存在した。
彼は自分が考える作戦にはこんなのなかったはずだと考えた。
SPの武器兵器は兵士時代の伝手で全て把握した。更にはこちらへとやって来るであろうロサンゼルス市警の予想勢力とそれを撃退できるであろう銃、爆弾、弾薬、そして優秀な人員も用意した。
だが彼は察した。この場を任せてくれた真のリーダーには悪いが、あれは軍用ヘリコプターであり、そこからラペリング降下で下へと降り立つ兵士は正しく洗練された部隊だった。あれと相手すればこちらが負ける。その前に撤退しなければ…
彼は急いで大統領の息の根を完全に止めることを決意し、大統領がいるであろうビースト目掛けてC4爆弾が入った最後のバッグをそこに投げた。
既にこのバッグを三回、ビーストに直撃させている。そしておそらくビーストの耐爆性能を考えるに、これで大統領は完全に爆殺を…
「ッッ!」
だが彼は最後の最後でしくじった。
爆弾バッグを投げようとしたその右肩は銃弾で撃ち抜かれていた。
そのせいでコントロールを失い、爆弾はあらぬ方向に投げられ、そして
ドガァァァンン!!!!
爆炎を起こした。彼はそのまま右膝をついた。彼の周りのテロリストはすぐにそれに気づき、彼を助けようと近づく。
またM2重機関銃でそれまで弾薬をばら撒いていたテロリストはすぐにヘリコプターを落とそうとその矛先をヘリコプターに向けた……まではよかった。
次の瞬間、そのテロリストの体は間違いなく蜂の巣へと変わったのだ。そしてM2重機関銃を撃つ暇もなく、バタリとピックアップトラックの荷台から落ちる。
ブラックホークのGAU-19は彼の体を一瞬にして、蜂の巣にした。
「なっ…」
他のテロリストは突然の出来事の多さに戸惑い、すぐさまするべき行動ができなかった。
GAU-19はその間に上から見下ろす形で銃撃していたテロリストに向かって、風が木々を薙ぎ倒すように次々と銃弾をばら撒いていく。
「がっ!」
「げっ!」
「ぐは!」
次々と死んでいくテロリスト、容赦のない銃撃、そして地上に降り立った特殊部隊は混乱に乗じ、次々テロリストを倒していく。
彼らは逃げるしかなかった。すぐさま乗ってきた車へと向かおうとしていた。
一瞬にして、戦場の優位性は変わった。それをトーマス フォードはただ見ることしかできなかった。
ただ、彼は自身の願いが無事に届いたことに強く感謝した。
「エレナ…助かった…」
彼は感謝した。
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