第184話 世界を変える者達(2)
とあるFBI捜査官の視点
ジム コールソンは時間を改め、サミュエル ニクソンことテキサス州会議事堂前銃乱射事件の犯人に尋問をかけることにした。
ニクソンは現在、顔を伏せていて表情を隠しているように見えた。
私が留置所内に入ると、ニクソンはゆっくりと顔を上げ、目だけで私の様子を見たようだった。
「……あんたまた来たのか」
「今日こそ話してもらおう、君と例の組織の関係性について」
「FBIは馬鹿じゃない、そうだろ?」
ニクソンは珍しく自らこちら側に踏み込み、話しかけてきた。彼の心境に何か変化があったのかもしれない。
「…君がそうしてだんまりを決め込んでいるのも今のうちだと思え。いずれ君はどう足掻こうが法のもとに裁かれる」
「ニューメキシコには死刑制度がない。あるなら無期懲役だけと言ったところか?」
「……」
こいつはどうやら変に頭が回るようだとコールソンはそう考えた。ニューメキシコ州には死刑制度がないことを知っている。
そうなれば死刑制度が存在するテキサス州からここに来た理由も納得がいく。どうやら楽観的に動いているわけではない。やはり何か後ろに強大な目的と組織がある。
その点を踏まえ、多少こいつは頭がキレる。だが本質までは隠せない。昨日からもそうだったが、こいつの本質は饒舌だ。もし本当に自分が犯した罪を話したくない、触れられたくないのであれば完全黙秘をするべきだ。
だがニクソンは私の故郷の話に食いついてきた。単なる興味あるいは話を逸らすためかは分からないが少なくとも彼は話好き、あるいは語り好きなのかもしれない。
彼はヒーローになるために警備会社に入ったのだから。
「……あんたらはバケモン共と俺らが繋がってるって思ってんだろ?」
「……あぁ、そうだ。お前達はアメリカだけでなく、イギリスや日本でも事件を起こした。そして君達が気を引いているうちに日本に地球外生命の襲撃を起こし、どういう訳か世界をパニックにしようとした」
「……そいつは驚いたな、日本にもバケモン共の襲撃があったとはな」
「シラを切るのもいい加減にしろ!貴様らがこの事態を引き起こしたんだろ!」
地球外生命と手を結ぶことがどの罪として問われるかは分からない。だが許されるべきではない。
「……大体はな。けどな、お前らからしたら俺達だけでなくまだ許せない奴らも他にいるんだろ?」
「何の話だ?」
「日本はおそらく俺達サーファーに金に渡した。今頃アメリカは日本をテロ売国とでも言ってんじゃねぇのか?」
「…それが目的か。日本で事件を起こしたのは…」
アメリカとイギリス、特にアメリカの事件数が多く、アメリカやイギリスなどの同盟国に対するテロ、最初は中東諸国が疑われていたものの、捜査によってとあるカルトとも言えるべき集団が浮上した。
その集団は2022年までは息を潜め、陰口を叩くばかりであった。だからFBIやCIAの監視が留まることがなかった。
そしてその集団は動き出すことにした。全てはあの日から…
「…ニューヨークか?」
「正解だよコールソンさん」
そう、ニューヨークの事件によってアメリカのみならず世界自体が大混乱に陥った。そこでできた溝を彼らは見逃さず、動き出した。
そして彼らはまず腹いせとも言えるべき銃乱射で気を引いた。そして次に本命としてロンドンと東京にガスを撒いた。
目的は身代金、事実日本はカルトに金を払っている。理由はこれ以上の犠牲者を出さないという名目の元。
「…だとしたらイギリスは何故だ?」
「…そこまでは俺も分からんな。だが賢いFBIならアメリカで何起こそうとしてるかは分かるんじゃねぇのか?」
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とある少年の視点
『アメリカで47個事件があったことは分かった。それがどうし…』
「アメリカの州の数はいくつだ?」
大須裕太は武本輝が言い終える前にそう言うと、目の前に映るパソコンのモニターをマウスで操作する。
今まで調べたアメリカで起きた銃乱射事件、それにはある特徴があった。
一つは大規模であったり小規模であること。
一つは都心や高級住宅街で起きていること。
一つは例のサーファーが関与していること。
そしてもう一つは
「全部場所が違う。全部別々の州で起きてる」
これが最大の特徴だった。たった一日で銃乱射事件が47件、別の州で起きている。そして同じ日に東京とロンドンでテロ、そして千葉に異世界人の襲撃。
『…なるほど?それで何が言いたい?』
「次に事件が起きる場所をおおまかにだが予測できるかもしれない」
『アメリカの州は51、51-47は4、博打でもする気?』
「奴らは平等らしい。となれば何も大きな事件が起きてない場所で起こす可能性が高い」
『はいはい、で?』
「起きてない州はニューヨーク州、バージニア州、ノースカロライナ州、そしてカリフォルニア州」
『……次に起きるのはカリフォルニア州って言いたいんだな?』
「そうだ、奴らは負の平等を実現するんだろう。そしてニューヨークのやつが契機になったと見るべきだ」
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