第177話 過去のおはなし(13)
「あぁ、もう何なんだほんと!」
「嫌だ!嫌だよ!私…なんでぇ!」
どうして仲間割れしないといけないのか。そもそも操りとは何なのか。
(操りって魔法省が禁忌扱いしてるやつだろ!なんでできんだよ)
本来、魔法省が禁忌と認定した魔法は使えなくなる。それがどういう理屈かは分からないが、故に錬金術など世界経済に影響するものや、倫理感に問題のあるもの、そうこういう感じの操りの魔法は使えなくなっていた。
「もう…お願いだから…やめて…私…」
…そして再びの高威力高水準の魔法、今度は巨大な岩石が雨のように降り注いで来る。
いやそれだけじゃない。この岩石、地面から盛り上がっても来ている。上と下の同時攻撃。
「あぁ、もう!」
[運動変化]の魔法でどうにかなる域を達しそうだ。というか先程からかなり瀬戸際に立たされている。
「ほんとごめんなさいごめんなさい…なんで…やめて…ほんとにごめんなさいごめんなさい」
そして左右から緑の根のような物が次元から現れ、絡みつくように近づいてくる。これもまた魔法、上位魔法の連続。こんなの無理すぎる。根のような物が燃えることが幸いすごる。
何よりベラドンナには意識があった。体とその体内に潜める才のみを傀儡化されていた。ベラドンナ自身苦しんでいた。もう彼女が耳からだけでなく、鼻からも出血が確認できるほどに。
「ひっ…げっ…」
ベラドンナがえづきながらこちらへと歩み寄って来る。途端に今現在表現された魔法が全て消え失せた。
何が起きたと思うより前にベラドンナが覚束無い言動で何か言い出す。
「お願い…もう…いい。私を力付くでいいから止めて…アナリス」
「力付くって…操ってる本体を倒したほうが…それに力付くだったら…」
「私もう無理だよ、このままだったらさらに迷惑かけちゃう。あなたにも…ほんとに…だから殺す勢いでいい。だから…お願い…終わらせて」
「…私が嫌だよ。そんなの認めない」
せっかく彼女…ベラドンナと良い関係を築けたのだ。それがこんな終わり方で良いわけがない。
「…お願い、私を操っている人は多分この辺にはいない。おそらく…もっと遠いところ。それに私は今魔法が使えない…魔法の使い過ぎで…今じゃないと…」
「……」
「……」
「……やる。一瞬で終わらせる」
私はそう決めた。中途半端な覚悟ではない。命の重みというのを彼女の言葉で気付かされたことでさらに私に伸し掛かる重みは増えている。
「…あ、駄目!まだ!」
どうやらもう時間がないらしい。落ち着け、うまくいけば…
再び表現された魔法による数多の攻撃が一斉にこちらへと襲いかかる。
「…[風穴]」
よし、うまくいった。魔法でどうにか…うまくいった。
「い…いったぁ…!」
ベラドンナが痛みと束縛から逃れたことで、地面に伏せる。
「や、やった…」
なんとかうまくいった。風穴という魔法、ドラゴン退治に使った魔法の下位、いわば中位魔法に値するもの、威力は半々といったところでほんとに風穴を空けたような形で穴を空ける。
彼女、ベラドンナとパーティーを組んだ際にあんまりやり過ぎるなと言われ、中位魔法を持ち前の特性で習得したのが役に立った。
「あんま…動かないで…」
そしてベラドンナの両手の平の真ん中には風穴ざ空いていた。私が空けたものなのだが。
「…私…なんで動けるの?」
ようやくベラドンナ、ついで私も状況が掴めた。あの時、ベラドンナが魔法を発動する前に私が先に発動させた。
そして彼女はその魔法をまともに喰らい、操りから解けた。
「操りが…ない」
「まあ、そうだろうね」
「何をしたの?」
「魔力の特性を利用した」
魔法を使用する際に使われる魔力、それは体内に存在する…のは一般常識らしいのたが。
それがどこにあるか、それはおそらくだが行使する際の部位にあたる、もしくは血液中に存在すると言われていた。で操りの魔法の理論はその魔力を利用するらしい。
で、その理論は正しかったということになるらしい。だから魔力がダラダラと血液として漏れ出し、使えなくなった両手のおかげで操りが解けた…のだろうか。実を言うと咄嗟の思いつき以外の何でもない。
「多分傷が完全に治るまでは魔法は使えない。だから操りはもう解けてるはず」
「…あの…ほんとにごめんなさい…私」
私が治癒魔法で治した手を擦りながら彼女は頭を下げる。
「いいよ、終わったことだし。あいつぶっ飛ばしてチャラにしよ」
「…うん…ありがtっ」
ザシュ
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