第164話 もう一つの事件(12)
2022年9月15日 日本標準時
午後2時29分
日本 千葉県館山市
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「……てぇ!」
ババン!ババババン!
UH-1が上空を飛び回りながら、地上で特殊部隊が魔物達に向かって鉛玉を撃ち込んでいく。
「地球外生命体を発見!数は10以上!」
「近づけさせるな!既に民家への被害はでている!これ以上犠牲をだすな!」
棍棒を持った緑色の人型の化け物、灰色で羽を持ち空を飛ぶ剣を持った鬼のような化け物、尻尾を二つ持った狼、巨大化した赤い蟻。
多種多様な魔物が際限なく迫って来ている。
「撃て!」
ダダダッ!
「弾がもうありません!」
「一時撤退だ!…ッ!」
特殊部隊が撤退をしていた時、ブンブンブンという音が遠くから響く。
「…?組織の輸送ヘリか?」
「これ以上の応援の連絡はありませんでしたが…」
「なら…このヘリコプターの音は…」
特殊部隊の上空をヘリコプターが過ぎて行く。それは日本人なら誰しも一度は見た事のあるカラーリングをしていた。
「…!とうとう来たぞ!」
「やった!コブラだ!」
「陸上自衛隊のAH-1S!」
上空に展開した5機のAH-1Sは編隊を組みながら、多種多様の魔物がいる方向に向かって行っていた。
そして魔物達がいる中心に来た瞬間
ブウウウウウウウンンンン!!!!
蜂などの昆虫類が羽ばたく音のように、それ程の速さで機体下部に付いている20mm砲を放っていく。
「あぎゃ…!」
「ぎじゃ!」
その砲撃は全て魔物の体を貫き、青、緑、黄の血液を散らしながらこの世を去っていく。
AH-1Sが通り過ぎた後には魔物によって壊された民家と電柱、信号機に車、そして魔物の死骸のみがそこにあるだけであった。
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俺は目の前にいる人間じみた魔物に話しかけていた。
「どうして人間を辞めたんですか?」
カノンはそう聞くと、俺とヒカルを差し置いて歩み寄る。
「元人間の魔王軍の幹部と会うのは二回目です。でもあなたにはいろいろな血が混じってる気がします」
「今更気づいたの?この触手が見えないわけ?」
「心底馬鹿げたことをしてきたんでしょうね」
「は!?」
その瞬間、リヴリーは素早くカノンに迫ると、そのまま触手の連続攻撃を喰らわせようとする。
しかしそれら全てはまるで見えない何かに阻まれるかのように全て弾けていく。
「どうしてそうまでして力を得たんですか?」
「あらぁ、あなたには関係のない…ことよ!」
次の瞬間、リヴリーはカノンに攻撃を…しなかった。かわりに後方にいた俺とヒカルの前に来ている。
「は…」
「っ!」
ヒカルはかろうじて反応でき、拳銃をリヴリーの顔面に向ける、しかし引き金を引く前に触手が俺とヒカルを持ち上げる。体と首を締め付ける形で。
「ガッ…!」
「ちょっ!?やめ…っ…」
「やめなぁい!あの子が降参して死ぬまでぇ!」
リヴリーは今までより怒りを込めたドス黒いと表現すべき声をだす。ヒカルの手に持った拳銃が地面に落ちる。
「あなたみたいな魔法もろくに使えない奴がどうしてここに来たの?こうなるために来てくれたの?ありがとう感謝するわぁ!」
「てめ…っ!」
俺とヒカルはリヴリーの目の前で持ち上げられる。リヴリーのすぐ後ろにはカノンがいる。リヴリーは振り向きながらカノンに話しかけようとした時、ヒカルが顔面に蹴りを入れる。
「っ…何するの!?この餓鬼…まあいいわ、でどうするの?」
「どうすれば解放してくれるんですか?」
「あなたもこちらへ来てこの子よりきつく絞められるってなら解放してあげる」
「分かりました。本当ですね」
そう言った瞬間、カノンはゆっくりとこちらへ近づいてくる。
「あら、ほんとに素直ね。触手を斬ろうという考えは浮かばなかったの!?」
「斬ろうとすれば彼らを持ってる触手で盾にするはずです」
「よーく分かってるじゃない。じゃああなたもバイバイ!話が違うなんて言わないでね」
「え…」
カノンは呆けた声をあげた。こうなることは誰もが分かるはずだ。それとも本当に分からなかったというのか。カノンは覚悟のできた顔つきのまま触手に飲み込まれようと同時に
俺とヒカルの絞めが強くなると同時にカノンに向かって大量の触手が向かって行く。
その時、ドン!という音と共に触手のみが焼け焦げていく。
「は…」
「カノンやめたほうがいい。自分から絞められに行くのは、すごく苦しいと思うよ」
そこにはアナリスと先程撤退した無数の特殊部隊員、そして空を覆うわんとばかりの緑色の攻撃ヘリコプターと黒い輸送ヘリコプターが一斉にこちらへと来ていた。
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