第155話 もう一つの事件(3)
ドゴーン!!!!!
「おい、なんだ今の?」
「なんだか爆発みたいな音が!」
「あっちの方燃えてないか!?」
「誰か警察を呼んだほうが…」
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パチパチと雑草が燃える音が鼓動させる中、ダークエルフはなおも微笑みながら立っていた。
「……へぇ」
だがその笑みはもっと深くなるばかりだった。直後全ての炎を打ち消すかの如く、水流の群れがダークエルフの方へ迫っていた。
「生きてたね。よく」
その質問に答えることなく、私は睨み付ける。
「3対1で勝てると思う?この世界はね、あんたに合わないんだよ」
私はそう言うと笑いながら返す。魔法が全ての世界であれば人間はエルフには勝てない。だが、この世界ではそれは違う。人間が生態系の頂点であり、道具を使う世界なのだから。
だがダークエルフは動揺することなく、微笑みながら
「僕だって一人じゃないよ。3人…いや3体いるんだから」
直後、裏山のほうからドゴン!という音が複数同時に響き渡る。鳥達が驚いて飛び立っているのか、山の辺りが一気にうるさくなる。
「今の…何だよ!」
隣にいるキルアがファランクスに問いかける。
「何だと思う?それより僕は目の前だよ」
ファランクスはそう言うと、両手を掲げる。直後、白色の巨大な手と黒色の巨大な手、そして地面から人のような影が湧き出る。
「さあ、来なよ」
「じゃあ行く」
私はあっさりそう答えると、間合いを詰めようとするが…
「…!アナリス!」
カノンの叫び声がすると同時に何かが目の前を横切る。反射神経でかろうじて避けるが今のは一体…
「ファランクス…お前一人では時間がかかるだろう。趣味が良すぎてな」
「ハハ、そんな事言わないでよ。エルターゼ」
ファランクスの隣にはいつの間にか緑の悪魔が立っていた。
「…な、マジか。魔王軍幹部があそこに二人…」
驚きながらそう発言する。散々探されていた魔王軍の幹部、それが今目の前に二人揃っていたのだ。
「援軍…」
「ちょっ!?卑怯だぞそれは!」
カノンとキルアはそう言いながら剣とナイフを構える。だが…
「仕掛けてきたわよ〜。それでこの子達はどうしようかしらね〜、ね〜?」
女の声。若い女の声が背後から響き渡った。
「予定通りだ」
「は〜い。楽しみぃ」
緑の悪魔に促されたその女、かつてドイツで一戦交えた魔王軍幹部のリヴリーは笑いながら立っていた。
「幹部が三人…やばくね?」
思わず口に出してしまった。これはタダ事じゃない。一王国が総出でかからなければ終わるレベルだ。
「そう、やばいわよ。今度は失敗しないからね」
リヴリーは嬉しそうにそう言う。そしてキルアは顔の表情を隠すことなくこう告げる。
「やばいぞ。あの山から魔物の反応がする。多分ダンジョンが…複数」
「気づいたか…さて、お話は終わりだ。始めようではないか。宴を」
エルターゼはそう言うと天高く羽ばたく。
「3vs3だよ。まずは僕からね」
ファランクスはそう言った直後、影がこちらへと迫ってくると同時に白い手と黒い手が衝撃波を巻き起こす。
「私があいつを!カノンは女!キルアは悪魔を相手にして!」
「分かりました!」
「任せろ!」
勢いよくそう言った二人を背後に、正面にいるダークエルフと対峙する。迫ってくる影を手を振り払い、あっさりと消滅させることはできた。だが白い手と黒い手は健在だ。
「……ふふ。どうしようかなぁ〜」
「…何をだよ?」
「君の体。良いよね、君はきれいだし、体つきだってね。その体をどうやって壊そうかなぁって、どう凌辱しようかなあって、楽しみなんだ。君の…君の…2年前から取って置いた楽しみg…」
ダークエルフの体は言葉を言い終える前に吹き飛ぶ。横倒しになった地面がダークエルフを包み込む。
包み込んだ地面はやがて揺れ動きながら球体へとなり、そのまま私が作り出した地面の影へと引き込まれる。
「影か。いいねいいね。僕は女の子以外とはあんまり喋んないんだけど。ふふ、ふふふふふ」
「気持ち悪いんだよさっきから。とっとと死ね」
「いいね。その声も美しいよ〜」
直後、球体は弾け飛び、無数の影の帯がこちらへと向かってくる。
咄嗟に手をかざす。直後、光の玉が周囲に複数表れ、眩い光を放出する。
「先に言うと君の負けだ。僕はエルフで君は人間。上位魔法の習得数は駄前僕の方が上。何にでも対応できるってことだよ」
「戦ってるのに話すなんて随分と余裕だね、賢者舐めてる?」
「舐めてはないさ。君は賢者じゃないしね。この国の小説の如く、無双できるとは限らない。僕の知識は無限大だから」
「はあ、そうですか!」
直後、私は巨大な光の手を空中に具現化させる。白い手と黒い手より大きい手だ。
「さしずめ神の手と言ったところか」
ファランクスはそう言った後、白い手と黒い手を同時に私に当てつける。
「[虹界]」
私は短くそう呟いたその瞬間、7色で構成された虹が私とファランクスの周りを包む。
虹界。虹の世界、その色彩は魔力を惑わし、魔法の予測、相手による魔力操作を鈍らせる。魔力操作が鈍れば必然的に魔法の威力は落ちる。
フィールドは私よりにできたはずだ。問題は奴が上書きするかどうかで…
「…クソ…」
しかしその考えは甘かったことを知らされる。ファランクスは同様に[影界]を発動させ、複数の影を呼び出した。
「時間ないのに」
影と影の相殺をすべく、こちらも影を呼び出す。ファランクスは多少驚いたように見えたが気にしない。
「君に残された時間はいくらあるかな?ダンジョン攻略も忙しくなるよ」
それを聞いて心底こいつを殺してやりたいという思いが増幅する。
ダンジョンの魔物達はこちらへ向かってくる気配がない。ならば民家の方に向かっているのだろう。
この世界の住人は魔法を使えず、常時マシンガンを持ち歩いているわけではない。しばらくは蹂躪されるはずだ。
ドイツと同じ事がここで起きてしまうことを意味していた。
「うるさい!」
私はそう言うと、周辺のフィールドをリセットする。虹も影もそこにはない。だが白い手と黒い手は依然としてそこにある。
「第2ラウンドを…始めよう」
ファランクスは微笑みながらそう言った。
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