第149話 変な倫理

少年は1977年の青森県で生まれた。彼は好奇心が旺盛で活発的な子供だった。


1983年に現実のヒーローを知った。後に日本海中部地震と言われるこの災害から人々を守り、助けている人達のことを。


時が経ち、少年は青年になり、警察官へとなった。上京し、人々と国家を守ると誓った。


そして青年は思い知った。人々の相手は人々だということ、国家の相手は国家だということを。


青年は矛盾に悩んだ。犯罪を犯した人々の中には食べ物がなく、仕方なくやったという人達もいた。


青年は成年になり公安警察に入った。国家自体をよくし、犯罪をなくそうとした。だがうまくいかなかった。仕方なかったという言葉は世の中に通用しない事心から思い知った。


だが成年は真面目に働いた。そしてある日、自身に勧誘の伝手が来た。


成年はこの勧誘に乗り、人々を地球外生命体から守った。成年の真っ直ぐな性格は人々を守るという組織の理念と一致していた。


そして壮年は知った。彼らには彼らの人生が存在していることを。壮年は地球外生命体にすら悩み、矛盾を思い知った。

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私情というのは時に味方をし、時に敵となる。


警察官時代にそれを習った。私情は適切な判断を鈍らせる。それは極秘組織にも言えることであった。


田村雅俊は考える。ワシントンDCでTSAは大規模な作戦を実行した。米軍との共同作戦、表立った初の作戦。


民間人の多くはそれを知り、そして注目した。世間からは米軍による正体不明生物駆逐作戦及びその容疑者、テロリストの確保となっている。だが多くはニューヨークと同様に闇に葬られた。


その後に香港の悲劇が起きたからだ。


だが州間高速道路で撮られた映像、そして突如としてマスコミに提供された犯人像、少年少女5人は注目目を浴びることになった。


私はこの事を東京都の地下基地で見ていた。これで全てが終わるかもしれないという安堵感と共に得体の知れぬ不安が襲った。


今目の前にいる彼らは困惑していた。彼らの顔はあの時とは違うように感じる。感覚で掴みにくい…幻のような感じだ。よく分からない。


「…東京駅の彼ら?確かにあそこは地獄かもしれないけど…なんで?」


「俺は組織の都合上表立って助けることができない。俺は元警察官だったんだ。見ず知らずの人達が困っているならばどうにかしたい、それだけだ」


「…でもそれをやるメリットは?俺達に死にに行かせるの?大体俺達は敵だし、初対面だし、その…いろいろとマナーが成ってないと思うんだけど?」


「分かっているさ。いわば取り引きだ。君達がほしい物や情報をできうる限り君達に渡そうと思う。俺には今何もできないが…」


「…虫がいいね。困っている人達に俺達は含まれないの?」


「それは……そうだ。本当にそうだ、君達には本当にすまなかったと思っている。だか今は違うんだ。俺は君達の敵にはなりたくない、子供達の敵には…。こうなったからには俺を殺したければ殺せばいい。君達が…決めてくれ」


「……はぁめんどくさ。どうしようかガイム?」


「え?」


それまで二人だけの話であったが突然俺に向けられる。


「どうするの?東京駅の人達助けに行く?そしたらいろいろくれるみたいよ」


「…大丈夫なのか?信用しても?」


「さぁ?どうだろ?俺が拳銃突き付けてるとは言えって感じかな」


「…そもそも助けるって…どうやってだよ」


そう言うとヒカルはキョトンとした顔でこちらに顔を向けると


「異世界の力見せつけてよ。ラノベ並のチートパワーを」

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「どうしてこうなったんだか…」


「それに関しては同感。意味分かんないよねいろいろと。どういう倫理感してんだろあの人?」


「…ヒカル、これで人助けは何度目だ?」


「さあ?人から恨まれるた数の方が多いんじゃない?」


東京駅。その魔境は今目の前にあった。


「訳が分からない。そもそもどうしてこうなったのか…」


「まあいいじゃん」


「は?」


そう言ったヒカルの顔は少し笑っていた。


「だってこういうのかっこいいじゃん。英雄みたいな気分、勇者だよこれ」


「…?そうだな(?)」


「曖昧だな。異世界人とはやっぱ価値観が違うな。さて、魔法かけてよ」


「…薄く外の空気の幕を張る、ガスを一点に圧縮し効果を減らす。こんなのでいいのか?」


下位魔法には使う要点が少なく、この攻略にま有効的なのか分からない。使える魔法は20〜30はあるのだが。


「あと一応の水ね。あのガス、皮膚浸透性らしいから」


そう言うとヒカルはガスマスクを装着する。それに合わせてあらかじめスーツ姿の男からもらった自分のガスマスクも装着しようとする。


「声が変な感じだね」


「それじゃあ行こうか…」












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