第150話 東京都の混乱
2022年9月15日 現地標準時
午後1時42分
日本 東京都 千代田区 東京駅前
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「大規模な渋滞で患者の搬送が遅れています!」
「東京23区の全体G配備(全体ゲリラテロ配備)の発令ならび甲号(警察官の動員数最大)の実行命令!」
「化学機動中隊の到着まだか!原因物質の特定急げ!」
「災害救急情報センター機能不全!大規模な混乱が原因!」
「何故救助にいけん!?中にまだ人がいるのだろう!?」
「ガスに皮膚に対しての透過作用が確認!機動隊数名ならび救急隊員が被害を受けてます!ガスマスクだけじゃ防げません!」
「中の様子は!?」
「ガスの着色による視界不良で分かりません!」
「救急車の数が足りません!ドクターヘリも少なすぎます!」
「一般車でも構わん!患者を運び出せ!自衛隊はどうなってる!?」
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同時刻 東京都 世田谷区、兼、目黒区
自衛隊中央病院
「第101化学防護隊の状況は!?」
「現在首都高速3号渋谷線で往生中!上り下り含め車が殺到!到着予定時刻不明!」
「車じゃ間に合わん!化学兵器防護装備の譲渡なら他の師団に任せれるか!?」
「すぐに連絡します!」
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同時刻 群馬県 北群馬郡榛東村
自衛隊相馬原駐屯地
「第12旅団の出動要請!防衛省の許可も既におりてます!」
「第1輸送ヘリコプター群、以下内容CH-47J、6機うち全機発進準備完了とのこと」
「これより緊急配備を開始する。防護装備の輸送ならびガスの成分検出が任務だ!」
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「霞ヶ関方面で発生した事件は正しくは東京駅で発生したとのことで…」
「情報が錯綜していまして…現在東京方面の高速道路は爆発により機能停止」
「羽田空港は現在全便発着陸停止とのことで」
「東京メトロならび南関東地域のJRは全て運行停止」
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「……中谷どうだ?」
「……」
「……あんまり良くないのか?」
中谷秀也は田村雅俊の質問に答えることなく、ただ自身がつけているヘッドセットのケーブルが繋がった無線機を握りしめているだけであった。
「…警視庁、自衛隊が動き出した。練馬の方は分からんが…群馬は既に動いている」
「到着は?いつだ?」
「…群馬東京間は距離にして約100km。輸送ヘリコプターでも最低20分はかかる」
「ガスが散布されてからどのくらい経った?」
「…おおよそ1時間と言ったところだな…」
「そうか…あのガスは聞いた限り即効性であり、皮膚に浸透する。そして冷たい…」
「…今は9月だ。それなのに気温は28℃あるから常温じゃないのか?大気中に分散せずに這うようにして迫るガスを見てのことなんだろうが…じゃない。俺が気になっているのは…」
「彼らか…?あの子供達」
「あぁ…お前がなんでだ…?エージェントリーダーとも呼ばれたお前が…異世界の奴らを信じたんだ?」
「…三重県のあの人覚えているか?」
「三重県…?四日市市の火事で被害にあったあの男性か?」
「あぁ、彼は今社会復帰を無事にしたらしい。だがあの事件のショックで精神的な障害を抱えることにはなったが」
「…俺達がどうにか説得したおかげかもな。あれは化け物じゃないって…」
「それもあるかもしれんが…彼はこう言っていたのを覚えているか?」
「あぁ、確か…」
「あいつは叫んでいたんだ…魔王って…」
「…魔王か。ファンタジーの定石って奴だな。それがどうしたんだ?」
「俺は考えた。もしかしたら彼らは英雄なんじゃないかって」
「はあ?」
「魔王を倒す者は誰だ?勇者だろう?それならば彼らは勇者だ。魔王を倒すためにこの世界に送り込まれた。そうはならないか?」
「……TSAの奴らって何考えてるか分かんない奴らばっかだ…」
「…その彼らは東京駅にいる。あの地獄に。自衛隊が到着し、彼らと鉢合わせたら終わりだ」
「…私情を挟みながらの取り引き。そして命を救うために動いていることを示すための信頼…自分は行かないくせにか」
「いざとなったら俺も飛び込むさ。この世界は…変わったのだからな。俺が必要な時代はもう終わったんだ」
田村雅俊はそう言った後、ポケットにあるライターを取り出し、胸ポケットにしまったタバコを一つ取り出す。
タバコの煙が上に上にと昇っていった。
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