第130話 混乱
2022年8月12日 現地標準時
午後 12時12分
中華人民共和国 香港国際空港
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「現在、出発予定の便はありません!」
「全て運行停止となっております!」
飛行機出発予定の掲示板は全て赤のマークとなっており、それが否定の意味だというのはすぐに分かった。
空港は行きは正規ルートじゃなかったため、中がどうなってたかは知らないが、すくなくとも人々がかなり押し寄せてきているのが分かる。
それらの人々をまとめる警察官はここにはおらず、おそらくあの香港という都市に呼ばれているのだろう。
大きなテレビに映っているのはニュースキャスターが原稿を読む姿、しかし香港市内を映していることはない。
「どうなってる!?何故全部出発できないんだ!?」
「現在、香港市内上空に高度電磁波が発生し、飛行機が墜落する可能性が…」
「これから重慶に行かないといけないんだ!早くしてくれ!」
空港の従業員に食って掛かる客を見ながら、俺は辺りを見渡す。
「なんとかここに来ても…あんま意味なかったな」
思わずそう呟く。バスにギリギリ乗り込み、降りた先には車と人の集まり。
「渋滞はそこまでなかったけどね〜」
ヒカルは悠長にそう言ってくるが、待つのがあまり好きじゃない俺にとっては結構問題となってくる。そもそも飛行機がいつから飛べるのか分からないのだ。
「それよりあいつの攻撃で俺のAndroidがお釈迦になっちゃったのが許せん。何も情報が分からんし、契約がまたするの超面倒」
「お前のことだろ…って言いたいけど俺のも駄目になったからな」
「あん中に良い動画保存してあったんだぞ…Twitterの切抜き…」
「はぁ…」
とまぁ雑談でも交わしながら待っていようということになった。
「おーい、なんもないしどうしようもなかったぞ〜」
アナリスがそう言いながら戻ってくる。
「なんか面白い物あるかなぁって思ったけどあんまないね」
「中国に怒られるぞ。それでカノンとキルアは?」
「さぁ?トイレとかじゃないの?ここに来るようにしてるから別に探さなくてもいいはず」
「それもそうか」
「なぁ、ちょっといいか?」
俺は二人に割り込む形で話す。二人共何かと俺の顔を覗き込む。この状況だと俺は何言ってるんだと言われるかもしれない。けど疑問に思った事は誰かに話したかった。
「なんかふと疑問に思ったんだけどさ…」
俺はその疑問を彼らに話した。
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カノンはまだ悲しみから完全には抜け切れていなかった。ただ一人になり、ボーッと何かを考えたかったのだが。
「そんなに悲しむなよ。もう終わったんだからさぁ!」
はっきり言って多少場違いのキルアと何故か一緒にいた。
「別に…悲しんでない…」
「そうかぁ?」
彼女の立場からして私と彼女との相性は最悪だろう。なにせ彼女は大盗賊、それに対してこちらは名目上騎士であるから。
「…悲しんでないと言えば嘘になりますけど…大事な人を失って悲しむのは普通じゃないですか?」
「……」
キルアは答えなかった。それがどういうことか分からないかのような表情をしている。
例えバルトシュタインが魔王の手に堕ちたととしても私としては彼はまだ私の中の大切な人だったのだ。なにせ私は彼のおかげで今ここにいるから。
やがてキルアはふっと笑いながら話し出す。そこに今まで見た間が抜けた表情ではなく
「あたしはあんま考えないようにしてる。大事な人ってのがあたしには分からないから」
その意味が良く分からかった。ただ他人事という解釈を持っているのだけが分かった。
「そう…ですか」
私は何も言えなくなった。彼からは悲しむなの言われ、涙こそ堪えたもののここに来るまで私はずっとこんな感じだ。
いつの間にか駐車場に来ていた。かなり広く、車で埋め尽くされているがほとんどの人は空港にいるのかかなり静かだった。
「あ、ここにいたんだ!」
ふと、女性の声が響き渡る。後ろを振り返るとアナリス達がいた。
「中々来ないから探したよ。キルアも一緒だね」
「あ、すみません。ちょっと一人で考えてたもので…」
「いいのいいの。それよりさ…」
アナリスはそこで言葉を区切る。何か言いたげなのに。
話を再び始めたのはガイムからだった。彼とヒカルは素性が分からず、謎の少年という立ち位置なのだが今度話してみようかと思っていた。
だが彼は深刻そうにゆっくりと口を開く。
「…キルアってほんとは何者?」
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