第121話 香港襲撃事件(8)
「香港市内でビルの倒壊が相継いでいます」
「警察官や消防士の誘導に従ってください」
「原因は不明とされる爆発があちこちで確認されており…」
「依然として詳しい情報は不明ですが、刃物類を持った男が暴れているとの…」
「ですが、先程から香港市内に存在する報道機関との連絡が…途絶し…」
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2022年8月12日 現地標準時
午前 10時48分
中華人民共和国 香港 油麻地
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「これは…ひどいね」
カノンと元騎士団長が戦っているもとへと向かっていた俺達は目の前で繰り広げられる光景を見ていた。
警察官と消防士、救急隊員が倒壊したビルの人々を救助し、道路はビルの瓦礫によって茶色く変色しており、ひび割れている。
その弊害で車両の行き来もできないのか、あちこちで車が放置されている。黄色く点滅するヘッドライトが一層その不気味さを際立てる。
壊した信号機。
ガラスとコンクリートの破片。
移動する人々。
子供の泣き声。
いろいろな物を見ながら、聞きながら向かう。
「魔力探知的にもう少しで着くよ」
アナリスがそう言った瞬間、ドカン!という音が響き渡る。それと共にシャキン!という刃物の音、小さいながらもその特徴的な高い音は全員の耳に届いたようだ。
「なんか…まずそう。私急ぐわ」
アナリスはそう言うと走る速度を上げる。身体強化の魔法を連続してかけたのだろう。身体強化の魔法は一時的なエンジンブーストのようなものであるため、魔法の効果期間が終わるとエンストのような状態、疲労や筋肉痛関節痛が襲ってくる。
しかし、キルアもアナリスと同じように速度を上げ、アナリスに付いていく。彼女も素の身体能力が高いようだ。さすがは大盗賊。
「…俺らいる?これ」
「分かる」
俺は思ったことをヒカルに言うが、ヒカルも同感のようだ。行ったところで武器、俺は拳銃、ヒカルはアサルトライフルを背中に背負ってるわけだが。
そんなこんなで戦場はすぐそこまで迫っていた。
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俺がそこまで辿り着いた時、カノンは串刺しになろうかしていた。が、
「やば!まじやば!」
アナリスがかろうじて地面を変化させ、形成した根みたいになったコンクリートで遮ろうとする。
かろうじて間に合ったらしく、血だまりができる…ということは防げたようだ。
「とう!」
ヒカルが声を上げながら高速道路へと入る。俺もその後に続く。
「クソォ〜、拳銃一つでどうやれってんだよ〜」
「下位魔法があるじゃんか、そんなこと言ってる暇ない」
上位魔法のほとんどを覚えていそうな賢者は無情にも俺にそう言い放った。
だが、これで5人揃ったわけだ。俺はとりあえず拳銃を構える。キルアはナイフを、アナリスは手をかざし、ヒカルはアサルトライフルを。
「…皆さん…来てくれたんですね」
カノンは俺達に気づき、安堵の表情を浮かべる。彼女も騎士だがやはり、一人の少女ということだろう。
カノンはゆっくりと剣を構えると前へと出る。
「この世界で見つけた新しい仲間の皆さんです…」
「ほう…そうか」
目の前にいる魔王軍の幹部の老人はさっきまでは長槍だったものを大剣に変化させながらゆっくりと威厳ある声を発する。
「私は魔王軍幹部の一人、ストレイター。お前達の命をこれより奪う者だ」
彼の最後の言葉を終えた瞬間、背筋がゾクリとする。威圧で押されている。
だがカノンはストレイターと真に向き合った顔つきで
「ここで決着をつけましょう。私とあなたの…」
カノンがそう言った瞬間、ストレイターは地面に大剣を突き立てる。
「ふむ、どうやらここまでのようだ。残念だったな」
「は!?」
アナリスがストレイターの発言に驚く。[ここまで]とはどういうことだろうか。
「私がなんのためにここに来たと思う?お前達のような魔法の使える人間が来るのは想定外だったが」
その瞬間、地面に巨大な魔法陣が浮かび上がる。その魔法陣は俺達の足元はおろか、はるか先にまで続く。
「私は自由に戦場を作ることができる。今その準備が終わった」
その瞬間、魔法陣からパチパチという音がしたかと思うと
ドン
静かな音、それでかつ鼓膜全体に響き渡るような重音が襲う。その間もなく
ジジジジジジ!!!
地面から電流のようなものが、地面から空へと浮き上がった。
辺り一面が光色に包まれた。
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