第120話 香港襲撃事件(7)
「いや…まぁ落ち着いて…」
ヒカルがそう言ってどうにか場を切り抜けようとするが特殊部隊の皆さんは完全に敵意を剥き出しにしている。
「お前達さっき宙に浮いた奴の仲間か!?先程剣を持っていた奴とも関係があるな!?」
「いや、僕らも何が起きたのか分からないです。ただなんか逃げ遅れた感じがして…」
「待て!お前達テレビで見たぞ!ちょっとこっちに来い!」
テレビ…まずい。昨日の出来事(時差でよく分からん)が報道されてたとしたら、俺達終わる。
「まずい!逃げるぞ!」
ヒカルがそう言ったが時すでに遅く、特殊部隊は俺達の左右を逃すまいと囲みこみ、銃を構えている。
「ちょっ、落ち着い…」
ドゴン!
突然、俺が彼らを宥めようとした瞬間、特殊部隊のいる地面の後ろが割れだし、そこか、土が現れたかと思うと、土砂崩れ時のような土の波を形成する。
「なんだ!?これは!?」
特殊部隊は一斉に気づき、飲み込まれまいと銃を撃ち出すが土砂なので効果はないようで
「のわあ!?」
「飲み込まれる!」
叫びながら土砂へと飲み込まれた。土砂の流れは俺達を叫びながらはるか後方の道路に特殊部隊を放り投げる。
「おまたせ!」
気づけばそこには紫色の少女と赤髪の幼女が立っていた。
「アナリス!マジ助かった感謝しかない」
俺は早口に感謝の言葉を口にする。助けられてばかりなのが情けないがそこは表情に出さない。
隣にはキルアもいる。ただし、かなりご機嫌斜めのようだ。赤髪がさらに赤くなっている、というか顔がひでっている。
「あいつ許さん!よくもあたしを吹き飛ばしたな!容赦しないぞ魔王の幹部め!」
「盗賊が魔王の幹部とやり合うのか」
改めて考えると悪VS悪で面白い。とは言えキルアも無事でなによりだ。一瞬死んでるかと思って結構焦ったが…いや、内心死んでるとは思えなかった。吹き飛ばされるのがあっさりすぎて逆に死んだとは思えなかった。
「それで状況は?どうなってんの?」
「あぁ、え〜っと、まずあいつって魔王の幹部なの?」
「そうだよ。てかガイム知らないの?あいつはヴェルムートの元騎士団長だよ。5年前に戦死した。私王都で直接見たから分かる」
「元騎士団長…武神とか言われてた人?」
「そうそれ」
それならば知っている。ヴェルムート王国直属の騎士団の団長だった男だ。魔王軍との戦いで数々の功績を残し、人々から讃えられ、やがて武神と言われてた人だが。5年前、遂に魔王軍との戦いで戦死したとされた。
俺は王都とは距離のあるギルドにいたため、情報がくるのがかなり遅く、曖昧だったはずだ。
あれ?でも…
「5年前に戦死したんだったら、あれは何?」
「さあね?ゾンビか不死者か、はたまた禁術の死者蘇生の魔法でも使われたか、蘇生魔法なんか実際にできるとは到底思えないけど」
「つまりあいつ死なないかもしれないってこと?」
「そうなるね」
これはまずい、俺達はドイツでも敗れたが、再び敗れることになりそうだ。
「ガイム、覚醒してくれよ。ドイツの時と同じく」
話を聞いていたヒカルが俺の肩をポン!と叩く。あまり期待しないでほしいし、あの力はなんなのか俺にも分からないのだが。
「とりあえずカノン一人で戦ってるぽいし、私達が行かないと駄目でしょ」
アナリスは真剣そうな目つきでそう言う。
「同感。あたしもあいつを倒さないとムシャクシャしたまんまだしな!」
キルアも目をギラギラにさせてそう言う。随分と殺気だってるようだ。
「戦うのか…じゃあ銃ちょうだい」
ヒカルはアナリスにそう言うと、アナリスは無言で何もない空間からアサルトライフルを二丁取り出す。
「ほらガイム!」
「あれ?俺も?」
何故か俺にも渡された。使い方は知らないのだが。
「とりあえず持っとけ。下位魔法しか使えないんでしょ?だったら護身用にでも」
アナリスからストレートにそう言われ、結構傷ついた。この世界も元いた世界にも俺の適地はないらしい。
「さぁ、行こうか」
「ちょっと待て」
アナリスの掛け声をヒカルが止める。
「なんだよ!早くしないとあの騎士死んじゃうぞ!」
あの騎士とはカノンのことだろう。キルアとはギスギスしていたが一応心配はするらしい。
「それはそうだけど、話を聞く限り不死身っぽいやつをどうやって倒すの?作戦でもあるけ?ドイツと同じようになっちゃうよ?それでいいの?また死にそうになるよ?」
「その疑問形の質問めっちゃうざいんだけど」
「正論じゃん。ニューヨークの時だってやばかったし。大体俺、地球人だよ。超常的な能力すら持ってないんだよ」
「作戦を考えればいいんわけでしょ。そういうのはヒカルが得意じゃん。自分で考えてよ」
「わあったよアナリス…そうだな…」
数秒後
「…ゴリ押し」
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