第122話 香港襲撃事件(9)
目の前の色彩はいつの間にか戻っていた。電流のようなものでてっきり死んだかと思ったが、無傷だ。
「とりあえず助かった…。なんの魔法使ったの?」
俺はあの電流を防ぐほどの魔法は何かと思い聞くが
「私は何もしてない。全員動けてなかったからカノンでもない」
アナリスはそう言った。何もしていないということは人体に無害だということになる。
少し安心したのもつかの間、突然、街中の音や明かりが消える。今は午前11時近くとは言え、蛍光灯やパトカーのサイレンまでも
が消えている。
「…まさか、EMP…!」
「EMP…?」
ヒカルは思い当たった節があるようだ。
「電磁パルス。ありとあらゆる電子機器を破壊するとんでもない代物…」
ヒカルがそう言い終えた時、ヒカルの服が発火する。
「クソッ!なんだスマホ…」
どうやらスマホが発火したらしい。言われてみれば俺の懐も熱くなっている。
「あっつぅぅ!!」
俺はポケットからスマホを手にする。パチパチと言いながら赤くなっている。その温度は触れないほどまでに達し、おもわず投げ捨ててしまう。
さて、ストレイターはと言うと、大剣を再び手に戻し、こちらへとその剣先を向ける。
「お前達の技術は消えた。海底ケーブルも壊した今、外部との連絡はとれない。サイバー都市もそのサイバーがなければ、ただのガラクタの集まりにすぎん」
ストレイターは不吉に笑う。勝ち誇ったような、目標は既に達成されたのだ。
「ここは我らの植民地とする。我々の力を世界に見せつけてやるのだ!」
「それが魔王の目的!?」
「そうだ王女よ!恐れるがいい我らを!逃げるがいい我らから!今宵、九龍半島は我らが貰い受けるぞ!」
「させるかよ!」
アナリスはそう言うと光の玉を作り、ストレイターへと投げる。光の玉なストレイターに直撃した瞬間、爆発する。
「行くぞ!」
ヒカルもアサルトライフルことM16を撃ち出す。
「私とキルアさんで前に行きましょう!」
「おう、任せろ!」
銃弾の掩護をうけながら、カノンとキルアが前に行く。
俺はとりあえず拳銃と下位魔法のコンボを咄嗟に思いついたのでそれを行おうとする。
爆発の閃光が収まり、予想はできたがストレイターはまだその体が地面に着くことはなかった。
「かなりタフだな、さすがは武神」
「武神っておっかないよな」
ヒカルと俺はそう言いながら拳銃を片手で構えて撃つ。
「この前日本で多少は教えたとは言え、使い方うまいね」
「そらどうも!下位魔法しか使えない俺だけどこの世界のほうがあってそうだ」
「俺だって魔法の一つや二つ使いたいぜ」
おしゃべりはここまでに、ストレイターの様子をじっと見る。
カノンがまず剣で左上から右下にかけて斬ろうと一閃するが、ストレイターには僅かに及ばない。
「ぬらあ!」
ストレイターは下がりながら、十字を切る。
「死せよ!」
ストレイターは大剣を振る。振ったぶんだけ、光線となってあちこちへと飛んでいく。
「聖職者にでもなったつもりか!?」
アナリスはそう言うと十字の光線を一瞬にして消し去る。代わりに放置された車を浮かしたかと思うとストレイターに投げつける。
ストレイターはそれを細かく切る。しかし車の残骸からノロリとキルアが現れることには気づかなかったようだ。
「弾けろぉぉ!!」
キルアは指と指の間に挟んだいくつものナイフをストレイターへと投げる。その全てがストレイターに斬られようとした瞬間、爆発する。
爆風がストレイターを覆う。
「行くよ![氷炎禍]!」
「[地砕斬り]!」
アナリスとカノンが二方向から攻める。氷と炎の渦がストレイターを覆い、カノンの斬撃で地面は大きく割れる。
「ぐぅぅ!ぬわあ!」
ストレイターはまだ死なず、そう叫ぶと一閃の衝撃でアナリスとカノンを吹き飛ばす。その隙に背後に回ったキルアがストレイターの首を狩ろうとするが、ストレイターはバッ!と手を広げるとキルアは転がっていく。
「私の最高火力の魔法だってのに、まだ死なないのか!」
「アナリス頼む!」
俺は今までじっと見ていた。いや、ストレイターにバレないようヒカルと隠れていた。
アナリスにそう言うとアナリスは俺の声を身体強化の魔法で聞き取ったらしく、俺とヒカルを宙に浮かす。
「行くぞ!ガイム!」
「決めてやる!連携をなあ!」
俺とヒカルは銃を構える。ストレイターはその様子を正面からじっと見ているだけだ。
ストレイターは知らないだろう。カノンが放った剣技がまだあることに。
ひび割れた地面をカノンは剣を刺し、下から上へと振る。
「[風山斬り]!」
その勢いは凄まじく、細かい斬撃がストレイターの体を浮かしていく。しかしなおもストレイターに致命傷は与えられない。
「撃って!」
アナリスの合図をもとに俺とヒカルは銃を撃ち出す。
二つのM16が撃ち出される。躊躇なく撃たなければならない。鎧のない部分を。
「うらあ!」
俺とヒカルは叫びながら銃を撃っていた。ヒカルは武器を落とそうと腕を撃っているが、俺は標準をうまく合わせられず、適当にしか撃てない。
(魔王軍の幹部だ。奴は人間じゃない。躊躇したらこっちが死ぬ)
そう言い聞かせていた瞬間、黒い何がバッと視界を覆う。
「なっ!?」
驚きの声を上げた瞬間、俺の体はいつの間にか地面に降ろされていた。
「危ない危ない。それであいつは今何してんの?」
アナリスが機転を利かせてくれたらしいが、俺にも奴が何をしているのかは分からない。
ストレイターは黒い何かに覆われた後、その体は一回り大きくなり、ズシン!と落ちてくる。
「この姿は動きにくい。俊敏性に欠ける。持久力もだ。だがお前達を倒すのにはうってつけだ」
もともとのストレイターの体はさらに大きくなっており、鎧もその巨体に合わせてある。
「あれが…魔王軍幹部のストレイター…!」
カノンは驚きながらそう言った。
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