1965年(8)
「ナーガの化石、我々はそう呼んでいる。こいつは文献によれば1855年に発見されたらしい。当時ロシア、今で言うソ連が南下政策による処女地開拓のための先遣隊によって偶然発見されたらしい。元々この場所は洞窟で内部は外界より多少温度は高い。それから100年以上はこの状態だが驚くべきことにこいつは死んでない。いわゆる仮死状態ということらしい。おそらく外の気温で死にかけな時、偶然この洞窟を発見し、体力だかを整えているとか」
兵士は一気にそう言うと「何か質問は?」と言う。それに反応して学者としての興味が湧いた者達が次々と質問しだす。
「まず、こいつはなんだ?生まれて初めてこんな蛇を見るぞ」
「アミメニシキヘビに近いらしい。アジアの赤道圏やアフリカに生息しているらしい」
「いや私が聞いているのはそこではなくてだな。どうしてこの大きさにまでなったのかということだ」
「さあな?分からん」
「じゃあ次は私が質問する。こいつはいつからここにいるんだ?発見は1855年だがそれ以前の文献はないのか?」
「ないな。こいつに襲われた事例は今までに確認されていない。だが推定1750年代あたりからはこの洞窟にいるらしい」
「200年以上!?そんな長寿の生物が!?」
「次は私が!」
学者達はまるで子供のように兵士に質問しだす。兵士も兵士で先生かのように答えており、その状況を楽しんでいるようだ。
正直私としてはソ連とこの蛇との関係性が知りたいが、それをいきなり言ったら多少なりとも怪しまれるだろう。ならば自然と…何か聞かなければ。
ふと、ある質問が思いつく。私は全員の声を遮るかのようにして言う。
「何故私達をここに呼んだんだ?」
少しの間の静寂、やがて兵士は笑いだしながら
「中々鋭いじゃないか。あんた達を呼んだわけか…それはだな。この蛇の様子が最近おかしくなってきているからだ」
「おかしく…だと?」
「そうだ。具体的には光や音での反応を示すようになった。と言っても僅かに尻尾が動く程度のな」
「…それは…つまり」
「この蛇が冬眠から目を覚ます。それが今であってもおかしくはない」
その兵士の言葉で私は蛇を見る。
これが…目覚める?全長10mもあろう蛇が?とここで私はようやく理解した。ドーム状の天井やあの大扉は侵入者を拒む物ではない。
あれはこの化け物をここに閉じ込める為の者達なのだ。今目覚めてもおかしくない化け物を。
「な、何!?それじゃあ早くここから抜け出さなければ!」
「そ、そうだ!こんな危ない場所にいられるか!」
学者達は先程の好奇心はどうしたのか急いで出口へと向かい出す。私はどうやらその学者陣の最後尾になりそうだ。
「目覚めるか…この化け物g…!?」
私は途中で言葉を区切ってしまった。
「お、おい!あんた!」
「なんだ?どうした?」
年配の兵士は私の深刻そうな表情を見てか顔色を変えて私に話しかける。
「や、奴が、奴が瞬きを」
「は?何、なんだと?」
「さっき、一瞬だが奴の目が、本当だ」
「ちょっと待て」
そう言うと兵士は懐中電灯を取り出し、氷へと近づく。その先には蛇の目がある。
兵士はギョロッとした目にライトを当てる。が蛇は何の反応も示さない。
「本当なんだろうな?」
「間違いない」
兵士は懐中電灯を右往左往させる、尻尾は動かない。だがその代わりと言わんばかりに…
目はひん剥かれた、黒目のほうに。確実に。
「い、今…」
「っ!CP、CP!異常発生、異常発生!ナーガの化石に異常だ!活性化状態に近づいている!」
私はその年配の兵士が扉の外に出るのと同時に外に出る。振り向きもせずに螺旋階段へと向かう。
螺旋階段からは多数の兵士達が何事かと降りてきていた。
____________________
「全ユニットは緊急配置に!」
「待機中の用員も全て動員しろ!」
「戦車隊の燃料補給急げ!弾薬もだ!」
「電流柵の不備はないな!?」
「移住エリアと貨物エリアとの隔離急げ!」
「ハインド飛ばせるか!?」
「内部にユニット1が突入!状況を確認中!」
午前10時20分、先遣隊突入。
アラート音が鳴り響く。基地全体に異常を報せるアラートだ。
計8人の兵士は螺旋階段を完全に降り、大扉へと近づいていく。大扉は完全に開かれているが、中の詳しい様子は確認できない。
それぞれAK-47を装備した兵士達は何事の異常も逃すまいと気を逆立てる。ソロリソロリと大扉の中へと侵入する。
いつも通り氷漬けの蛇、どこか不気味な雰囲気を漂わせていること以外は変わらない。
兵士達は段々と氷、目のある部分に近づく。以前として白目を剝いたままだ。
懐中電灯を取り出し、目にライトを当てる。反応はない。ライトを左右に動かし、異常を確認。これを5秒繰り返す。
1、2、3、4…
5
ギョロリ
蛇は氷の牢獄を破った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます