第111話 HIDE SEEK

15分程度だろうか。いくらか建物が目に入る街に俺達は来ていた。身体強化の魔法の効果はすごく、時速換算で30kmになるらしい。キルアだと50kmレベルになるのは驚くばかりだ。


そんな速さなものだから街には予想より早く着いたようだ。さらに幸運は続く。


「おい!あれは俺達が求めていたローリー行きのバスだぞ!」


ヒカルはそう歓喜の声を上げると急いで料金を支払う。そこからは早くバスはすぐにエンジンを上げて動き出した。


「…今日本来は魔導具を潰しに来たんだよな?」


窓際に座った俺は隣にいるヒカルにそう話しかける。


「そのつもりだ。俺もここまでひどくなるとは考えなかったぞ。俺のスマホは充電切れたし、モバイルバッテリーも充電ないからお前のスマホ見せろ」


「いいよ。ほら」


「どうも。……米陸軍、ワシントンDCに派兵。謎の生物がワシントンDCに襲来…それに?…バージニア州全体に戒厳令…生物テロ対策?これは表向き…だな」


「どういう意味だよ分かりやすく」


「この州は米軍がいるよ。何故なら化け物がいるからね。だから民間人を守るためにあちこちを封鎖するよが表向き。実際は5人の人間を捕まえよう」


「なるほどな。だから空港が使えない?」


「そーいうことだ。ノースカロライナ州は今のところ大丈夫だし。大統領の会見もしばらくしたらあるようだしな。楽しみだななんて言うか」


「あはは…」


俺は今までの境遇を考えると笑いなど出なかった。

____________________

「どういうことだ!?行方不明!?」


白髭は報告しに来た兵士に向かってそう言う。


「墜落機周辺を捜索しましたが、発見できませんでした」


「…クソっ!何でもいい。民間人から目撃情報を聞き出し、捜索地域を拡大しろ。空軍との連携でアリ一匹たりとも逃さぬ勢いでやれ」


「イエッサー!」


兵士達は勢いよく返事を言うとその場を去って行く。


「…まずいわね。このままだと…」


「再び行方不明。日本での失態を再び繰り返すことになる」


フォードはそう言うと考えを巡らせる。


CH-47の墜落が確認された僅か5分後に米陸軍による周辺捜索が始まった。車両は墜落機による渋滞によって阻まれたためヘリコプター中心の捜索が行われた。


当初は墜落の衝撃で死亡したと思われていたが、周囲の民間人によると


若者5人がヘリコプターから出てきて森の中に消えて行ったと。


髪の色から割り出した結果、まだ生存しているということが分かった。そこからは森の中を捜索、捜索、捜索である。


「残念ながら…」


白髭は向き直ると服をパサッと整えて私達に話しだす。


「いまだに発見は困難でしょうな。私としてもアメリカを陥れる存在を一刻も早く抹消したいわけですが」


「いえ、大丈夫。それより死傷者については…」


「死傷者はゼロです」


…?


「なんですと?輸送ヘリコプターの強奪に戦闘機迎撃が…」


「私にも信じられません。ですが死傷者は0人…正確には重症者死亡者は0人であり、負傷者は高速道路のほうで出ていますが、全員が脳震盪あるいは電気ショックによる気絶のみで他に外傷は…」 


「それは…」


「チヌークの乗組員は全員落下による打撲が完全にないと…機器についてはいくらか破損していますが…ラプターは一時機能不全に陥った後すぐに復旧したと…パイロットはGによる体の痛みだけで…他には…戦闘機自体も外傷は確認されなかったと」


長い会話を終えて、フォードが言いたかったことをシャーロットが言う。


「つまり連中は死者を出さずに逃亡した。そんなこと可能なの?」


「私にもなんとも言えませんな。それでは私は部下の指揮を取りますので」


白髭はそう言うと兵士達の中に消えて行った。


「連中が逃げるところなんかいくらでもある。捕まえるなんて可能かしら」


「…………そうか」


「?」


「ノースカロライナ州に向かう理由が分かった」


「それは私も気になっていたの。バージニア州にも空港はあるのに何故遠くのノースカロライナ州に向かうのかは。空港だったらノースカロライナ州に向かう必要はないわけで…」


「簡単だ。奴らにも情報網がある。これだけの騒ぎを起こせば注目を浴びる」


「…情報メディア。なるほどね。ネットを利用したと。だから私達の追跡が戸惑っていると…」


「そうだ…私も彼らが持っているとは…別次元の人間はたまた宇宙人が」


スマートフォンを持っている。予測しなかった。彼らを化け物だと思うばかりに人間的な物を使うとは考えられなかったのだ。私にとって奴らは魔法使いのテロリスト程度でしかなかった。だからこそ考えがつかなかった。


「確か今は民間人の混乱を防ぐためにメディアに情報を与えている…そのはずだ」


「えぇ、一部の情報を公開すれば民間人の混乱は一定に抑えられるし、化け物が出たと報道すれば軍の指示にも従う」


「それでバージニア州の空港が全て封鎖されたことを知って…思えばこの国に来る時点で彼らが何か地図的な物を持っていると仮定すべきだった」


「ただちにノースカロライナ州の空港を封鎖しないと…けどそれは…」


「無理だろうな」


ノースカロライナ州に存在する国際空港は距離こそあれど5つ以上存在する。そしてそれら全てを封鎖すれば夜とは言え、かなりの混乱が予測される。


バージニア州の高速道路、空港に追加してノースカロライナ州の空港を封鎖するのにはかなりの混乱が予測される。


「ノースカロライナ州で騒ぎを起こせば…今度こそ交通網は死ぬでしょうね。今は大丈夫だとしても」


そう。交通網は完全に麻痺する。実際州間高速道路95号線付近では多くの車が停滞している。それはリッチモンドからの避難も合わさってすごい数へとなっている。


「封鎖はしない。行き先を特定してそこに軍を派兵する」


私は再び考えを巡らせる。


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