第107話 米軍VS異世界人(15)
ピーッピーッピーッピーッピーッピーッピーッピーッピーッピーッピーッピーッピーッ
視界が反転する。
ピーッピーッピーッピーッピーッピーッピーッピーッピーッピーッピーッピーッピーッ
機体の破片が空へと飛ばされる。
ピーッピーッピーッピーッピーッピーッピーッピーッピーッピーッピーッピーッピーッ
炎がどこからか上がる。そして隣を飛ぶ戦闘機のエンジン音。
そして機体は安定化する。俺は何かが起きたのかを理解しようとする。
瞬間的に左肩に痛みが走ることに気づく。シートベルトを着用したため吹き飛ばされることはなかったが、怪我はしているようだ。どんな状態かと見ると
機体の破片だろうか。それが正面から俺の肩に突き刺さっていた。それを理解した瞬間に燃えるような痛みが襲う。
「いっ、ぐっ……」
歯を噛み締め、どうにか破片を取ろうとするが、破片全体が刃物のように鋭くなっており、何よりどこかに喰い込んでいるのか俺の肩から動く気配はない。俺は破片を一旦は諦め、そして周りを見る。
「これって…一体どういう状況なわけ?まだ空飛んでんの?」
隣ではヒカルが窓ごしから見える景色で判断したのかそう言う。確かにまだ空には浮いているようだ。推進力はないに等しいが。
「さあ…?それよりあいつら…」
「あぁ…大丈夫か?ってお前の肩…」
「めっちゃ痛い……」
ヒカルが心配そうに見てくるが、あいつらは無事なのかとパチパチという機体後部を確認する。
結論は三人ともそこにいたし、なんとか意識もあるようだ。ただ問題は機体にあった。あちこちに穴が空いている。
「ミサイルが当たりました…私の…私の実力不足です…」
まずカノンが腕を座席にもたれかけながらそう言う。見たところ怪我はない。
「いや…カノンは防いでた気がするよ。なんだかババババってあいつらが」
そう言ったのはキルアだ。珍しくまともなことを言っている。
「機関砲。最初の戦闘機がミサイル撃った後、すぐに撃たれた。だからカノンは…まあ成功したわけよ。それより」
アナリスはゆっくりと立ち上がる。こっちも無事そうだ。となると怪我したのは俺だけらしい。
「もうこの機体持ちそうにないよ。その運転補助システムと私の魔法があっても。戦闘機もすぐにまた戻ってくるはず」
「わあってるよ。でもガイムが…怪我してて」
「え?」
カノンはそう言うと俺のもとへと近づき、その傷を見て驚愕する。
「これ…かなり深いです…大丈夫なんですか!?」
「いや俺は大丈夫…だよ。うん。なんとか」
結構あいまいな返事になったがカノンはシートベルトを外すと俺の腕を自身の肩にもたれかけさせる。
「……良いな。俺も女の子と触れ合いたい」
ヒカルがそんな俺の様子を見て、そんなことを言ってくるが一同は無視する。
「はあ〜〜〜〜〜。なんでこうなるんだ…」
俺は盛大にそう言うと痛みを緩和する魔法を使う。この世界において下位魔法なんぞ使い物にならないことがザラなので使うことは滅多にない。魔法を超え医療技術も存在すると知った時はかなり驚いたものだ。
「これは…抜いたらまずいですよね。血が止まらないのでは…」
「そーだよ。抜いたら失血死」
「ええ!?それって何だ!?血が出すぎて死ぬってことか?」
「珍しく分かってんじゃん。頭打った?」
外野の女子が騒がしくなってきたが、それどころではないだろう。
「ちょっ!キルア待ってって、ねぇ!ヒカル!今どこらへん飛んでるの?」
「今?…多分ベルウッドかチェスターかな?いやそうであって欲しい。でもまだ5分くらいしか飛んでないしチヌークの平均速度も考えると…」
その時、聞き覚えのあるエンジン音が再び後ろからやってくる。
「あーあ、ラプターのクソ野郎だよ」
めちゃくちゃ口悪くアナリスが毒づく。その滑らかで平べったい灰色の機体は並列して、この機体の後ろに尾けている。先程と同じだ。まだ落ちないこのヘリコプターを今度こそ落とすだろう。そうなった場合助かる保証はない。
「一か八かです。あの戦闘機を私とキルアさんで破壊しに行きましょう」
「え……そんなの無茶すぎ…死ぬぞ二人共」
俺はあまりの無謀さに傷を心配してくれたカノンを今度は心配する。
空中戦。通常、剣士や盗賊が行うことはない。人間には不可能な領域なため、これらは他種族、または魔物や兵器を使って行うものだ。
しかしカノンは再び俺の方を向いて真剣そうな眼差しで訴える。
「どのみちこのままでは死にます。だったら一か八かで…」
「なあ、それあたしも勝手に参加することになってないか?するけど」
キルアもどうやらやる気のようだ。
「行きましょうキルアさん」
「おう!足引っ張んなよ!」
キルアはそう言うとナイフを手先でビュンビュン言わせる。カノンも剣をやってくる戦闘機へと向ける。ここからは彼らの俊敏力に期待するしか…
だが彼らは待ってくれなかった。次の瞬間、無惨にもミサイルが2発放たれた。
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