第108話 米軍VS異世界人(16)
「司令部へ伝達。当該機にアムラーム、全弾被弾を確認。指示をこう」
『空中爆発が確認され次第、その場を撤収せよ。一定距離を保て』
「了解。旋回する」
F-22のパイロットはそう言うと煙を上げつつあるCH-47を中心に反時計回りに旋回しようとする。
「まだ爆破しないのか…」
「タフなもんだが時間の問題だ」
推進力を下げ、段々ながらも降下していく機体を見て、パイロットはその中にいる彼らのことを考える。
怒りはない。哀れみというべきか。素性の知らない人間を殺すのはいつになっても慣れない。そういうものだ。
「おかしいな。機体に大きな損傷がないぞ。フレアの気配はなかったが」
「司令部に報告しよう」
この場に2機しかいない戦闘機のパイロットはお互いにそう言うと司令部に報告しようとした、その時だ。
「…?おい!何か来るぞ!」
「なっ!?」
目の前の光景。そこには数十の拳大の火の玉、それらがCH-47の機体後部に存在していた。そしてその機体が動く方向に火の玉は縄に繋がれているかのように釣られて動く。
そしてそれが静止したかと思った瞬間、凄まじい速さでこちらへと襲いかかる。
「回避行動だ!急降下!」
咄嗟の判断で機体を下へと傾け、加速させる。そのおかげか戦闘機のボディは傷つくことはなかった。ホーミング機能はないらしい。
「緊急事態発生!敵が空対空攻撃を実施!脅威未知数!」
「こちら司令部。武器使用の許可は既に出ている。空対空攻撃を避けるため、機体上部からの攻撃を推奨する」
「了解。これより攻撃する!」
パイロットはそう言うと戦闘機を急上昇させる。縦に降り掛かるGによって体に圧力がかかる。
それに続くかのように2機目も急上昇する。
雲の上へと行く寸前でパイロットは戦闘機の機首を大きく変える。そして機体を安定させながらも機体を急降下させる。
このよあなアクロバットな飛行はベテランでも難しいとされているがそれを実戦で行うのには相当な経験が必要だ。
やがて目標である黄土色でコーティングされたCH-47がはっきりとその輪郭を現す。2つあるブレードがビュンビュンと回っているのが見える。
パイロットは何も言わずに機関砲を撃ち始める。目標のCH-47との角度はほぼ垂直である。CH-47はパチパチと火花を散らしながら機関砲を浴びる。
十二分に浴びせ、そのまま角度を変えずに飛び続ければ、機体同士が衝突する寸前、パイロットは角度を若干傾け、CH-47の機体斜めから抜け出すように避けようとする。
あとは2機目も同じようにすれば確実に撃墜…されるはずだった。
先程の炎の玉が今度は機体上部に出現したのだ。いくつもの火の玉が機関砲の仕返しとばかりにF-22を捉える。
そして
それらは一斉に放たれた。出現から発射までの時間があまりにも短すぎたことでパイロットの瞬時の判断が僅かに鈍ってしまう。
「……!回避だ!回避!」
やっとのことで声が出たが、言葉どおりに行くには全てが遅すぎた。
夜に赤く光る1機目の戦闘機は炎に包まれた。そして2機目は急旋回を繰り出して避けようとするが、先程まではなかったホーミング機能によってあえなく炎に包まれる。
「コントロール不可能!コントロール不可能!」
炎によって計器が壊されたのか機体は言うことを効かなくなる。
『異常を確認!機体の高度が低下中!緊急脱出の準備を!』
無線越しにそう言われ、パイロットは緊急脱出用の赤いスイッチを引こうとしたその時だ。
まるで何事もなかったかのように機体の計器は全て正常へと戻った。
「……?なんだ?何が起きた?」
パイロットは戸惑いながらも機体を再び上昇させ、高度を維持した状態へと保つ。
「あ、あぁ、その…計器が正常に戻った。コントロールも可能。指示を求む」
『了解。全機帰投だ。無人機の情報より当該機の高度は低下中。現在墜落予想地点を予測中とのこと。不測の事態に備えて全機帰投せよ』
「了解。帰投する」
パイロットはそう言うと後ろに付けている戦闘機に手で指示を出して帰投する。
-アメリカ国防総省 F-22による異次元的地球外生命体(多次元生物)の輸送ヘリジャックにおける対処記録とインタビューより得られた記録-
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