第86話 覚醒
人々の悲鳴が聞こえる中、俺達はその魔物の攻撃をかろうじて横に転がり避ける。その魔物はまるでサイを二足歩行の巨人にしたようなおぞましい魔物だった。
「やばいな、ベヒーモスか。実際に見るのは初めてだよ」
アナリスが独り言のように言ったその魔物ことベヒーモスはすぐにまた突進を俺達に…
ではなく博物館の外に向かうようにして進撃を始めた。
「まずいぞぉ、あれは、あれとぶつかったら全身骨折どころの騒ぎじゃなくなるよ」
「見れば分かるわ!いきなり死ぬかと思った!」
ヒカルが怒りを露わにする中、次々と何かが壊されていく音が響き渡る。
「とにかくあの魔物を止めましょう」
「え!?あれをか!?」
キルアがカノンに向けて正気か?と疑うような視線を投げつけるがカノンは無視してベヒーモスが向かった場所に向かう。
「ベヒーモスか。何かの神話でベヒモスとこ言う化け物がいた気がするが。やっぱ異世界とこの世界何かあるんじゃねえの?」
「今はどうでもいいだろそんなこと。それよりどうするんだ?カノンは行っちゃったし」
「ガイム…ひどい…」
ヒカルが傷ついたようだが今はそれどころではない。どうにか博物館の外に出る。
明らかにベヒーモスはそっちに行っただろと思わせるように車は横転、反転を繰り返し、人々はその逆方向に逃げていた。
後ろからサイレンの音が近づいてくる。おそらく警察だろう。
「あいつどこ行った?カノンは?」
遅れてやって来たヒカルがそう言った時、車に叩きつけられるようにしてもたれかかるカノンの姿が目に入る。
「お、おい大丈夫か!?」
いち早く俺が近づき確認する。
「だ、大丈夫です。なんともありません。子供を守ろうとしたら…すみません心配かけました」
そして爆発音。思ったよりも近い場所だ。俺の真横をパトカーが2台通り過ぎていく。
「でもなんでたよ、例の魔導具は触らなきゃ発動しないんだろ?」
「知らないよ、時間切れが今来たんじゃないの?」
理不尽すぎるだろ。
「それであいつ今どこ行ってんだ?追いつこうっても早すぎて追いつけねえぞ」
ヒカルがそう言うとアナリスはある一点に目をやって
「誰か車運転できたりする?」
と言った。
____________________
「現在目標は7thストリートを南下中、あぁ…まただ、今も車が破壊された」
『その……その通報にあった動物の詳細は分かりますか??』
「分からない。その、見たことがない。ただサイのような…デカくて早くて…」
追跡する2台のパトカーは連邦政府庁舎の横を通り過ぎていく。対向車線からの車はこちら側に一度も来ていない。
『現場付近の警察官をすぐにそちらへ送ります。追跡は可能ですか?』
緊急通報室の職員は冷静にそう言う。目の前では車が散乱するという無惨な光景が繰り広げられ、その先にいるのは例の動物…化け物であった。
「一定の距離を保ちながら…トラックの荷台が破壊された、粉々だ…」
『分かりました。では一時追跡を中断、民間人の避難を誘導してください』
オペレーターはそう言ってくる。その間にも人々はその謎の動物から逃げるようにパトカーとすれ違っていく。車の破片が道路に散らばり放題となる。
とここでパトカーの横、車の通りがなくなった対向車線を1台の車がパトカーを追い越すようにして走行するのが見えた。
それを見た警察官達の思惑はますます混乱へと陥った。
____________________
「全員警備員の誘導に従って外に出てください!」
アメリカ合衆国議会議事堂の中にいた人々が次々と外に出てくる。あちこちでサイレンの音がするこの状況に戸惑う人は少なくない。そして何かが粉砕する音もまた彼らを刺激していた。
「何があったんだ!?」
「分かりません!博物館の方で何かが……」
混乱はさらに加速する。ふとここで誰かは分からないが中年の男だろうか。その太い声がボソッと呟かれる。
「次はここ…ワシントン…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます