第85話 魔導具
2022年8月10日 アメリカ東部標準時
午前7時11分
アメリカ合衆国 バージニア州
ダレス国際空港入口
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果たして何度目の空港だろう。俺は飛行機を飛ぶ姿を見ながらそう考える。
飽きた。場所によって空港も違うとは言え、ほぼ変わらない
さて、そこからは電車に乗って行くわけだが、いわゆる異世界人共通の慣性としては日本人に近い。
その為電車が20分も遅れるとイライラする。
《海外のバスと電車は時間にそこまで厳しくない》
そこからさらに電車に揺られること20分。ようやく目的地だ。この世界の概念として瞬間移動があるわけだがそんな魔法が実際使えたらと思う時がある。
「…………」
なお今回の支障だが、アナリスの気分がドン底なことだ。飛行機の中で吐いたらしい。
「なぁんで徹夜すんのかね?」
ヒカルが呆れるようにしてそう言う。カノンは何事もなく平気そうだがキルアはと言うと…
「ZZZZZZ……」
また寝ていた。なお彼女も飛行機では死にかけていた。まだ慣れないらしい。
「状態異常でもかかってんの?そういうのを解決する魔法作っとけよ」
「そーするわ」
アナリスが感情もなくそう言う。魔法作り。
それは俺達が夢のマイホームができ、家具の運搬やら何やらで忙しい時が終わった時、魔法作りをすることにしたのだ。
魔法は作れる。作りたい魔法に対する強い集中力と想像力があれば。ただしより強力な魔法な程失敗もしやすい。そして失敗した時どんなことが起きるのかは分からないとされている。
「魔法省がある程度作れる魔法は規制してるから簡単な魔法作るのも一苦労」
魔法を作る時、アナリスは確かそう言っていた。
「魔法を作る時は…手を合わせるんですよ。それで心を無にするのです」
「は?それだけ?」
俺達の世界のことを知らないヒカルはあまりの単純さに驚いていたが。
かくして何個かの魔法を作った俺達なわけだ。もちろん魔王軍対策も…
「よし、着いたぞ」
ヒカルに言われて俺は座席から腰を上げる。俺達がここに来た目的は一つ。
ホープダイヤモンドこと悪魔のオリハルコンを無力化する。じゃないといろいろ不味いから。
でもなんというか…こういう邪悪な感じは16歳の少年にとっては妙にわくわくするものだと俺は感じていた。
「大きい博物館だなあ」
俺がそう言うとヒカルが無機質に
「スミソニアン航空宇宙博物館。観光スポットとしてもかなり有名だしね」
そう言いながら目の前にそびえ立ついくつかの赤い塔の真ん中、その建物の入口らしき場所に行こうとする。
こういう博物館と言うのはお金がかかるらしいがここは基本無料らしい。いくらでも入り放題なので例の宝石の下見をしにきたというわけだ。そして最悪盗みを…
「キルアがいるから大丈夫でしょ基本は」
「へ?あたしが何かするのか?」
「話聞いてた?にしても超眠いわ私、めっちゃボーッとする」
アナリスがキルアに呆れ、俺が双方に呆れる中、ふと辺りがざわめき始める。とアナリスが静止し、
「あ…………まずいこれ、目覚めちゃった」
アナリスのその一言に全員が固まる。
「…一応聞きますけど何がですか?」
カノンがそう聞いたと同時に端の方にある赤い塔が崩れ、その瓦礫から何かの影が出てきたところだった。
その姿は崩れ去った時の煙で見えない。人々がスマホを手にそちらにカメラを向けている。
この展開は…知っているぞ。あの影は…
「悪魔のオリハルコンの封印が解けちゃいましたねこれ」
アナリスが笑わせうとしたのかそう言うと同時に紫の俺の3倍以上はある二足歩行の巨体が陸上選手のように走って近づいてきていた。
どうしていつもこうなるのだろう。
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