第80話 スマホと共に

スマートフォンの始まりは2007年にAppleが販売した初代iPhoneから始まり、世界中に広く普及した。だが近年では市場成熟によって普及スピードは落ちてきている。


やって来たのは千葉県の県庁所在地である千葉市中心部。それほど家とも遠く離れてはいない。


「俺人が多いの苦手なんだよ」


「奇遇だな。俺もだ」


ヒカルと意見が一致する。なんというか人通りが多いのだ。そしてそのほとんどがスマホを手に持っている。


「どうだよ異世界人。これが地球という星だ」


「はぁそうですかとしか言えないんだが」


アナリスがぶっきらぼうにそう返す。


「でどんなスマホが買いたいわけ?」


「まだ分かんないかな。他は?」


「俺は…なんかこうかっこいいやつ」


「ガイムって…普通だよな。いいけど」


なめてんのかアナリス。


「スマホって…魔導具ですか?魔法ですか?」


「スマホって食べ物か?あたしそんな食べ物知らないぞ」


…多分カノンとキルアにスマホを持たせてはならないだろう。それまで聞いてたヒカルが


「魔導具ではないと思うなあ。俺魔導具って聞いたことないし」


「ヒカル。多分持たせたら駄目な人種だ」


「ガイム…お前ってところどころひどいこと言うよな」

_______15分後_______

俺とアナリス、ヒカルは某電化製品店の中に入っていた。カノンとキルアに関しては近くにあった公園で暇を潰してもらってる。


「神秘的というかなんというか…」


この世界というものはやっぱり不思議で映像が動くわすぐに暖かくしたり冷たくする道具はあるわで…


「まぁ慣れないよな。俺だって異世界転生したら慣れないと思う」


「大丈夫でしょ。私達の世界って…なんだっけなあ。何かのゲームに似てるんだよ」


「ゲームか?まあ確かにクエストとかもあるんだしな。あとダンジョンか。確か魔物の中枢を倒せばなくなるんだよな」


「そだね。魔法陣によって展開されるダンジョンがほとんどだから」


「へえ」


アナリスとヒカルが談している間に俺はお目当てのスマホを入手するために吟味する。一ヶ月前、海外に行く時の道中に出会った暇すぎる日々を忘れるために。


「魔導具とかもあるんだよな。あれは確か…」


「魔力を込める。以上。そして人を呪うような強い気持ちを込めれば」


「意外と簡単そうだな」


お、これは良い機種というやつではなかろうか。全体的に大きい感じがして平べったくないやつ。


「あ、そうだガイム。錬金術で出せる金の量決まってるからあんま高いのやめてね」


「「え?」」


俺とヒカルが同時にそう言った。え?出せる量とか決まってんの?


「マジ?」


「というか錬金術ってそう何回も使えない。1月に1回とかそのくらい」


「なんでそうなの?」


俺がそう聞くと説明がめんどくさくなったのかアナリスが


「あのねえ、錬金術自体がそもそも禁止されてるのがなんでか分かる?経済ぶち壊すじゃん。だから魔法省が錬金術自体に強力な規制魔法をかけてるの。それこそ絶対に使わせない程度の」


「へ、へぇ」


異世界事情を知らないヒカルがあいまいな返事をする。そういえばそうだ。もし錬金術が普通に使えていたら貨幣価値がなくなってしまう。


金に目がくらむと考えというのは狭くなる。それがこのことかもしれない。


「あれ?でもアナリスは1月に1回使えんのはなんでだよ」


俺はふと疑問に思ったことを聞くとアナリスは


「え?私賢者だよ。そのくらい使えて当然じゃん」


…魔法省はもう少し規制を強くするべきだ。


そんなこんなでとりあえずスマホを選んだわけだが


お前ら二人ともiPhone勢かよ…」


「そう…だけど?」


ヒカルがなにやら怒っているが気にしないでおこう。


「えっと…それで契約書と身分証明書ですね…よしやれ」


「はいは〜い」


アナリスはそう言うと担当の人に指を向ける。担当の人は宙をボーッと見ている状態になる。


「えっと…お金ここに用意してるから。これでいいよねヒカル」


「ああ、ギガとかも大丈夫。モバイルWiFiを買うからさ」


「やってることは完全に犯罪なんだよなあ。でもまあ…俺達異世界人だし…な?」


お金を造幣してそしてめんどうなことを魔法で人の頭をイジってとばしていく。捕まる日がきてもおかしくない。


「そ、そういうことだよガイム。君もこの世界を分かってきたじゃん」


そう言うアナリスの声は若干震えている。多分こういうことをしたことがないのだろう。俺もないからな。


「大丈夫だ。少し悪いくらいが俺にとってはかっこいいのものだから、うん」


ヒカルは若干笑みを含めてそう言う。こうして再び犯罪に手を染めた。











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