第79話 あれから1月

「おはようございます。モーニングショーのお時間です」


「では早速、ニューヨークで発生した…」


「謎の生物、ドラゴンと呼ばれるこの生物は…」


「国際連合事務総長から正式に地球外生命体と発表されてから1週間…」


「…51に向かって行進していく人々の姿が…」


「アメリカ各地でのデモが絶えず行われており…」


「CNNによりますと4chanという掲示板では…」


「リンカーントンネルでは車の通りが全くと言っていいほどなくなり…」


「失業者で溢れかえったマンハッタン島で…」


「インド首相が国連本部を移転させようと発言した件について…」


「いまだに懸命な捜索活動が続けられており…」


「ドイツで発生した件についてもですが…」


「ヴュルツブルクで発見された陥没地点は浅く…」


「ですがネット上の写真及び動画によりますとその陥没地点には地下トンネルが…」


「バイエルン州警察と謎の生物との戦闘映像がネット上で違法公開されており…」


「イギリス政府は早急な対策を講じようと…」


「アバディーンで発生した事態はニューヨークの悲劇を思わせるようで…」


「ご覧ください。かつてアバディーンと呼ばれた都市は…」


「BBCメディアによりますとアバディーンの死者は200名を越え…」 


「人型の地球外生命体による襲撃…信じられません」


「けどニューヨークでは実際に起きたではないか。人型がいても不思議ではなかろう」


「そうだ。それに現地警察に撮られた映像だってある」


「YouTubeを見てみますとですね。多数のエイリアン動画が…」


「この異常事態は多数の死者をだし…」


「世界の貿易に大打撃を与え、これまでどおりの生活が危うくなってきています」


「神による天罰なのです!これは…」


「悪魔が地上に…これは聖書の…」


「ノストラダムスの大予言が今になってきたとでも言いたいのかね?」


「ですがきたでしょう。他にも様々な陰謀論がですね…」


「世界は変わったのです。いつかは分かりません。エイリアンが現れた混乱は我々にも計り知れません。ここまで公になった以上今後の世界がガラッと変わる可能性が…」

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2022年 8月8日 日本標準時

午後1時35分

日本 千葉県 房総半島 とある一軒家

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「あっ、負けた」


「よし俺の勝ち…けどこれで3勝3敗で同点かよ」


「さっきの試合でやめれたらなあ。なんで2先にしたんだろ」


「お前が先に言ったんだからな。アナリス」


「…ちえ」


チェスを3時間超やっているヒカルとアナリスを見ながらまだ飽きないのかと俺は思った。


「今度IQテストやってみてよ。メンサになれるかもよ」


「メンサ?」


そんな意味の分からない会話をしながら再びチェスに生じる。


この家に来てから結構な時間が経った。追手らしき者は来てないし平和な暮らしをしている。魔王を倒さなければ俺達にも平和を訪れないとアナリスと初めて会った時にそう言われたはずだが俺達は平和に暮らしている。


と言っても昨今のニュースはまったく平和じゃないが。


「チェスって…なんだか次元の違いを感じません?」


カノンが俺に難しそうな顔で話しかける。


「だな。どうやってあそこまで考えられるんだ?」


「さすがは賢者様ですわね。にしてもヒカルさんも相当強いですね」


「当たり前だろ。俺だって頭は良い方だからな」


ヒカルが話に割り込んできた。


「どーだか、ヒカルが頭良いって…ねぇ?」


「何が言いたいんだよ?」


アナリスが挑発するようにヒカルにそう言う。


「てゆーかよ」


床に寝そべったキルアが


「魔王って放置のままでいいの?」


「いや魔力をまったく感じないからどうしようもないだけでね。別に今遊んでるわけじゃないから」


とか言いながらアナリスはチェスの駒を持っている。アナリスって自分勝手なところがある気がする。その点においてはヒカルと相性が良いかもしれない。


「この試合で決めようぜ。いい加減飽きてきた」


「いーよ、それで」


そう言うと再びチェスに興じる。この世界において魔王という存在がでてきたことはない。気づいてないだけかもしれないがここ最近魔王軍による事件は減ってきている気がする。


というかこの世界はどんな些細なことでもすぐに全世界の人に知られるネットというものがある。それがすごすぎてなんというか…


「あ、俺の勝ちだ。ざまあ」


30分が経過したところでヒカルの盛大な煽り声が聞こえる。


「は?死ね」


アナリスが心底気分悪そうにヒカルを罵倒する。


「ああ、良いねぇそういうの。俺女の子が怒ってるの大好きなんだよ」


「そーかよ!」


アナリスはそう言うと魔法でチェスの駒を浮遊させ、それをヒカルの鳩尾向けて飛ばす。


「っ…げ…」


ヒカルはしばらく丸くなってうごめく。自業自得としか言いようがないだろこいつ。


「おい変態、大丈夫か?」


「いて…ガイムも変態呼ばわりかよ…」


「それ以外になんて呼べばいいんだか…」


ヒカルは体を起こす。とそのままソファに腰掛ける。


テレビではある特集が行われている。最新機器についての。そこにスマホが映ったことで今度スマホを急遽買いに行くことになってしまったが。







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