第81話 日常回

「あれ?随分と遅かったなあ」


「悪いな。待たせちゃって…キルアが滑り台を滑ると完全に遊んでる幼女にしか見えん」


「はああ!?」


ヒカルの言ったことがキルアの琴線に触れたようだ。


「えっと…その四角いのスマホってやつですよね?」


「見せなかったっけ…まあ異世界人にとしてはスマホとか言われても無理ないか」


カノンは警戒しているのか訝しげな表情を浮かべている、ブランコに乗りながら。


「…それとその箱はなんだ?」


「ああ、これか?」


キルアがヒカルに向かってそう言う。確かに箱状の物を買っているが。


「これはプラモデルっていって、部品を組み立てて何かを作るって考えればいい」


「へえ。で何のプラモデルなの?また二次元の女の子?」


「あのなあアナリス。俺が女子の前でそんな物買うわけないだろ。F-15Jのプラモデル」


「F-15J?」


俺がそう聞くとヒカルは「うん」と言いながら


「実物を見ればいい。ここからだと茨城の百里が近いんじゃないか」


「はあ」


そもそもコードネームじみたその名前が分かんないのだがな。あと百里ってどこやねん。


「それはいいとしてもう日が暮れそうだから帰ろうぜ」


「いーよ」

「私も大丈夫です」

「あたし達一体何しに来たんだ?」


ヒカル以外が俺の提案に賛成の声を上げた。


「興味なさそうだなお前ら」


ただ一人、自分の趣味を紹介したヒカルはちょっと不服そうだったが。


そして家に帰ってきたわけだがいかんせんスマホの使い方が難しくて何回もヒカルに聞いた。


その反面アナリスは何故だか完全に使いこなしてる。


「ねぇヒカル、このInstagramって何?」


「写真とか動画とか載っけるやつ」


「ああ、はいはい。で?」


「で?だと?」


「載っけてどうすんの?」


「……」


今ので分かるのだろうか思う程に。そしてヒカルはそれ以上何も言わなくなった。


「ねえねえヒカルヒカル、、レインボーブリッジの件が取り上げられてるよ〜」


「ああ、あれね。確か橋の上で爆発があったんだっけ?」


「うん。何でも爆破予告を出したテロ組織が行ったって。…テロねぇ…」


アナリスはそう言うと薄い笑みを浮かべる。攫われた側からしたら書いてあることは間違いないことに対する皮肉だろうか。もう一つ余罪があるのだが。


「あれ攫われた側からしたらどうなん?ガイム?」


「寝てたから覚えてないかなあ。ただ揺れてたね。地面に寝かせられてたと思う」


「あー私も同じ。ただ背中が痛くて痛くて」


「アナリスは確かゴム弾撃たれたんだっけ?」


「そうそう。起きた時…………」


「どうした…?」


俺が突然黙ってしまったアナリスに言う。どうしたのだろうか。


「…包帯が…」


「包帯?それがどうした?」


俺がおそらくこの場にいる人のほとんどが思っていることを言う。


「いやどうやって巻いたのかなあって」


そう言ったアナリスの顔は笑っているが怒りが混じっている。つまり…どういうこと?


とここで一人状況把握が早い男、ヒカルが


「あー…それはまあ、何もされなくてよかったね。止血したんだよきっとうん」


「へえ〜〜〜〜」


そう言ったアナリスの言葉には怒気が…


「あの…どうしてそんな怒っているのですか?」


「怒ってんのか?包帯ってなんだ?その四角いやつもなんだ?」


一人何が起きているかも分からなそうなアホの子がいるがヒカルは再び声を出す。


「包帯を巻くには…一度服を脱がす…つまりそういうこと」


「あっ…ああ、ね。うん分かった」


俺は言われたことでやっと理解できた。アナリスは確か背中右下部に銃弾を受けてたはずだ。つまり包帯を巻くには一度服を脱がせて巻く必要がある。そしてあの場にはおそらく男しかいなかったであろうから…


「よし、潰しに行くぞ。ヒカルあいつらの基地分かる?」


「よし、落ち着くんだ。ドードドード」


馬を扱うかのようにヒカルはアナリスに近づく。アナリスは一息間を置いたあと


「私はね…今猛烈に元の世界に帰りたいって思ってるよ」


怒気を含めてそう言った。




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